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August 17, 2006

今年の8月15日

 このところ毎年8月15日は休みをとって正午の靖国神社に行ってみるということをしてきたのであるが、今年はそうしたことをすることもなく会社で仕事をしていた。しかしまあ、「8月15日」だからな、という何の意味も根拠もないが、ここはひとつ「はちがつじゅーごにち」というわけで、定時で本日の仕事を終わりとし、会社を出て九段へと向かった。地下鉄半蔵門線の九段下は、自分の通勤ルートの途中なので、靖国神社に寄っていても、それほど時間を食う話でもないのである。以前、このブログで、8月15日は天皇の玉音放送があったという日だけのことで、戦艦ミズリー号での降伏調印式があったのは9月2日なのだから、9月2日が日本の敗北が決定した日であると書いていながら、いやあ、そこはやっぱり、ついつい、この日は靖国神社に意識が向いてしまうのであった。

 地下鉄の九段下の駅を出ると、あたり一面は夕闇に包まれてた。普通この日は、この通りには右翼のおじさんやお兄さん方と警視庁機動隊のみなさんがいたるところにいるのであるが、この時間では、右翼のお兄さん方らしき人々がちらほらいるだけで、機動隊の姿はない。自分と同じく靖国神社へと向かう数多くのフツーの一般市民の人々が歩いているだけである。思えば、こんな時間に靖国神社へ行くことはこれまでなかった。

 大村益次郎の像を通り過ぎて神門に近づくと、警備のおじさんが大声で7時で門を閉めると言っている。げっ、7時って、もうあと5分ぐらいしかないじゃん。急ぎ足で神門をくぐり、拝殿へと行く。拝殿の前に立ち、とりあえず財布から10円、を出そうかと思ったが、それでは財政難の靖国神社に対してなんだなと思って、100円硬貨(あまりカワランけど)を取り出し賽銭エリアに投げ込んだ。何を祈ることなく、そそくさと手を合わせ参拝を済ませた。少し、拝殿の前から周囲を眺める。そして神門へと戻った。

 とにかく、たくさんの数の老若男女のみなさん(善男善女のみなさんが、というコトバが浮かんだが、はっ仏教ではなかったなと思ってやめた)が参拝をしに集まっている。この風景を見ながら、僕はなるほどと思った。何がなるほどなのか。毎年の8月15日の正午前後であると、ここで見る人々は大別すると、右翼団体関係の人々と警視庁機動隊関係の人々と、遺族の家族らしき方々と、戦争体験者のみなさん、その他に学生さんらしき若者やマスコミ関係とか日本陸軍のコスプレ(たいてい帝国陸軍なのである。なぜに海軍はいないのか)(ちなみに、年代的には明治の初期の頃の軍服とか昭和の軍服とかあって、見ていて楽しい。陸自の格好はないのは、なぜか)をした人々とかがいる。あるいは、ワタシのようなタダの物好きでここに来ていますという者もいるであろう。

 ところが、である。この日の夕刻の靖国神社では仕事帰りと思われるサラリーマンとかOLとか、若者とか、とにかく一般の市民のみなさん、年齢層は若い世代が多いように見える。少なくとも、昭和20年以後の世代が大多数である。女性も多い。この時間になると、参拝者の層がこうなるとは知らなかった。自分は今まで8月15日に靖国神社に来る人々は上記の正午前後に来る人々の参拝者層のパターンだと思っていた。

 しかし、そうではないのである。フツーの市民のみなさんがフツーに参拝をしに来ているのだ。正午に集まっている人々の方が、ある意味で「とくべつ」な人々だったのである。A級戦犯の合祀がどうとか、国家神道イデオロギーがどうとか、中国・韓国からの批判があるとかどうでもよくて、みなさん、ごく普通に自然な感覚で8月15日に靖国神社に来るのである。この感覚は、例えば年末年始に神社にお参りするように、8月15日は戦争で亡くなった人々の冥福を祈る、というような感じとでも言おうか。そして、これは自然な感情であって、いかなる政治、宗教、イデオロギー色があるものではない。

 さて、では帰ろうと、もと来た道を戻り、九段下へ向かって歩く。暑い。ムシムシする。陽は沈んだとはいえ、九段は東京のまっただ中である。さぞや、ヒートアイランド現象が激しいであろう。涼しいわけはない。ダブダブのズボンに、ノーネクタイでダブダブのワイシャツを着て、バックを肩からさげて歩いているという、なんとなく昭和20年代の頃のサラリーマンみたいな格好で、頭の中では「暑い。ビール飲みたい。アイス食べたい」の繰り返しであった。

 参道は、参拝を終えた人々と、これから拝殿の方へ向かおうとする人々で溢れている。7時で門が閉まることを知らないのか(僕も知らんかったけど)とにかく人が集まってくる。そうした人々の光景を見ながら、僕は考える。

 A級戦犯の合祀について言えば、あの日から61年たった平成の日本人にとって、誰が祀ってあって、誰が祀っていないということはどうでもいいことなのだろうと思う。この神社はソモソモ明治政府の神社であって、とか、西郷隆盛や新撰組や彰義隊や白虎隊などは祀っていない、とか、東京裁判で裁かれた東條英機が、荒木貞夫が、武藤章が、土肥原賢二が、とか、そうしたことはどうでもよくて、ただ先の戦争で死んでいった人たちを悼むという自然な感情の発露なのだと思う。国が愛国心をどうこう言うからではなく、一般人のごく自然な感覚として、戦争で死んでいった人たちを悼むということである。

 もちろん、だからといって、日本が戦争する国家になるわけではない。あるいはまた、中国、韓国の人々の感情を踏みつけたいと思っているわけではない。右翼の言うことにはついていけないし、同様に左翼の言うことにもついていけない。と同時に、国が戦争で亡くなった人々を追悼するのは当然のごく当たり前の自然のことだと考える。そうした意識が一般の市民に生まれ始めている。僕はこれまで、やがて月日がたって、遺族の方々や戦争体験者がいなくなると、靖国神社は護国神社のようにさほど訪れる人もない、ただの歴史的な史跡になるだろうと思っていた。しかし、どうもそうではないのではないか。これから先も、戦争体験者がいなくなっても、8月15日には人々は靖国神社を参拝するのではないだろうか。そして、やはり人々が集まるのは靖国神社なのである。千鳥ヶ淵戦没者墓苑ではない。

 今、フツーの日本人の感覚に、これまでになかった「国家」意識が生まれてきているように思う。それは、戦前の国体とは違うものだ。しかし、政治やイデオロギーやマスコミや国際世論が、それを偏向させ、話を大きくしているのではないか。靖国神社を、肯定するにせよ、否定するにせよ、なんか無理に政治やイデオロギーにつなげようとしていないだろうか。何度も繰り返すが、あの戦争で亡くなった人々を静かに追悼したいだけなのである。昭和天皇の富田メモがどうだったかとか、一般市民にとってみれば、どうでもいいのである。

 太平洋戦争は、実体験や記憶から、メディアによるイメージになりつつある。誰もあの戦争を体験していない。誰もが、あの戦争があったということしかしか知らない時代になりつつある。ある者は、映画や小説で知った戦争であり、ある者は口承で知った戦争であろう。中国や韓国からの批判があることで、逆に戦後日本人は忘却しつつあった大東亜戦争のことを知ったのだ。これは、平成日本人の国家の「発見」であった。我々日本人にとって、そしてアジアの人々にとって、過去、この神社がどのようなものであり、なんであったのか、それはそれとして考察し続けなくてはならない。しかし、平成日本の一般市民が靖国神社に対して感じる意識は、そうしたものとはまた別のものなのだと思う。それが具体的にどのようなものであるのかは、まだよくわからないのであるが。

 とまあ、上記のようなことを漠然と考えながら、テクテクと九段下から神保町まで歩いてしまった。
 家に帰る途中で、近所の生協でスイカを買った。夏はスイカすね。

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Comments

真魚さん、

お忙しい中、参拝されたのですね。
前年比10倍増のお賽銭、エライ!(来年もこの倍率で宜しく)
私は今年は参拝が難しそうです…みたままつりか例大祭に、と思っていたのですが。

今回の記事は、残暑の雰囲気が漂い味わい深い。
特に最後3つのパラグラフには、素直にそうだなあ、と。

と思う一方で、以前、舎さんも仰っていたけれど、私の知る限り護国神社と言うのは今でも地域に根付いていて、町内会で戦没者慰霊の為に集金があったりするようで。仰せの様には廃れてはいないと思うのであります。

いずれにせよ、せっかく芽生えた平成日本人の靖国に対する意識が、情緒に流され政争に使われぬよう、やはり私はどこかで「割り切り」が必要だと思うのです、神社と遺族に。ケジメはつけましょうよ、と。

合祀は厚労省の認定と指示で人為的に行われるのに、ろうそくの火が…などといって分祀だけは無理、と言うのでは流石に日本文化って、つごうよすぎ、で、周囲のガイジン友達に納得させようとも思えない。

ところで真魚さん、ダイエット成功したのですか。スイカの次は梨、梨は90%が水分だから、たくさん食べてもリバウンド、ナシ…


Posted by: kaku | August 19, 2006 at 10:38 AM

kakuさん

うーん、賑わっている護国神社って見たことないのだけど、それはワタシの以前住んでいたとこだけなのかしら。しかし、そうであったとしても護国神社となると、関係者がいなくなる将来も賑わうかどうかは疑問ですね。そうであるのならば、乃木神社とか東郷神社はそれほどメジャーにならないのはなぜかと思います。日露戦争や日清戦争、戊辰戦争はいまや人々の記憶から消えていますし。まあー、うちの近くにある近藤勇の墓とか訪れる人多くて、全然寂れていないですけど。

靖国神社って、今だに「日本国の神社」だと思っているんじゃないかなと思います。いち宗教法人になったという感じはしないですね。遊就館なんて、なんでああしたものを作るかなあと思います。フツーの一般市民が靖国神社に抱く感覚とズレています。本来の神道になってくれないものかなと思うのですが、あーゆーいう神社ですからねえ。

体重はですね、このまえアメリカへ行って帰ってきたら4キロ減っていたのでヤッターと思ったのですが、その後また自堕落な生活に戻り、うううっ今、体重計に乗る勇気はないです。

そうですか、スイカはダイエット食品ですね。
昨日の晩はカップ麺とスイカでした。

Posted by: 真魚 | August 20, 2006 at 05:18 PM

こんにちは
「右翼の言うことにはついていけないし、同様に左翼の言うことにもついていけない」・・・まあ、普通の感覚なんですよね。
問題は「誰が喧嘩を売ってるのか」って事で、そこを見ると「右も左も」と対等に見る訳にはいかんだろうな・・・と思います。ていうか中韓に反発するのは「右翼」じゃないし、彼らの反日はフツーに「ナチス」と同じだもん。それが「それを偏向させ」ている「政治やイデオロギー」なんだよね。
そう思うと「中国、韓国の人々の感情を踏みつけ」って感覚にはいささか疑問符・・・なんだな。

Posted by: B | August 16, 2007 at 11:18 AM

こんにちわ

ちょっと今年は仕事で15日は靖国神社へ行けなかったんですが、まあ、なんか、別に8月15日だからというわけでもないかなとも思いますし。

8月15日というのは、マスコミにとってのイベントなんですね。でも、フツーの感覚からして、中国、韓国がどうこうというのも、ふーんという感じだし。中国側、韓国側も、確固たる信念と思想と覚悟があって反日をやっているわけではなくて、気分的なものが大きいし。日本も中国も韓国も、フツーのみなさんというのは、そういうもんなんです。そういうもんなんだから、とりたてて、これを宜しくないと騒ぎ立てることもないじゃないかと思います。ところが、この世の中には、それを変に歪めて拡大解釈するナニモノカがあるんですね。

そのナニモノカとは一体なんなのか。そうした視点というか、思考を持っていたいと思います。

Posted by: 真魚 | August 17, 2007 at 02:19 AM

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