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December 17, 2006

アジアについて、ちょっと考える

 昨日の土曜日は、東南アジア学会と比較文明学会の合同研究例会があったので、今回の研究会場所の東京大学へ行く。東京大学がある本郷通りはそれなりによく歩いているのだが、中に入るのは、15年くらい前の学生時代に、弘文堂という神田の出版社でバイトをしていた時以来である。なんか、あの頃より建物が増えたような気がする。

 今回の研究報告は、インドネシアについて。興味深かったのは、インドネシアはインド文明やイスラム文明の影響を受けてきたということで、中国文明の影響をさほど受けてこなかったということである。そもそも、東南アジアではベトナムやタイのような大陸部とは異なり、インドネシアやマレーシアには中国文明の影響はさほど大きくない。東アジアで広大な影響力を持っていた隋や唐(もう少し時代が下って元)の大文明が、なぜ東南アジアにはその影響力を及ぼすことができなかったのか。あるいは、そもそも当時の中国にとって、東南アジアはどうでもよかったのかもしれない。

 そこで考えられることのひとつに、仏教の原典はインドにあるということである。中国の考え方では、文化の源は自分の帝国である。しかし、こと仏教について言えば、これを生み出したのは中国ではなくインドである。玄奘が教典を求めてインドに旅に出たことからもわかるように、大唐帝国であっても仏教思想はインドに学ぶ必要があった。古代における中国とインドの関係はたいへんおもしろい。

 研究報告では、当然のことながら、過去の話で終わるが、これらの話を聞いて私が思ったことは、21世紀の今でも、中国とインドの動向を見ずしてアジアの今を理解することはできないということだ。今の時代の東南アジアにしても、中国とインドにどのような対応していくかが重要な課題になる。今、中国とインドが大きく変化していることは、多少大げさに言えば文明史的変換なのであると考えたい。そして、中国とインドという二大大国が動き始めたことにより、東南アジアもまた動き始めているのである。

 逆から言えば、東南アジア地域での第二次世界大戦以後のアメリカの影響力が低下するということである。その意味では、アメリカ帝国出現以前の東南アジアに戻るということでもある。だからこそ、国際関係論と歴史学や文明論は融合して考える必要がある。私はそう考えている。そういうことを考える人ってあまりいないけど。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

そのインドに関する記事を早速TBしました。それにしても中間選挙後のブッシュ政権が議会対策に苦慮すると言われてすぐにこのcontroversialな法案の通過。ブッシュ嫌いの真魚さんはどう思うのでしょうか?

ただインド側ではヒンドゥー・ナショナリストが米印核協定を厳しく批判しているので事態は予断を許しません。次にこの問題を書くときにはインドの視点を取り上げたいです。

中国についても近々書く予定です。その時は宜しく。中国とインドが本当の大国になれるかは、欧米に対抗できるだけの普遍的政治理念がだせるかどうか。統一性と普遍性はギリシア人より受け継いだ概念ですが、中国もインドもこちらでは苦労しそう。

こちらのブログに相応しいテーマソングもリンクしました。そう言えば、藤岡弘は真魚さんが好きな武術の達人でもあります。

Posted by: 舎 亜歴 | December 17, 2006 at 06:32 PM

舎さん、

NPTとIAEAに加盟していないインドがなぜ核兵器製造オーケーになるのか。よくわかりません。インドを軍事的に強くすることで中国を包囲しようとしていると言いますが、インド・中国関係は良好であり、対中国戦略にはなっていません。結局をこれで脅威を感じるのはどこか。パキスタンであるわけです。ブッシュはそれほどまでして、パキスタンを敵視したいのかと思います。パキスタンは独裁国でイスラム原理主義が強く、アルカイダと関係があるから、というわけです。相変わらず、近視眼的かつ偏向した外交政策ですね。もはや政権末期のlame duckです。

欧米に対抗できる普遍的政治理念について言えば、インドにも中国にもそれはありますし、イスラムにもあります。ただし、今の国際社会、あるいはウォーラスタィンが言う「近代世界システム」は、17世紀のウェストファリア条約によって生まれましたので、ヨーロッパの概念とは異なるインド、中国、イスラムの概念は、そのままでは通用しないということです。

仮面ライダーの初期の藤岡さんでの主題歌はいいですね。懐かしい。ショッカーは、ブッシュとチェイニーそしてネオコンです。

Posted by: 真魚 | December 17, 2006 at 11:16 PM

なぜインドがOKか?それについてはニコラス・バーンズが言うようにこのままインドを核拡散防止体制から野放しにしないためという論理です。民主主義国家でこれまで核拡散をしていないので安心してアメリカの最新技術を民間用に提供できるとしています。注目すべきは、イラクをめぐってブッシュ政権とあれだけ対立したエルバラダイIAEA事務局長がこの案をインドを何らかの形で拘束する現実的な政策として支持していることです。

もちろん、アメリカ企業がインドに進出したいと言う思惑もあるでしょう。だからこそ民主党の有力議員からも原則賛成の声が挙がったわけです。

ところでショッカーはやはり「悪の枢軸」ではないのですか?そのショッカーの中でもサダム・フセインはきわめて出来の悪い奴でした。クウェートで騒ぎをおこして、それでも懲りずに大量破壊兵器開発の野望をあらわにするなんて!カダフィでさえそこまでやりません。オサマ・ビンラディンがサダムと手を組まないはずです。ショッカー同士でも出来の悪い奴に足を引っ張られたくはないでしょう。

Posted by: 舎 亜歴 | December 23, 2006 at 01:01 AM

舎さん、

インドに核を廃棄せよと言うのではありません。核兵器不拡散条約に参加せよということです。それも、なにも今すぐにでなくてもいいわけです。何年までに条約に参加する。国際的に決まった手続きに従う、ということです。こうした要求がなぜできないのでしょうか。だから、アメリカはダブルスタンダードだと、よく言われるのです。アメリカは、国際的な取り決めに従いたくないからとしか見えません。

イラク戦争については、フランシス・フクヤマも19日に来日した時、外国特派員協会での記者会見で、ブッシュ政権を批判しています。核兵器も持っていなかったイラクを攻撃したことで、北朝鮮やイランは核兵器を持つことが自国の抑止力になると考えるようになったと述べています。イラク政策の失敗が北朝鮮の今日の事態を招いたのです。フセインが出来の悪い奴であるということは誰でもわかっているわけです。その出来の悪いフセインを使って、中近東の安定を保つことができたはずです。

Posted by: 真魚 | December 24, 2006 at 11:40 PM

アメリカとインドが二国間の核協定を結んだのは、インドがNPT体制を信頼していないためです。真魚さんが言う通り、多国間の核不拡散体制にインドを引き込むことが望ましいと私も思っています。インドとアメリカがこれほど急接近したのは9・11を契機としてですが、ダブル・スタンダードへの批判は根強いです。これについてはアメリカの政策の是非よりも現在の核不拡散体制が不充分なことが問題です。だからエルバラダイも現実的な方策と支持しているわけです。

もちろん、民主主義国インドには甘く圧制国家の北朝鮮やイランには厳しくという政策では、日本の核保有を認めることになると批判する専門家もいます。こちらのブログに何度か登場しているカーネギー国際平和研究所のジョージ・パーコビッチがそうした専門家の一人です。

米印協定は結ばれても、それがどのように運用されるかが今後の課題です。ヒンドゥー・ナショナリストをはじめ、原発建設の支援の見返りに核不拡散のためにインドが国際合意で拘束されることを屈辱と考える人もいます。第三世界には核兵器の開発を国家の威信と考える指導者も多いのがやっかいです。

中国に関する記事も今日明日にはTBします。

有楽町西武より

Posted by: 舎 亜歴 | December 25, 2006 at 05:24 PM

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