トニー・ブレア We will miss you
TIME誌May14号は、例によって恒例の「世界で最も影響の人々」。例によって例の如く、ここで選ばれるのは、まあTIMEですからねという人々なのであるが。ページをめくってみると、最初の方でトニー・ブレアのデカデカとした顔写真が。なに、ブレアが「世界で最も影響の人々」なのかとムッとしたが、そこはまだ特集のページが始まっていない、ただの記事のページであった。
いよいよ、ブレアの時代が終わる。ブレアの功罪とは、やはりイラク戦争であろう。TIMEは、こう書いている。
"The Prime Minister, of course, turned out to be disastrously wrong. By 2003, Iraq was already a ruined nation, long incapable of sustaining a sophisticated WMD program. And the Middle East turned out to be very different from the Balkans and West Africa. In a region where religious loyalties and fissures shape societies and where the armies of "the West" summon ancient rivalries and bitter memories, it was naive to expect that an occupation would quickly change a society's nature. "When we removed the Taliban and Saddam Hussein," Blair told Congress in 2003, "this was not imperialism. For these oppressed people, it was their liberation." But we have learned the hard way that it is not for the West to say what is imperialism and what is liberation. When you invade someone else's country and turn his world upside down, good intentions are not enough."
TIMEも書いているように、中近東はバルカン半島や西アフリカとは違う。そうカンタンには占領統治はできない。この「そうカンタンには占領統治できない」場所に、イギリスをはまりこませたのがブレアであった。ブレアは、2003年の議会でこう語った。「これは帝国主義ではありません。虐げれた人々を解放させるためなのです。」と。しかしながら、帝国主義とは何であり、解放とは何であるのかを言うのは難しい。他国を侵略し、その社会を変えることは、善意に基づいているとは言い難い。
さらに、TIMEはさらにこう書いている。
He will forever be linked to George Bush, but in crucial ways they saw the world very differently. For Blair, armed intervention to remove the Taliban and Saddam was never the only way in which Islamic extremism had to be combatted. Far more than Bush, he identified the need to settle the Israel-Palestine dispute--"Here it is that the poison is incubated," he told Congress--if radical Islam was to lose its appeal. In Britain, while maintaining a mailed fist against those suspected of crimes, he tried to treat Islam with respect. He took the lead in ensuring that the rich nations kept their promises to aid Africa and lift millions from the poverty and despair that breed support for extremism.
今後、ブレアは永久にブッシュとの関連において見られるであろう。しかし、ブレアにとって、タリバンとフセイン体制への軍事的な介入だけが、イスラム過激主義者との戦いではなかった。ブレアはブッシュ以上にイスラエル・パレスチナ紛争の解決の必要性を訴えていた。イスラム原理主義の過激な活動がなくなるのならば、それが諸悪の根源なのだと、彼は議会で述べた。イギリスは、武力による威嚇ではなく、イスラムへの敬意を示すように試みた。彼は先進諸国によるアフリカへの援助の約束を維持させ、過激主義への支持をもたらす貧困と絶望から数百万人を救ったのである、とTIMEは書いている。
その意味では、ブレアは良識の人でもあった。
"The questions Blair asked--When should we meddle in another nation's life? Why should everything be left to the U.S.? What are the wellsprings of mutual cultural and religious respect? How can the West show its strength without using guns?--will continue to be asked for a generation. We will miss him when he's gone. "
こうした疑問こそ、良くも悪くもアメリカの第一等の同盟国であり、アメリカと共にイラク戦争を始めたブレアのイギリスでなくては出せない疑問だと思う。日本の外務省と親米派のみなさんも、いやあ、TIMEで、日本について、こういう文章が書かれて欲しいものだと思っているのではないか。
日米同盟は、このレベルの足下にも至っていない。「従軍慰安婦」問題について、日本の首相は、アメリカの大統領に謝罪し、その大統領の方も「謝罪を私は受け入れる」とかわけのわからんことを言ったり。ファーストネームで呼び合う関係って、なんスか。ブッシュはブレアのことを公式の場で「トニー」と呼んだことがあったのであろうか。この「ファーストネームで呼び合う関係」にコダワルというのが、ワタシは理解できん。てゆーか、もっかの支持率28%というニューズウィーク世論調査での1979年のカーター大統領以来の低水準というブッシュは、もう今の日本の首相のファーストネームがシンゾーであることなど忘れているであろう。アメリカの大統領が会見が終わった後でも覚えている日本の歴代首相は、ヤス・ナカソネとジュンイチロー・コイズミぐらいではないだろうか。
さて、かんじんのTIMEの「世界で最も影響の人々」であるが、まー、いかにもTIMEですねという人選で。
世界で最も影響の100人の中に、オバマがいて、ヒラリンがいて、アル・ゴアがいて、コンディもいるんだけど、中国の胡錦濤がいて、ビン・ラディンもいて、スティーブ・ジョブス尊師もいる!!共和党シュワルツェネッガー知事は、環境問題に取り組むグリーン・ガバナーとして登場!!おー、いい人選じゃあないか(笑)。
日本人では、世界的に有名なゲームクリエイターの任天堂の宮本茂とトヨタの社長の渡辺捷昭の二人。
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真魚さん、本当にTimeが好きですね。私はブレアの記事でThe Economistを引用しました。こちらもアメリカでの人気は高いのですが。チト文章が硬いとは言われています。それと時に外国語(独仏など)や古典語を混ぜるので、難しくなりますが。
>>ファーストネームで呼び合う関係って、なんスか。
リチャード・パールがブレアを論じた論文ではこんな低レベルなことは言っていません。日米同盟のあり方を模索するためにも、あれをしっかり読んで下さいね。
Posted by: 舎 亜歴 | June 07, 2007 10:29 PM