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September 03, 2006

先週のTIMEとNewsWeekを読んで

 まずはNewsWeek,Sep4でこの記事から、"Japan Too, YouTube? The video-sharing site is white hot-maybe too hot."
アメリカのビデオ投稿サイトであるYouTubeが"The number of Japanese visitors per month has more than quadrupled to 6.4 million since February, an unprecedented success for an English-language Web site."であるという。ようするに、数多くの日本人がアクセスしているということである。当然のことながら、Japanese visitorsは動画を見に来るだけではなくアップロードしている。何をアップロードするのかというと、話題になった番組のシーンやアニメなどの映像データだ。

 こうなると"YouTube is shaking the staid world of Japanese broadcasters."であるわけで。著作権の問題とか絡んでいるのであるが、そうした法的に云々ということよりも、ネットでは素早く人々に普及し、時間や場所に関わらず見れるのなんて便利じゃないかというわけで、いまやYouTubeはメディアとして確立していると言えるだろう。

 僕も「涼宮ハルヒの憂鬱」はYouTubeで初めて見たし(次は「かみちゅ!」をよろしく)(誰に言ってんだか)。涼宮ハルヒを知っていようがいまいが、そんなことはどうでもいいのかもしれないが、コミニュケーションって、結構どうでもいいことが必要だったりする。YouTubeが示したことは、まさしくそういうことだと思う。日常のたわいもないことを、数分の尺で、画質はどうでもいいから、自分でアップして、みんなで見る。しかも、見たい時に見たい場所で見る。これだけなのである。これだけなのであるが、まさしくこれだけが既存のテレビ局ではできなかった。

 ちなみに、日本でYouTubeができなかったというのも「またもや」という感がある。YouTubeに大量アクセスしてくるのが日本人というのも、日本のメディア状況の今を表している。中国でもなく、韓国でもなく、インドでもなく、ロシアでもなくなく、今の日本が「こういうものが欲しかったんだよ」ということなのだろう。

 近々に、日本でもYouTubeのようなビデオ投稿サイトが出てくるようだ。日本国内のユーザー(つまり、日本人)を対象に(当然だけど)日本語のサイトになる。そうなれば、最近YouTubeで起きたという日本差別事件とそれに続く誹謗中傷事件のようなことは起こらなくなるだろう。しかし、日本語のサイトになると、外国人がわざわざアクセスしてくるとは思えない。YouTubeのグローバルさはなくなる。どうして、自国の殻に籠もったメディアにするのか。YouTubeでいいじゃないかと思うのだが。YouTubeは日本のフツーの人々がアメリカのネットにフツーに入っていった最初のケースだと思う。それは、YouTubeが言語ではなく映像の投稿サイトであるからということもある。

 かりに日本版YouTubeができたとして、著作権問題やら収益の問題やらが表面化することはないだろうか。今は外国の投稿サイトだということで、著作権問題もそれほどシビアになっていないのではないかと思う。で、そのへんのむずかしい問題をきっちりやろうということが、逆にユーザの自発的な盛り上がりを低下させることになりはしないだろうか。さらに、音楽系の人は外国の音楽情報がYouTubeにあるからアクセスするのであって、日本のミュージシャンだけの国内サイトでは意味がないであろう。

 次にカバーストーリーの記事の"Beyond Babies"。少子化について。"Even in once conservative societies, more and more couples are choosing not to have kids. That means good things for restaurants and real estate. But a backlash has already begun."保守的な国でさえも、子供を産まない夫婦が増えていて、いろいろいい面もあるけど、反動もある、ということだ。少子化、晩婚化は日本だけのことではなく、数多くの国で当たり前のことになりつつある。

 興味深いのは(いまさら、興味深いもないけど)、

"The latest surge in childlessness does not follow historic patterns. For centuries in Western Europe, it was not unusual for a quarter of women to remain childless-a higher rate than in any country today. (In fact, demographers say it was the family-happy 1950s and '60s that defied the historical norm.) But in the past, childlessness was usually the product of poverty or upheaval, of missing men in times of war; infertility strikes 3 percent of couples at most. Today the decision to have-or not have-a child is the result of a complex combination of factors, including relationships, career opportunities, lifestyle and economics."

 ということで。過去の時代にも少子化はあったが、それは貧困や動乱や戦争で男性の数が少なくなったことが原因としていたのであるが、今起きている少子化は、男女関係や職業機会やライフスタイルな経済的事情などといった複雑な要因が原因になっているということである。少子化は、いまや数多くの先進国で起きていることであり、どの国も大体、政府はそれでは困るというので様々な対策を打ち出しているが、それでも少子化は止まらない。

 この記事の中の表で、ヨーロッパの子供がいない18歳から39歳に「なぜ親であることを避けるのか」という質問に対して、48%が"Concern about future"と回答している。「これから先のことを考えると・・・」ということであろう。"Enjoy current lifestyle"という回答が44%(おそらく、この調査は複数回答ありだな)ある。記事の中の"I won't marry just to have a child. Woman want quality in a marriage,more emotion, not just economic support."という言葉を読んで、「子は鎹(かすがい)」を思い出したが、そういう日本の古典落語は知らないよなあと思った。しかし、そうなのかというと、確かにそうであるわけで、子供とか経済的理由で結婚するわけではない。ただ、"quality in a marriage"の具体的な内容は、民族によって、人によって、多種多様であろう。日本ではなんですやろ。織田作之助の『夫婦善哉』やろか(なぜに関西弁になる)。

 続いてTIME Sep4からは、カバーストーリーの"Japan's Mystery of Majesty"。秋篠宮妃紀子様のご出産予定日直前ということで、この特集なのだろう。この記事で注目するのは、宮内庁の存在をクローズアップしていることだ。

"As Kiko rests in Aiiku Hospital, which was built with funds partially donated by Emperor Hirohito to commemorate the birth of his own son Akihito, she remains deep in the impenetrable cocoon of secrecy and security that is the hallmark of the Imperial Household Agency (IHA), the mysterious government body that manages every detail of the royal family's affairs. "

 ということで、宮内庁(大日本帝国時代の官庁名は宮内省)こそ"the mysterious government body"だったのである。

 さらにこう書いてある。

"By then, the Imperial Household Ministry, as it was known at the time, had grown into one of the nation's most powerful bureaucracies. It managed Japan's biggest land assets and was among its largest financial institutions, with extensive holdings in the colonial Bank of Korea and the South Manchurian Railway. Given powers to operate independently of parliament, the ministry functioned almost as a shadow government. Its head, Lord Privy Seal Koichi Kido (later convicted as a Class-A war criminal) was Emperor Hirohito's closest confidant during the war. After the war ended, some Allies thought the monarchy should be scrapped. But U.S. General Douglas MacArthur and the Truman Administration decided that retaining it was essential to the occupation's legitimacy, though the Emperor was forced to renounce his divinity. Japan's U.S.-written constitution reduced him to a "symbol of the state." "

 戦前、宮内省は日本統治下の朝鮮のBank of Koreaと南満州鉄道の株を保有していたとは初めて知った。当時、天皇家に資産があったことは知っていたが、宮内省もそうだったとは。思えば、戦後、天皇制が存続したが故に、宮内省が宮内庁として戦後も存在し続けているということはわかるが、実質的に今日、宮内庁とはどのような行政機関なのかよくわからない。大体、この記事にも書いてあるが、古代天皇の天皇陵すら歴史学者が自由に発掘調査できないのである。

 この記事にも出てくる"The Yamato Dynasty"という本は、Bixの"Hirohito and the Making of Modern Japan"と並ぶ、日本近代史に関心がある者にとっての必読文献である。僕も、アマゾンで注文して、前日届いたがまだ読み始めていない。また、日本の研究者の"I don't think most people realize that the whole current conception of the imperial system is only 135 years old, and a product of politics," という言葉を載せているように、このTIMEの記事は比較的よく調べて書いている。TIMEにせよ、NewsWeekにせよ、欧米のメディアは日本について書くと、とてつもない勘違いを書くことが多いが、この時期にこの内容は良いと思う。

 女系天皇について、TIMEの記事では皇室に男子の出産がないことにより女系天皇問題が起きていることを書いているが、それよりも皇太子が宮内庁を批判した発言に着目している。

"Crown Prince Naruhito could take an even more liberal line when he accedes to the throne. Like most royals, he is often maddeningly cryptic when he speaks. But he has dropped hints that he'd like to shake things up. At press conferences, he mentions the "need to review official duties" and "to find an appropriate image for the royal family in the 21st century," as well as his desire to "come into contact with the people of Japan." "

 皇太子徳仁親王による2004年5月の記者会見でのいわゆる人格否定発言であるが、この問題が結局その後どうなったのかうやむやのままになっている。しかし、うやむやのままにしようとどうしようと、やがて皇太子の考える天皇のあり方と宮内庁のそれとの相違は正面からぶつかることは言うまでもない。TIMEはこの記事の最後にこう書いている

"Once Naruhito assumes the throne after his father's death, he may be further emboldened to step in front of the Chrysanthemum Curtain that the IHA has so resolutely kept drawn. And then, at long last, Japan would be able to have an open discussion about the nature of its monarchy, and the place it should occupy in Asia's most mature democracy."

 おそらくというか、確実に、秋篠宮妃紀子様のご出産のある今週、天皇の皇位継承問題が大きな話題となるであろう。しかし、女系天皇の議論の前に、そもそも、今の時代の天皇のあるべき姿とはどのようなものであるのか考えるべきではないかと思う。そちらの方が、もっと重要な問題であるように思えるのであるが。皇室と宮内庁の関係はどうあるべきなのか。皇太子徳仁親王の言葉は、これからの日本と日本人にとって天皇制とは何かという根源的な問いかけをしているように思えてならない。しかし、この問いかけに注目し続けているのは外国のメディアだけなのである。日本国内では、皇太子という「一個人」、あるいは皇太子夫妻の考えなど、天皇制の前には意味を持たないとでも言うのであろうか。

 であるのならば、昭和21年の人間宣言とは何であったのだろうか。昭和天皇は、いかなることがあろうとも天皇であった。しかし、その子のさらに子の代に至るまで、これまでの天皇像であることを求めるものは一体なんなのであろうか。

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