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October 2007

October 28, 2007

戦争に先手なし

 robitaさんが、非常にインパクトのある文章を書かれた。それでコメントを書こうとしたのですが、例によって長くなってしまったので、例によって自分の方に置きます。

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robtaさん、

robitaさんが言われていることは、大別すると武装中立論になると思います。今のアメリカ従属関係から脱却し、日米安保は破棄し、独立した国防力を持った国家になるということです。思えば、昭和26年のサンフランシスコ講話条約で、戦後日本はアメリカの占領から独立したということになっていますが、実際のところは、この講話条約は「日本は今後、アメリカの従属国家になります」という内容であったわけです。まあこのへん、世界は米ソ冷戦になっていたので、好きでそうなったわけではないと言えば、そうであったわけですが。

そして戦後も半世紀を過ぎると、もうアメリカのいいなりにはなりたくない、そういう気分が広がっています。これはブッシュ政権になって、アメリカはあまりもメチャクチャなことをやり始めたので、もうつきあっていられないという感覚もあると思います。

そこで、アメリカ従属から脱却し、真に独立した国家になるということですが、ここで考えるべきことは、やはり憲法9条だと思います。結論から申しますと、アメリカ従属から脱却し、真に独立した国家になるからこそ、憲法9条は維持しなければなりません。

なんでそうなのか、といいますと。

アメリカ従属関係から脱却するということは、今まで以上にアジア諸国との関係を深めなくてはならないということです。なんでそうなの、アメリカ依存をやめるだけじゃない、他の国との関係なんてどうでもいいじゃない、と思われるかもしれませんが、アメリカという後ろ盾を失うということは、今まで以上に、諸外国との関係を深めなくてはならないということです。特に重要になるのが、周辺アジア諸国です。

ところが、この周辺アジア諸国において、イルボンというか、リーベンというか、日本という国は、どーも好かれていません。まず、この現状では、とてもアメリカ依存をやめるなんてできません。超大国アメリカにはたてつくわ、中国からはバカにされるわ、韓国からは嫌われるわ、では、国際社会の中のやっていけません。戦後日本はアメリカ従属関係の中に身を置くことによって、逆に周辺アジア諸国の信頼を得ることをしてきませんでした。この「してこなかった」というツケが、今、日本の足を引っ張っています。

この現状の上で、なおかつ、日本が「日米安保はやめます」「自衛隊を国防軍にします」「憲法9条はやめます、なくします」となったらどうなるか。こりゃあもう、すわ、日帝の復活か!!と思うに違いありません。中国や韓国だけではなくロシアもそう思うでしょう。なんで、そんなこと思うの、日本がそんな国になるわけないじゃん。オマエたちがどう思うと勝手だが、日本が何をしようと日本の勝手だ。そんなことを思う、オマエたちが悪い、と思われるかもしれませんが、現状、イルボンというか、リーベンは、政治家が靖国神社を参拝したり、あの戦争は正しかったとか言っている以上、信用できません。

ここんとこ重要なので強調しますが、我々日本人としては、そんなことはまったく思っていない、そう思う前たちが悪いと思われるかもしれませんが、それならば、なぜ誤解され、警戒されるようなことをやるのでしょうか。彼らにも、彼らの生活があり平和を守る必要があります。隣に、前の戦争を反省していない不気味な国があったら警戒するのは当然です。つまり、日本の安全保障上、憲法9条を維持する必要があるということです。

憲法9条を廃止すると、周辺アジア諸国は日本に対する緊張感を高めます。そうした状態で、なにか事件が起こり、それがもとで中国とかロシアが、我が国への攻撃か!!と判断し、核ミサイルを日本に撃ち込むことなるかもしれません。そうなったとしても、国際世論は、「ああ、あの国はそうされてもしかたないね」ということなるでしょう。なんてったって、前の戦争は正しい、うちらは全く悪くないという歴史観をもった特殊な神社に政治家が参拝する国ですから。また、あの連中は何がしでかすんじゃないか、どうも信頼できない、あの国は今度は核ミサイルを抱えてカミカゼ攻撃をしてくるんじゃないか、そういう懸念があるから、国連でも日本はまだ敵国条例の対象になっているのです。

では、どうであればいいのか。日本が武装中立になり、真に独立した国になるには、「日米安保はやめます」「自衛隊を国防軍にします」しかしながら「憲法9条は続けます」あるいは、新しい「自分から戦争はしません憲法」を作る必要があるのです。

軍事力は必要です。武装中立なんですから、日本は武装します。こればっかりは、中国がなんと言おうと、韓国がなんといおうと、日本は武装します。日本は武装国家になります(武装国家になるための予算があるんですかという話は、ちょっと横に置いておきます)。しかし、その武装は身を守るための武装であって、他国を侵略したり、他国に暴力をふるう国を支援するためのものではありません。そして、そのことを世界の人々に説得して理解してもらわなくてはなりせん。中国や韓国が、100回言ってもまだ理解してくれないのならば、200回言って理解をしてもらうようにします。200回言っても伝わらなければ、300回言います。理解しないオマエたちが悪い、うちが何をしようとうちの勝手とは言いません。なぜなら、自国の意図を相手に伝える、伝えようとする熱意が、戦争を回避するのです。国家間がその意志をなくした時に、戦争は始まります。

ここで突然、映画の話になります。

先日、銀座で『黒帯』という映画を見てきました。沖縄空手の明武舘剛柔流空手の八木明人さんと日本空手協会の中達也さんが主演をした空手映画です。二人とも師範で、子供の時から稽古をしてきた人です。日本空手協会は松濤館流なので、つまり剛柔流と松濤館流という、今はやりのフルコン空手ではない伝統空手の二つの流派がそろって出ているということになります(もう一人、極真の人も出ますけど、この人はアクションなしです)(フルコン派の極真空手に伝統空手の動きができるのかというと、話が深くなるのでここでは触れません)(笑)。

昭和7年、軍国主義に突き進む世の中で、古くから続いていた空手道場が憲兵隊に接収されます。その道場で修行に励んでいた二人の若者が、一人は軍の命令に従うことで、己の強さを追求し、もう一人は師の教えを守ろうとします。この二人の若者が、亡くなった師の空手を継承するために争うという物語です。これは、良かったです。いわゆるアクション映画や格闘映画ではなく、ストイックで純粋な精神性のある映画です。武術としての空手の見事な動きを、ひさしぶりに見ました。夏木陽介の演じる師の柴原英賢はこう教えます。「空手に先手なし」と。「己より劣る者に勝って何になる」「己の技を全力で向けるのは己のみ」と。

国家の話に戻ります。

robitaさんは「日本が世界平和を全世界に訴えるならば、まず、強くなることを考えるべきではないのか。」と書かれています。この「強さ」とは何だろうと考えます。そもそも、ある国が他のある国の言うことに従う、というのはどういうことなのでしょうか。その国の言うことを聞かないと酷いことをされる、いやがらせをされる、いろいろと困ることになる、だから、その国の言うことに従う、というのは恐怖があるから従うのです。他国に恐怖心を与えて威嚇し、威圧し、恫喝することで従わさせているのです。そんな国に日本はなろうと言うのでしょうか。本当の強さとは、あの国には信頼がある、尊敬ができる、だから、あの国の言うことは正しいと思う、あの国に従います、そうなるのが本当の強さです。そうした「強さ」を持つ国にならなければなりません。

軍事そのものに、攻撃専門の軍隊とか防衛専門の軍隊とかいうものはありません。軍隊は軍隊であり、軍事は軍事なのです。専守防衛とは、戦闘の思想なのです。それを政治として、アメリカへの都合上、自衛隊といういびつな軍隊らしきものを作ってきたのが戦後日本なのです。そうしたことはもうやめて、本来の日本国の国民のための軍隊を作りましょう。そして、憲法9条を維持すること、つまり、戦争に先手なし、です。あの国は軍隊は強いのだけど、自分から攻撃することはしないという拳法、じゃなかった(笑)、憲法を持っている、さすが侍の国だ、立派だ、と思われるようになりましょう。これが国際社会での日本の発言力を高めることになるのです。どこぞの某国の属国のように、あの国にさからうと嫌がらせをされる、だからあの国に従おう、従うことが国益なのである、となるのはもうやめましょう。

October 14, 2007

じきに人々の意識が変わり、新しい時代が開けると

  『An Inconvenient Truth』の中で、アル・ゴアはこうした意味のことを述べるシーンがあった。自分は世界各地を回り、これほど何度も何度も語っていても、それでも地球温暖化の危機を理解しない人々が多いと。

しかし、それでも、彼はこう語る。

「私は信じている。じきに人々の意識が変わり、新しい時代が開けると。」

 今年のノーベル平和賞は、アルバート・ゴア元アメリカ副大統領と、国連の政府間機構変動条約(IPCC)が共同で選定された。彼の映画はオスカーやアカデミー賞を受賞し、そして、今度のノーベル平和賞受賞である。世界の心ある人々は、ゴアの語る言葉を聴き、行動しようとしている。ゴアを批判する人々は、気象学的な反論サンプルを提示するだけであって、地球温暖化問題の本質がまったくわかっていない発言を繰り返すだけである。もはや地球温暖化を否定する人々は、一部の気象学者の枝葉末節的な論争を繰り返すだけの者か、自動車会社や電力会社や石油会社の回し者と思われてもしかたないであろう。

 ゴアの受賞について、アメリカのメディアは礼賛である。(共和党寄りの保守派メディアは除く)(笑)

 ワシントンポスト紙は、"Gore v. Bush The Nobel Peace Prize committee hands a victory to Al Gore."と題された社説にはこう書いている。"That achievement is impressive and important, notwithstanding factual misstatements and exaggerations such as the "nine significant errors" in the film cited by a British judge Wednesday."(水曜日にイギリスの法廷で映画の中に「9つの重要な間違い」として誤りや誇張があることが指摘されたにも関わらず、ゴアの業績は重要である。)と書いている。

"Mr. Bush said, through a spokesperson, that he was "happy" for Mr. Gore. But there was no congratulatory phone call,"

 とあるように、ブッシュ大統領は、ゴアの受賞は"happy"であったそうであるが、ゴアに電話で祝賀連絡することはなかったそうだ。

 そして、こう書いている。

"When it comes to global warming, the ire is warranted. Mr. Bush's inaction on climate change is one of the major failings of his presidency. He squandered nearly seven years by questioning the science of global warming and undermining efforts to do anything substantive about it. His recent efforts to demonstrate leadership -- from finally recognizing global warming as real to hosting a climate summit with the major emitters of greenhouse gases -- are undermined by his insistence that nations pursue voluntary "aspirational goals" to reduce carbon dioxide emissions. This is not the kind of leadership the world is looking for. "

 最後の"This is not the kind of leadership the world is looking for."(こんなことは、我々の求めるリーダーシップではない)という言葉こそ、ワシントンポスト紙が述べたいことなのであろう。

 ゴアの評価がますます高まっていく背景には、今、アメリカで大きくなっている反ブッシュ感情がある。その意味で、LA Times紙のOctober 13, 2007のコラム"Al Gore: the anti-Bush No wonder conservatives are apoplectic - Gore's fortunes rise as the president's plummets."はおもしろいことを書いている。

"Some of us prefer a president like Gore no matter what. But many people don't have a strong preference, or don't think very hard about what Gore would have been like as president. Therefore, he lacks a positive identity; people think of him only as the anti-Bush."

 ようするに、少数の人々にとってゴアへの支持は絶大であるが、一般の大多数の人々にとっては、ゴアを強く支持しているわけではない。しかし、それでもゴアの人気が高いのはなぜか。ゴアは、反ブッシュのシンボル的存在として見られているのである。

 アンチ・ブッシュ、今や流れは、ようやく正しい方向へ向かい始めたようだ。 Anyway, Congratulations, Al Gore & IPCC for winning the 2007 Nobel Peace Prize!!

October 08, 2007

確かに、「憲法上難しい」

ISAF参加「憲法上難しいのでは」 外相・防衛相(アサヒコム)

 高村外相と石破防衛相は、民主党の小沢代表が国連決議に基づくアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊参加は可能との見解を示していることについて、「憲法上難しいのでは」と述べたという。

 ふーん、イラク派兵は「憲法上難し」くなかったんだねえ。アメリカがイラク戦争を始めたら、「突如として日本の主権が消えて憲法9条に反しないという理論」が生まれたのは、どこの政党だったんだろうねえ。

 少なくとも、アメリカが関わる自衛隊のことについて、「憲法上難しい」ことは存在しない。アメリカが関わると、この国では、憲法上どうであろうと、なぜか超法規的処置として通るのである。小沢一郎のテロ特別措置法の延長への反対は、極めて特筆すべきことなのだ。民主党のウェブサイトにある「小沢一郎代表 テロとの戦い疑問に答える」(「テロとの戦い疑問に答える」っていうタイトルは、なんだかなあ)で小沢一郎が述べていることは、まったくの正論である。

 しかしながら、次に問うべきことは、ISAF派遣が憲法に抵触しない、ということをどのように説明するのかということであろう。これまでの自民党のように「アメリカ様にたてついたら、北朝鮮問題が進展しない」というのは、当然のことながら説明にはならないが、今の日米関係のリアリズムの観点から見れば、これはこれでホンネの「説明」にはなっている。(かなり、歪んだ説明ではあるが)。

 国連の承認があるから、何をやってもいいというわけにはならない。その意味では、高村外相や石破防衛相が言うように、憲法がある。自衛隊のISAF参加は、確かに「憲法上難しい」のである。「憲法上難しい」んだけど、アメリカ様にたてつくことはできないので、憲法を改正するのではなく、その場その場でつくろってきて、それでもそれなりにやってきたのがこれまでの自民党及び外務省であった。そして、自衛隊はいつも、軍事ではなく、政治の道具にされてきた。

 民主党が、これを小沢代表の原則論でどう乗り切るのだろうか。

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