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April 25, 2012

良いものはコストがかかる

 今の世の中は、なんでもかんでもコスト削減だ。とにかくより少ないコストで、より大きな利益を得ることを良しとされる社会である。

 それはわかる。よくわかる。わかりすぎる程、よくわかる。

 しかしながら、どうも今の世の中はあまりにもコスト削減ばかりというか、それ以外のことがもはや考えることができない状態になっているのではないかと思う。

 良いものを作ったり、やっていったりすることは時間とお金がかかる。つまり、高いコストがかかる。この当たり前のことが、今の世の中は当たり前になっていない。

 良いものには価値がある。これは、皆さんわかっている。その価値があるものを、時間とお金をかけないでやっていくことを良しする考え方がいたるところにある。これが常識みたくなっている。ここが間違っている。間違っているというか、それが当然のことかのようになっていることが間違っている。

 本来、良いものは時間とお金がかかる。だから、良いもの、良い製品、良いサービス、等々、とにかく良いものを購入する価格は高いものなのである。

 今の世の中は、なんでもかんでも安ければいいみたいな風潮になっている。よって誰もがコスト削減を強要する、強要される。マネジメントとはコスト削減のことだと思っている。

 もちろん、値段は安いにこしたことはない。しかし、このなんでもかんでも安ければいい風潮が、巡り巡って僕たちの収入を落とし、労働時間を長くさせている。

 低価格競争でお互いがひたすら貧しくなっていくのではなく、良いものには高いコストがかかる、その高いコストは支払わなくてはならないとみんなが思い、そして良いものを作っていくことで、しかるべき値段での売買が行われ、みなさん豊かになっていく。そうしたようにならないものだろうか。

 何かを行う時、そこにかかる時間とお金を少なくするように努力しなければならない。コスト削減をしていないのは怠けているからであるという考え方がある。この考え方に間違いが含まれている。別に怠けているからコストがかかるわけではない。かかることにはかかるとしか言いようがない。

 もちろん、ただ闇雲にコストをかければいいというわけではない。時代の要求に応えるものである必要がある。

 つまり、何にフォーカスをあてるかであり、あてたフォーカスに対して、人とカネと時間を投入して良いものをつくっていこうということだ。そのあてたフォーカスが間違っていれば、市場原理に従い「売れない」ということになる。

 しかし、それはコンセプトの誤りであって、価格がどうこうという話しではない。良いものは値段が高いものであるという前提の上での市場競争は、価格の勝負ではなく、コンテンツ、コンセプトの競争になる。マネジメントとは、コスト削減や効率化のことだけではない。必要ならば、非効率や無駄があってもいい。何を目的とするかは、多種多様なのである。

 今のコスト削減至上主義、安ければいい、安くなければならないという思考は、結局のところ、ものの価値が判別できない、ものの分別ができない、価値の判断基準を持っていないのではないかと思う。安いものは安くていい。しかし、安いのだから、この程度のものなんだな、だって安いんだから、で意識や思考が停止してしまい、本当に良いものを見いだそう、持とう、創ろうとしない。良いものへの活力や意欲がない。これが今の日本の状態である。

 もともと、自分たちの手でものを創っていく、創ったものを販売していくということは、もっと楽しいものであったはずだ。産業というものは、もっと楽しいものであったはずだ。それを面白くもなんともない、つまらないものにしているのがコスト削減至上主義なのである。

 昔は、良いものは値段が高いのは当たり前だとみんな思っていたと思う。80年代は、バブル景気でコスト意識なんてなかった。その後、景気が悪くなり、経済が停滞し始めると、コスト削減がさかんに言われ始めてきた。そして、21世紀の今になり中国・韓国の経済が勃興してくると、もはやなんでもかんでもコスト削減をしなくてはならない世の中になった。

 コスト削減とは、無能な管理者がまず最初に行う、それしかできない唯一の方法である。コスト削減ではなく、高いコストをかけて良いものをもつくり、高価格で販売してコストが十分回収できる。そうした良い製品、良いサービスを提供する体制なりシステムなりを創るのが優れたマネジメントである。本当の高度な産業社会とはそうしたものだ。

 良いものはお金と時間がかかる、高いコストがかかるのは当然だ。

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Comments

同感!
めっちゃ同感です。

笑顔=プライスレスなんて、間違ってる。
いいサービスには、お金を払う価値があると言ったっていいじゃないか。

ととさん、

ですです!!

だからこそ、みんなで良いサービスを創っていく、十分な時間と高いお金をかけたしっかりとした「製品」や「サービス」を創っていく、それに見合う代金をもらう、支払う。それでいいんです。そうでなくてはならないのです。中国や韓国と安売り競争をやっていてはだめです。

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