iPhoneを使ってみてわかったこと
iPhoneを使い初めて一ヶ月近くたつ。画面をタッチすることで画面を動かした、文字を入力するということに、最初はうまくできなかったが慣れてくると、こんなに気持ちがいいものかと感じるようになった。そうした、操作面でのこと以上に、自分のIT環境が激変したと言っても良いぐらいの大きな変化があった。その変化をひとことで言うと、自分の知的生産環境をクラウド化するということであった。
クラウド化するということは何かというと、簡単に言えば、まず自分が使う文章や画像のデータを自分のパソコンに置くのではなく、ネットの向こう側に置くということだ。なぜそうするのか。例えば、自宅のパソコンで書きものをしていて、出かけるとなり、その出先でも書きものを続けたいとすると、これまではその文章ファイルをノートパソコンに複写していくか、外付けディスクに複写して、それを出先でノートパソコンにつなげて、ノートパソコン側にさらに複写して、さあ作業続行、というものだった。こんなに数多くのモロモロを行わなくてはならないのである。こうなると、もうやりたくなる。
この「数多くのモロモロを行わなくてはならない」、つまり「コレコレを行わなえば、コレコレのことができます」というのは、機械である以上、「しかたがない」と言えば「しかたがない」のであるが、人の作業において、これが面倒なものになり、自然な流れをストップさせるのである。ここがなんとかできないか、というか、ここがなんとかなるか、ならないか、が最大のポイントであった。そしてこれまでは、ここは「なんともならない」「しかたがない」であったのである。
ところが、である。今はそうではないのだ。自分のファイルをネットの「とある場所」に置いて、自分の側は自宅のパソコンの時は自宅のパソコンから、出先のノートパソコンの時はノートパソコンから、iPhoneの時はiPhoneから、ネットの「とある場所」にアクセスして、そのファイルを自分のローカルディスクに落として、追加なり修正なりをして、終わったらまたネットの「とある場所」に戻せばいい。この「戻し」が面倒だということもあるかもしれないが、それは自動化するなりなんなりの方法がある。いずれにせよ、一連の作業の流れが途切れることなくシームレスにつながっていることが可能になったのである。
次に、クラウド化で重要なことは、ネットにある無数のニュースやブログをRSSリーダーに登録すれば、一括して読むことができるということだ。このリーダーのデータも、自分のパソコン側にあるのではなく、ネットの「とある場所」にある。自宅のパソコンで、どこどこまで読んで、次に出先のパソコンでは、その続きから読めて、さらにiPhoneでも、その続きから読めるという、これも「みんなつながっている」のである。何度も言うが、この「つながっている」ということが大変重要である。これがこれまでできなかった。しかし、今はこれができる。
この「つながっている」というのは、RSSリーダーならRSSリーダーといったアプリ単体の話だけではない。ニュースやブログを読んで、人が次になにをするかと言えば、そこから考えたことや思いついたことをもとにメモやブログやツイッターを書こうとするだろう。これの作業もまたシームレスに「つながっている」必要がある。これがこれまでできなかった。しかし、今はできるのである。今は、RSSリーダーでニュースやブログを読んで、必要なものはメモやメールや自分のブログや自分のツイッターにそのまま持って行くことができる。「そのまま」なのだ「そのまま」。何度も言うが、これ重要なことなのである。
興味深い、関心があるWEBページの画面そのものやURLも、クリックひとつで、ネットの「とある場所」のWEBページ保管庫やブックマークに置くことができて、これも自宅のパソコンからでも出先でのノートパソコンやiPhoneからでも取り出すことができる。もちろん、修正・追加もできる。
上記の物事が可能になった背景には、今の東京の無線LAN環境の普及がある。カフェでのコンセント利用可能と無線LANサービスの提供は、ノートパソコンの使い方を激変させたと言ってもいい。これからの時代が、モバイルパソコンの本当に意味が問われる時代になったのだ。 つまり、物理的、地理的なローケーションは関係がなく、ネットにつながれば、そこに「自分の作業空間」を広げることができる。なぜならば、その「自分の作業空間」がこちら側ではなく、ネットの向こう側にあるからである。(しかし、中国からのアクセスの場合、ブロックされることはないだろうか。ちょっと心配だな。今度行った時に確認してみよう。)それができる世の中になった。
こうしたことができるようになると、テレビや新聞だけではなく、いろいろなメディアからの情報を統合、整理しやすくなるので、テレビ・新聞とは別のものの見方、考え方ができるようになる。こうしたことは、なにも私だけではなく誰でもできることなので、たくさんの人々がこうしたことができるようになれば、テレビや新聞の言うことにただ従うだけの状態ではなくなる。情報通信技術の進歩により、一人一人が知的に独立することが可能になったのだ。
ITは人を革新する。よく、ケータイやパソコンやネットは、人を馬鹿にする、知的に衰退させるみたいな意見が多いが、そんなことはまったくない。それは使い方による。そして、使い方もどんどん変わっていく。
では、この「正しい使い方」というのは、誰でも知っている、一般化しているというとそうではなく、新聞、テレビ、大手出版社、パソコンメーカーなどはこうしたことを言うかというと言わない。わかっている人の発言から、自分で自分なりに試行錯誤しながら学んでいくしかない。
自分は、インターネットがまだ普及する前のパソコン通信の時代からの人であるが、今の時代のパソコンの使い方は、以前と根本的に変わっている。変わっているが、その根底にあるのは、一人一人が独立していくことであり、独立した人々がつながりあうということだ。その理念は変わっていない。パーソナル・コンピュータがこの世に出現してずいぶんたつ。世の中は大きく変わったけど、その革命の理念のようなものは変わることなく、その時々に姿を変え、ちゃくちゃくと進歩している。
というわけで、なんか使ってみようかなと思い、気楽に始めたiPhoneであったが、使ってみると、その向こうにクラウドとノマド、そして集合知とつながるという使い方があった。これは楽しい。
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