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March 05, 2007

よい子はつまずく

 先々週のTIMEでもそうだったけど、先週のNewsWeek誌でも、Japan's nationalist prime ministerのシンゾー・アベを酷評している。酷評していると言っても、その通りなのであるから、しかたがないと言えばしかたがないのであるが。この人は、小泉総理の後を受けて、それなりの高支持率で日本の首相になった約半年前、日本にナショナリストのリーダーが出現したと国際社会はかなり期待と緊張感をもった。それがどーも、そうではないなということを世界は感じ初めている。果たして、アベで日本は今後どうなるのだろうかというのが世界の関心事なのであろう。

"Yet threats are looming, even in an area where Abe's done relatively well: foreign policy. So far he's managed to avoid the unresolved historical controversies over Japan's imperialist past that still vex relations with its neighbors. But as time goes on, Abe's fundamental conservatism could make this balancing act more difficult. This year, for example, marks the 70th anniversary of the Nanjing Massacre-a killing spree committed by the Japanese Army during its war in China. "

 ようするに、安倍総理は就任早々に中国と韓国に訪問し、小泉政権時代の冷え切った両国との関係を修繕した、かのようにう見えたが、その後、なにがどうなったのかといえば、なにもやっていないではないか、ということだ。今年は南京虐殺70年の年である(そういえば、そうだったんだな。第16師団が南京に入ったのは、昭和12年の1937年だった。)当然ながら、中国はなんかイベントをやるわけで、そうなると日本の保守が騒ぎ、日中関係はまたもや険悪化する、というわけである。

 では、どうすればいいのか。これは、つまり、どのような日中関係であるべきなのかという全体像がまずあって、そのためには、これから、なにをどうすればいいのかとなっていくわけであるが、そういうことがまったく見えてこないのである。まったく見えてこないから、なんかこー日中関係は一体どうなるの?と世界は感じてしまうのである。

"Meanwhile, Japan's export-led economic recovery could stall if growth slows in the United States or China. The weakness of the yen has helped exporters but also fed a risky "carry trade," as investors borrow cheap currency at low Japanese interest rates and reinvest it abroad in more lucrative markets. If those investors are suddenly forced to abandon their positions by fear of a sudden increase in the yen's value, the effect could be profoundly destabilizing. All of which would mean big trouble for Abe."

 ようするに、今の日本の輸出主導の景気回復は、アメリカと中国の成長が遅くなると止まってしまう。アメリカと中国の経済の上に、日本経済が乗っかっているのである。弱い円は輸出にはいいが、投資家は日本の低い金利でお金を借りて、より高い利益がある外国に投資している。だから、ここで急に強い円になると投資家たちは動揺する。これらは、安倍政権にとって大きなトラブルになるであろう、と書いている。

 これについては、毎度のことながらNewsWeekの書いていることがよくわからない。投資家云々の話ではないだろうと思う。今や、日本全体が夕張市になっているのだ。これについても、問題なのは、シンゾー・アベという人が、これからの経済をどうしたいと考えているのかがさっぱり見えてこないということなのである。おそらく、そうしたものを考えるというか、総理大臣というのは、国のビジョンを掲げて国家を運営していくものなのであると思っていないのであろう。では、総理大臣とはいかなるものだとこの人は思っているのか。それすらも、よくわからないのである。

 NewsWeekのこの記事のタイトルは"The Good Son Falters"。「よい子はつまずく」という意味だ。「よい子」というのは、政治家的に名家の出身の安倍総理を表しているのだろう。Japan's nationalist prime ministerが、こんな記事を書かれていいのか。まあ、事実なんだけど。NewsWeekを読む世界中の人々が、ああ、ニッポンってこんな国なんだなと思うのは避けることはできない。

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Comments

それにしても最近になって愛国心だの日本の国のあり方だのが良く議論される割には、誰もしっかりした国家観を出してくれないものです。私の考える日本とはTB記事「ビクトリア女王が東アジア・・・」にある通りです。

日本とアジアがあれこれ議論していますが、結局のところは両者がお互いに異質な者同士だと理解しないと真の相互理解はないと思います。以前、王毅駐日中国大使が「同じ東洋人としての相互理解」などとのたまっていましたが、これが間違いです。という私の考えはTB記事を読むまでもなく真魚さんには周知と思われますが。

もう一つのTB記事で中国の軍拡に関するものは、真魚さんが大好きなiPodで聴けます。カーネギーくらいのシンクタンクになると、ここまでやってくれます。

こちらのブログへの真魚さんのコメントに質問したので宜しくお願いします。

それにしても、やっと「深夜のニュース」は看板通りに政治ブログに戻ったようです。映画評論に鞍替えしたのかと思っていたので。

舎さん、

まあ、同じ東洋人としての云々というのは、どういう観点で言っているのかということですね。日本と中国というのは、歴史的にも文化的にもかなり違います。もちろん共通点も多いですが。人類学的に言えば同じモンゴロイドですし、中国大陸から日本列島にやってきた人々もいるわけです。ちなみに、10年くらい前、バックパッカーだった頃、タイやマレーシアを旅した時、私の顔つきは中国人に似ていると言われました。赤ん坊の時は、おしりに蒙古斑があったそうですし、私の遠い先祖は大陸からやってきたのでしょう。中国大使に、同じ東洋人なのだからと言われたら、あなたも赤ん坊の時に蒙古斑がありましたかと聞くのも一興ですね。

それではちょっと気合いを入れてRobert Kaganについて書きますか。いつになるのか、わからんけど。"Dangerous Nation"をまだ全部読み終わっていないのですが。うーむ、ホッブスの本もひっぱり出さなくてはいかんな。といいつつ、その前に中国映画について書きます(笑)。

カーネギー国際平和財団のイベントの動画の情報ありがとうございます。アメリカの大手のシンクタンクは、こうしたことをよくやっています。先日、ライス国務長官が招かれて講演していたのを見ました。MITでは、授業そのものをネットで公開しています。みんな、タダで見れます。いい時代になりました。というか、アメリカというのはすごい国です。そして、こうしたネットの動画を中国やインドの勉強をする若者は見ているわけです。かたや、日本の若者はYouTubeでアニメがどうとかテレビ番組がどうとかやっているわけです(私も見ていますが)(笑)。アヘン戦争に敗北してもなにもしなかった清朝中国になっているのは、今の日本ではないでしょうか。

>同じ東洋人としての云々というのは、どういう観点で言っているのかということですね。

メッテルニヒにかかれば自宅の裏庭より東の人間は東洋人です。ラムズフェルドが絶賛する「新しいヨーロッパ」はアジアそのものです。独仏が彼を嫌うのも無理ないか(ワハハ)。

イラクだけでなく今度は対露ミサイル防衛でも古いヨーロッパと新しいヨーロッパに亀裂が。

蒙古斑ですが、白人でも出る赤ちゃんはいるそうです。黒人にはしっかりとあるそうですが、黒いヒョウやジャガーの斑点が遠くからはわからないように、見てもなかなか気づかないそうです。

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