NHKスペシャル「学校って何ですか」を見て
例によって、まことにご迷惑ながら「幸か不幸か専業主婦」のrobitaさんへの返信記事です。
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robitaさん、
21日水曜日のNHKスペシャルの「学校って何ですか」をご覧になりましたでしょうか。僕は、第一部の方しか見ていないのですが。あれをご覧頂ければ、まことに失礼ながら、今の教育を改善するのは、国が、愛国心だ、しつけだ、道徳心だ、競争原理の導入だなどと言っているのが、教育の現場から見れば、まったくの見当違いというか、(ひと昔前の言葉ですが)ナンセンスであることがよくわかると思います。
何が悪いのか、といいますと。国というのは、愛国心とか、しつけとか、ゆとり教育を見直せとか、そういった大枠の、おおざっぱなことを言うだけなのです。で、都道府県の教育委員会とか、各学校の校長とかは、そういった上からのお達しを、自分たちの実情に合わせて検討し、自分たち独自の教育改革を考えるということは一切やらずに、そのままで現場にポンと出し、教師たちに向かって、今後はこういう方針になった、さあ従えと言ってるだけ、ということです。
これでは現場は、たまったものではありません。ただでさえ、急がしくて生徒を十分に見ることができないのに、この状態はこのままで、さらにこの上、なにをどうしろというのか。
この現状に対して、文部科学省が悪いのではないという意見があります。上に述べたように、都道府県の教育委員会とか各学校の校長が、自分たちで何もせず、上からのお達しをそのまま現場に投げるから良くないのであるという意見です。これはまったくその通りです。
しかしながら、ですね。役所というのは、基本的に、そもそも、そういうもんなのだと思います。教育行政に限らず、役所の中間管理職というのは、本質的に「上からの達しを下へ流す」、これだけです。中間管理職のところで、上の指示を勝手に自由に変更できるものではありません。民間企業では、中間管理職は、上からの指示の枠内で、自分たちが持つ権限に基づき、おのおのの現場の実情に合わせた具体的プランを考えることをしなくてはなりません。
ところが、こうしたマネジメントが、一般的に言って役所というところでは、あまり行われていません。役所というのは、こうしたことができるような組織ではなく、かつまた、できる能力を持った人々が中間管理職になっているわけではないんです。逆に、これをやってしまうと、官僚制組織というのは成り立たないんです。これで万事うまくいく、それが官僚制というものなのです。従って、国のトップは、抽象的で観念的なスローガンを言い、中間管理職はそれをそのまま下達し、現場の教師はそれに従うことが求められる。それが教育行政組織というものなのです。
つまり、こうした組織構造そのものを変えなくては、国がどうこうしてもまったく機能しないのです。こうした仕組みそのものを変えなくてはなりません。そこで、教育行政においては、「国がナニナニをする」ということはもうやめるべきだと思います。文部科学省は廃止しましょう。いや、まあ、教育行政で、国がやるべきことは多少はありますから、文部科学省は廃止するのではなく庁に格下げしましょう。では、教育はどこかがやるのか。それは都道府県であり、今後、道州制になるのならば、各道州が(つまり、知事が)教育行政を行うものとします。国は教育には一切関与させません。国が言う学校の自由競争とは、結局、有名学校への進学率が高い、低いで、良し悪しを決めるということしかできないのです。
日本全国、北海道から沖縄まで、同じ教育をやっているような今の画一的教育はやめましょう。もっと、地域や学校や子どもたちの実情に応じた特色ある教育活動や教育カリキュラムを、小学校の段階から各学校の校長と教師が行っていくことができるようにしましょう。私立の学校では、こうしたことを行っているところがありますね。いわば、公立学校が公立でありながら、私立のようになるということです。
例えば、北海道の学校はロシアの学校と交流を高める、新潟は韓国、福岡や沖縄は中国、台湾、シンガポールなどとの交流を深めるといった、各地に合った独自の教育をやりましょう。国から強制される国歌斉唱や国旗掲揚で愛国心を感じるよりも、世界の国々の人々と話したり、お互いの国のおいしいものを食べたりする中で、自ずから生まれてくる郷土愛や愛国心の方がずっと健全で力強いものです。
しかし、では、今の都道府県にそうしたことができるのですかというと、上にも述べたように、これまで中間管理職として文部科学省からの書類にはんこを押すことだけしかしてこなかった人々なので、できません。そもそも、明治4年に森有礼が初代文部大臣になってできた文部省の設立以来、この人たちは、これしかしてこなかった人々なのです(何度も言いますが、役所というのはそういうところなので、必ずしも彼らが悪いというわけではないのですが)。ですので、研修教育なりなんなりして、徹底的に改善すべきです。それでも変わらないというのならば、人材一新しましょう。必要ならば、民間から人を導入することもあるでしょう。いずれにせよ、変えるべきは、ここなのです。「国がナニナニをする」「国がナニナニをすべきだ」という意識はもうやめましょう。
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