日本の家電産業の終焉
先日のシャープの台湾企業との企業提携の報道の数日後、シャープの抱える巨額の赤字の報道があった。それを見た時、ああっシャープは台湾の企業と提携したわけではなく、台湾企業に買収されたんだなと思った。ようするに、そういうことだ。日本のメーカーは台湾(中国)の企業に買収される、そうした時代になったということだ。巨額の負債を抱えているのはシャープだけではない。ソニーもパナソニックも、どこも同じだ。
例えば、日本のテレビは高品質・多機能である。しかしながら、値段が高い。これに対して、中国や韓国のテレビは、日本のテレビほどのクリアな画質はないが、テレビを見る上では十分満足ができる画質である。それに、とにかく安い。
別に困ることなく使えて、しかも安いのならば、顧客は当然、中国や韓国のメーカーのテレビを買うだろう。であるのならば、売るためにやるべきことは決まっているということだ。とりあえず満足する画質で、値段が安いテレビを日本のメーカーも販売すれば良い。
ところが、これができない。製造コストが違う。日本の家電産業の大規模な赤字は、もはや生産拠点を中国に置くしかないことを意味している。従って、日本のメーカーは工場をどんどん中国に移転している。
しかし、それでは国内の雇用がなくなる。国はそれでは困るので、家電メーカーに補助金を与え、なんとか国内で生産を続けてもらうようにするだろう。家電産業は、保護産業になる。
家電産業だけではない。自動車産業も同じだ。半導体も同じだ。家電・自動車・半導体という日本を経済大国にした主要製品は、今や韓国、台湾・中国のメーカーの時代になっている。
国民も高齢化している。老人保護社会になる。産業も国民もみんな国の保護なしではやっていけなくなるだろう。
一方で、少子化なので労働人口はますます下がる。日本は移民を受けれることはしないので、生産に従事する人口はどんどん少なくなる。就業人口の低さによって、まったくお先真っ暗になったら、日本は移民を受け入れるようになるかもしれない。しかし、その時はもはや遅い。
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こうなる前に、もっと家電メーカーに体力があるうちに、韓国みたいに国内メーカーを2社程度に絞ってしまえばよかったのにと思います。総合家電メーカーなんて、2社あれば十分なんじゃないかな。今ではもう、日本のメーカー同士をくっつけることはできなくて(赤字会社同士では無理でしょうから)、ここに書かれているように台湾や中国の企業に買われるしかないのかもしれませんね。
また、どんなものでも安くなければ売れないということはなく、アップルのようにメーカー主導で価格を決められる場合もあって、そうするには、オリジナルで固定客を作れる製品を生み出さねばなりません。そういうベンチャーが国内で育つ環境は、日本にあるんでしょうかね?経済産業省って、そういう下地作りをしてくれるところなんじゃないんですかね?
Posted by: とと | April 15, 2012 12:07 AM
ととさん、ご無沙汰をしております。
その、こうなる前のコレコレをやっておけばよかったというのは家電業界だけではなく、今の日本の数多くの分野でそうしたことが言えます。
近い将来にこうした時代になるということは、1980年代の後半の頃から言われていました。その頃の日本にはまだ活気とお金もありましたから、その頃にやっておけばよかったのです。しかし、できませんでした。
業界が統合されるということは、そのためにどうしても「なくなる会社」がでてきます。その会社の社員の雇用はどうなるのかという問題がでてきます。会社が経営に失敗して潰れたのならば、それはそれで通りますが、べつにそうしたわけでもない、今は利益が出ている、それなのに将来のために会社をなくせというのか、という声が必ず出てきます。
もちろん、そうしたことを適切に処理し、雇用の移動にもきちんと対処するのがマネジメントであり国の政策です。しかし、そうした巨視的な業界再編成ができる経営者なり政治家なりが20年前も10年前もいませんでした。今もいません。近い将来こうなるから、今、ちょっとたいへんだけど、今やっておけば少しのたいへんさですむから、今やっておきましょうと言える政治家なり経営者なりがいなかったのです。またメディアが、そうしたことを伝えることはなかった。人々の側にも、そうしたことをやろう、理解しようという雰囲気がなかったです。
ブランド製品についてですが、家電製品でブランド方法はむずかしいです。やはり、家電は安心ができて値段が安いが基本ポイントですね。それと、Appleもアメリカ国内ではほとんど製造していません。アメリカ国内の労働者の雇用を作っていません。つまり、ブランド品では「国民のみんなが食べていく」ことができません。やはり、「国民のみんなが食べていく」ためには家電・自動車・半導体ですね。これらの産業がもはや中国・韓国に太刀打ちできなくなっているわけですから、ますます国内雇用はなくなります。
国は雇用の確保の必要がありますから、こうした産業は国からの補助でなんとかやっていくでしょう。しかしながら、今でさえ国の財政は破綻しかけています。消費税は10%に引き上げても、全然足りません。国民年金も崩壊するでしょう。これは大前研一さんが言っていたことですが、「日本はこれからそもそも何でメシを食っていくのか」ということを国民全体が考えねばならなくなります。
何度も申しますが、この「ねばならない」というのは、本当は20年前、10年前にやっておくべきだったのです。しかし、やらなかった。やらなかったのは、やらなくてもなんとかなったからです。しかしながら、もうそうはいかなくなります。中国、韓国は20年前、10年前とは違うのです。
Posted by: 真魚 | April 16, 2012 01:44 AM
ああ。。。
真魚さんのお話しを聞くと、将来真っ暗な気分になっちゃいますね~。
>やはり、「国民のみんなが食べていく」ためには家電・自動車・半導体ですね
↑これって、雇用の点で、ということなんでしょうか?
裾野の広い産業だから?
半導体は、エルピーダメモリの破たんで、もう手遅れのような気もしますが、まだ大丈夫なのかしら?
家電も車もなんでもかんでも、安い方がいいということになれば、固定費を抑える方向に進み、そうなると人件費の安い国に工場を移すのは当然で、すると国内の雇用はなくなるという図式ですよね。
でも、人件費が安い国も、いずれ生活レベルがあがり、いつまでも今のままの人件費で雇えるとは限らないということはないんですかね。
逆に、日本ではワーキングプアと言われる若年層も現れていたりして、そうなると彼らの方が安く使えたりして…それはないかぁ~。でも、日本の不動産価格が下がり、家賃が安くなれば低賃金でも暮らしやすくなると思うんですけどね。
>「日本はこれからそもそも何でメシを食っていくのか」ということを国民全体が考えねばならなくなります。
それって、つまり、『日本株式会社』が今後何を売っていくかということですかね?
ああ、そう考えるとわたしにもなんとなくイメージできます。
車を売るか家電製品を売るか半導体か、はたまたそれ以外の何か。
一体、誰が今の『日本株式会社』のセールスポイントを正しく把握してるのでしょうね。他社より優れている何かがわからないと、戦略すら立てられません。『経営陣』は交替したほうがいいのかなぁ。
Posted by: とと | April 16, 2012 11:52 PM
ととさん、
はい。自分も、この国はこの先真っ暗です、以上終わり、ではイカンと本日反省をしまして、先ほど書いてアップしました。(^_^;)
競争相手が同じような品質で低価格の商品を出してきたらどうしたらいいか、ということについては経営戦略のテキストには数多くの解決案があります。もちろん、そうした「解決案」はテキスト上の話です。重要なのは考え方、捉え方です。各業界、各企業、各現場でおのおのの対応策があります。物事は見方です。韓国・中国企業にも利点もあれば欠点もあります。マネジメントの内容、考え方しだいです。
「人件費が安い国も、いずれ生活レベルがあがり、いつまでも今のままの人件費で雇えるとは限らない」というのは、まさに日本がそうなんです。日本もかつては人件費が安く労働力が豊富にある国であり、その安さと勤勉さで高品質で価格が安い製品をアメリカに売ってきました。このため、アメリカの製造業の国内雇用がなくなったのです。だから、アメリカはITや金融や映画などといった別の道を見い出しました。今度はその同じパターンを、日本は中国・韓国から突きつけられています。
これからの世の中は年寄りが大多数で、あとはワーキングプアのワカイモノくんたちがいる、そんな世の中になります。国はこうした現状を変えることはしません。というか、国はできない、わからない、理解できないのだと思います。だからこそ、今の『日本株式会社』のセールスポイントはこうですよ、中国はこうです、韓国はこうです、そして僕達はこうしていきましょう、とひとりひとりが自分のアタマで考えていくことが必要になります。その思考の出発点は、素直な目で今のありのままの世界を見て、基本に戻って考えることだと思います。
Posted by: 真魚 | April 17, 2012 02:00 AM