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March 2007

March 24, 2007

NHKスペシャル「学校って何ですか」を見て

 例によって、まことにご迷惑ながら「幸か不幸か専業主婦」のrobitaさんへの返信記事です。

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robitaさん、

21日水曜日のNHKスペシャルの「学校って何ですか」をご覧になりましたでしょうか。僕は、第一部の方しか見ていないのですが。あれをご覧頂ければ、まことに失礼ながら、今の教育を改善するのは、国が、愛国心だ、しつけだ、道徳心だ、競争原理の導入だなどと言っているのが、教育の現場から見れば、まったくの見当違いというか、(ひと昔前の言葉ですが)ナンセンスであることがよくわかると思います。

何が悪いのか、といいますと。国というのは、愛国心とか、しつけとか、ゆとり教育を見直せとか、そういった大枠の、おおざっぱなことを言うだけなのです。で、都道府県の教育委員会とか、各学校の校長とかは、そういった上からのお達しを、自分たちの実情に合わせて検討し、自分たち独自の教育改革を考えるということは一切やらずに、そのままで現場にポンと出し、教師たちに向かって、今後はこういう方針になった、さあ従えと言ってるだけ、ということです。

これでは現場は、たまったものではありません。ただでさえ、急がしくて生徒を十分に見ることができないのに、この状態はこのままで、さらにこの上、なにをどうしろというのか。

この現状に対して、文部科学省が悪いのではないという意見があります。上に述べたように、都道府県の教育委員会とか各学校の校長が、自分たちで何もせず、上からのお達しをそのまま現場に投げるから良くないのであるという意見です。これはまったくその通りです。

しかしながら、ですね。役所というのは、基本的に、そもそも、そういうもんなのだと思います。教育行政に限らず、役所の中間管理職というのは、本質的に「上からの達しを下へ流す」、これだけです。中間管理職のところで、上の指示を勝手に自由に変更できるものではありません。民間企業では、中間管理職は、上からの指示の枠内で、自分たちが持つ権限に基づき、おのおのの現場の実情に合わせた具体的プランを考えることをしなくてはなりません。

ところが、こうしたマネジメントが、一般的に言って役所というところでは、あまり行われていません。役所というのは、こうしたことができるような組織ではなく、かつまた、できる能力を持った人々が中間管理職になっているわけではないんです。逆に、これをやってしまうと、官僚制組織というのは成り立たないんです。これで万事うまくいく、それが官僚制というものなのです。従って、国のトップは、抽象的で観念的なスローガンを言い、中間管理職はそれをそのまま下達し、現場の教師はそれに従うことが求められる。それが教育行政組織というものなのです。

つまり、こうした組織構造そのものを変えなくては、国がどうこうしてもまったく機能しないのです。こうした仕組みそのものを変えなくてはなりません。そこで、教育行政においては、「国がナニナニをする」ということはもうやめるべきだと思います。文部科学省は廃止しましょう。いや、まあ、教育行政で、国がやるべきことは多少はありますから、文部科学省は廃止するのではなく庁に格下げしましょう。では、教育はどこかがやるのか。それは都道府県であり、今後、道州制になるのならば、各道州が(つまり、知事が)教育行政を行うものとします。国は教育には一切関与させません。国が言う学校の自由競争とは、結局、有名学校への進学率が高い、低いで、良し悪しを決めるということしかできないのです。

日本全国、北海道から沖縄まで、同じ教育をやっているような今の画一的教育はやめましょう。もっと、地域や学校や子どもたちの実情に応じた特色ある教育活動や教育カリキュラムを、小学校の段階から各学校の校長と教師が行っていくことができるようにしましょう。私立の学校では、こうしたことを行っているところがありますね。いわば、公立学校が公立でありながら、私立のようになるということです。

例えば、北海道の学校はロシアの学校と交流を高める、新潟は韓国、福岡や沖縄は中国、台湾、シンガポールなどとの交流を深めるといった、各地に合った独自の教育をやりましょう。国から強制される国歌斉唱や国旗掲揚で愛国心を感じるよりも、世界の国々の人々と話したり、お互いの国のおいしいものを食べたりする中で、自ずから生まれてくる郷土愛や愛国心の方がずっと健全で力強いものです。

しかし、では、今の都道府県にそうしたことができるのですかというと、上にも述べたように、これまで中間管理職として文部科学省からの書類にはんこを押すことだけしかしてこなかった人々なので、できません。そもそも、明治4年に森有礼が初代文部大臣になってできた文部省の設立以来、この人たちは、これしかしてこなかった人々なのです(何度も言いますが、役所というのはそういうところなので、必ずしも彼らが悪いというわけではないのですが)。ですので、研修教育なりなんなりして、徹底的に改善すべきです。それでも変わらないというのならば、人材一新しましょう。必要ならば、民間から人を導入することもあるでしょう。いずれにせよ、変えるべきは、ここなのです。「国がナニナニをする」「国がナニナニをすべきだ」という意識はもうやめましょう。

March 19, 2007

ブログは1本にします

 諸事情により「武徳大観」の方は中止します。

 当初、中国拳法関係はそっちに書こうかと思っていたが、とても続かない(いや、拳法の修行が、ではなく、それについて「書く」という行為が)。そもそも、「武術」という行為と「書く」という行為は、別のものなのであった。武術は武術である以上、身体が関わる。そうなると、言葉でどうこうというわけではなく、身体で「できる」か「できないか」なのである。

 特に中国の武術(ウーシュー)は、現代の武道とは異なり、近代スポーツのような確立した理論があるわけではなく、日本の江戸時代の剣術や柔術がそうであったように、矛盾していても、その動きができてしまえば、それでオッケーという世界なのだ。それはもう理屈ではなく、感覚のようなものなのである。かつて李小龍は、映画の中で「考えるんじゃない。感じろ。」と言ったが、まさしく中国拳法とは「感じる」世界なのであった。じゃあ、ナニをどう感じればいいのか。ということで、日々(といっても、毎日やっているわけではないけど)苦闘しています。

 といういうわけで、全部こっちに書きます。こっちも全然更新していないではないかという声もあるけど、とにかく、拳法も武侠映画も、天山下七剣も黄飛鴻も十三妹も茶母も(知らない人、意味不明だな)、中国・韓国のその他諸々、文化から歴史、経済、国際関係に至るまで一切がっさい全部こっちにします。

 そうなると「深夜のNews」は、一体何の専門のブログなのかよくわからなくなるが、まあ、人間の関心事というのは、いろいろあるもんなんだなということで。いえ、諸葛亮孔明のように、上は天文に通じ、下は民情に悟し、六韜(りくとう)を諳(そら)んじ、三略を胸にたたみ、陰陽術を知るほどではございません。

March 05, 2007

よい子はつまずく

 先々週のTIMEでもそうだったけど、先週のNewsWeek誌でも、Japan's nationalist prime ministerのシンゾー・アベを酷評している。酷評していると言っても、その通りなのであるから、しかたがないと言えばしかたがないのであるが。この人は、小泉総理の後を受けて、それなりの高支持率で日本の首相になった約半年前、日本にナショナリストのリーダーが出現したと国際社会はかなり期待と緊張感をもった。それがどーも、そうではないなということを世界は感じ初めている。果たして、アベで日本は今後どうなるのだろうかというのが世界の関心事なのであろう。

"Yet threats are looming, even in an area where Abe's done relatively well: foreign policy. So far he's managed to avoid the unresolved historical controversies over Japan's imperialist past that still vex relations with its neighbors. But as time goes on, Abe's fundamental conservatism could make this balancing act more difficult. This year, for example, marks the 70th anniversary of the Nanjing Massacre-a killing spree committed by the Japanese Army during its war in China. "

 ようするに、安倍総理は就任早々に中国と韓国に訪問し、小泉政権時代の冷え切った両国との関係を修繕した、かのようにう見えたが、その後、なにがどうなったのかといえば、なにもやっていないではないか、ということだ。今年は南京虐殺70年の年である(そういえば、そうだったんだな。第16師団が南京に入ったのは、昭和12年の1937年だった。)当然ながら、中国はなんかイベントをやるわけで、そうなると日本の保守が騒ぎ、日中関係はまたもや険悪化する、というわけである。

 では、どうすればいいのか。これは、つまり、どのような日中関係であるべきなのかという全体像がまずあって、そのためには、これから、なにをどうすればいいのかとなっていくわけであるが、そういうことがまったく見えてこないのである。まったく見えてこないから、なんかこー日中関係は一体どうなるの?と世界は感じてしまうのである。

"Meanwhile, Japan's export-led economic recovery could stall if growth slows in the United States or China. The weakness of the yen has helped exporters but also fed a risky "carry trade," as investors borrow cheap currency at low Japanese interest rates and reinvest it abroad in more lucrative markets. If those investors are suddenly forced to abandon their positions by fear of a sudden increase in the yen's value, the effect could be profoundly destabilizing. All of which would mean big trouble for Abe."

 ようするに、今の日本の輸出主導の景気回復は、アメリカと中国の成長が遅くなると止まってしまう。アメリカと中国の経済の上に、日本経済が乗っかっているのである。弱い円は輸出にはいいが、投資家は日本の低い金利でお金を借りて、より高い利益がある外国に投資している。だから、ここで急に強い円になると投資家たちは動揺する。これらは、安倍政権にとって大きなトラブルになるであろう、と書いている。

 これについては、毎度のことながらNewsWeekの書いていることがよくわからない。投資家云々の話ではないだろうと思う。今や、日本全体が夕張市になっているのだ。これについても、問題なのは、シンゾー・アベという人が、これからの経済をどうしたいと考えているのかがさっぱり見えてこないということなのである。おそらく、そうしたものを考えるというか、総理大臣というのは、国のビジョンを掲げて国家を運営していくものなのであると思っていないのであろう。では、総理大臣とはいかなるものだとこの人は思っているのか。それすらも、よくわからないのである。

 NewsWeekのこの記事のタイトルは"The Good Son Falters"。「よい子はつまずく」という意味だ。「よい子」というのは、政治家的に名家の出身の安倍総理を表しているのだろう。Japan's nationalist prime ministerが、こんな記事を書かれていいのか。まあ、事実なんだけど。NewsWeekを読む世界中の人々が、ああ、ニッポンってこんな国なんだなと思うのは避けることはできない。

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