勝敗はまだついていない
朝鮮日報の論説主幹の宋煕永のコラム「中国は富の流れを変えるか」は興味深い論考だ。
日本は、東アジアの中でいち早く近代化を成し遂げ、第二次世界大戦以後は、これもいち早く経済大国になった国であるが、今や中国にその地位を奪われた。一方中国は、世界の大国の道を躍進している。今後の中国の進む方向は、アメリカと並ぶ第二の世界覇権国になるか、もうひとつは、世界第二の経済大国に上り詰めて崩壊した日本のようになるか、それは今はわからないと述る。
興味深いのは、以下の論考だ。
「中国が世界第1位の国となるには、少なくとも二つの奇跡が起こらなければならない。まずは、中国が変わることだ。政治的な自由を認め、人権保護、貧富格差の解消、民族紛争の解決といった内部改革が必要だ。北朝鮮のようなテロ国家を統制し、地球温暖化の防止に先頭に立つ国際的な責任も果たさなければならない。人民元を固定させ、貿易黒字ばかりを稼ぎ出す政策も、一等国の資格が不十分というイメージを持たれるばかりだ。
また欧米や日本が改革に失敗するという奇跡が、もう一度起こらなければならない。もし先進国が危機から脱し、財政赤字や過剰消費といった経済的な病を克服できれば、今の勢力図は延長され、中国は2位の座のまま後発走者からの挑戦に直面するだろう。」
前半の中国の政治が変わらなくては、これからの中国の繁栄はないというのは誰もが述べている。重要なのは後半である。つまり、欧米や日本が改革に成功すれば、中国を世界覇権国の地位から下ろすことができると述べているのである。これはおもしろい。数多くの論者が、これから日本は没落し、中国が世界覇権国になることは、もはや歴史の必然であるかのように論じている。しかしながら、この韓国の論者はそんなことはないと言っているのだ。
考えてみれば、その通りであって、かつてまだ20世紀だった頃、次の21世紀は中国の世紀であるみたいな声があった。しかしながらそんなことは決まってはいない。このボーダーレスワールドには、自由な競争があるだけだ。自由競争の下に、中国も韓国も日本もある。それだけが決まっていることであり、その勝者が中国であることは決まっていない。むしろ危惧すべきことは、あたかもそうであるかのように雰囲気が作られ、気がつくと、その周辺国の日本と韓国は中国の前に頭を垂れるという構図ができ上がるということだろう。中国の言う平和的台頭とは、そうしたものなのかもしれない。欧米から見れば、それはそれで歴史映画を見るようでおもしろいかもしれないが、当の日本と韓国では、そうはいかない。チャイナパワーは強く、さらにこれから力を増していくが、中国はロシアなどからの経済的や軍事的な挑戦を受けながら、世界第二位の経済大国を維持していくという難問を背負っている。その意味では、19世紀のグローバリゼーションに対応できずに滅びて行った清帝国と同じだ。
清帝国と同じ道を現代中国は歩くのかどうか、それは今はわからない。日本は、まだまだ中国に対抗できる。中国は日本を追い抜いた。しかし、勝敗はまだついていない。朝鮮日報のこのコラムは、そのことを教えてくれるのである。
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