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July 16, 2006

最近のヘラトリ,Time,Newsweekを読んで

 平日は仕事があって、満足に新聞や雑誌が読めない反動からか、休日は午前中からTIMEやらNewsweekやらノートパソコンやらをバックに詰めて、神田神保町のカフェーに行って、日なが一日ぼおーとしているわけであるが、このへん思えば、遠い昔の大学生の頃からそうだったわけで、ニューヨークやバークレーにいてもこうだったし。学生時代の習慣は、その後も消えないものなのだなと思う今日このごろ、みなさん、いかがお過ごしですか、というのは某有名ブログの書き出しのマネ。

 というわけで、土曜日のInternational Herald Tribuneをつらつら読んでいたら、Editorialsに"What we expect from St. Petersburg"というコラムがあった。あーG8はロシアでやるんだったなと思い、どれどれと目を通してみると、署名にVladimir Putinと書いてある。えー、どっかで見た名前だなと思ったらロシア大統領のプーチンではないか。G8を前にして、ロシアの大統領が英語圏の国際新聞に英語でコラムを書いて出しているのである。

 でまあ、読んでみると、ロシアは世界経済への資源・エネルギーの提供国になるとか、新しい知識の創造と応用が経済の発展にとって決定的なことなので教育は重要だとか、世界の平和と安定を維持し、アフリカ諸国の貧困をなくすためにロシアはイランの核問題について、アメリカの共同で対処したいとか、とりあえず、一通りのことを書いている。逆から言えば、地球温暖化とかについては一言も触れていない。また、国境を隣接する中国とインドについてさほど触れていない。

 ロシアは、元ソビエトだった国である。今でも、アジアと国際社会に影響を持つ国である。プーチンがヘラトリに書いていることは、ありきたりなことと言えば、ありきたりな内容なのであるが、国際的な基準から見て一国の指導者が当然考えるべきことは踏まえていて、これを読む世界のヘラトリ読者の人々は、ロシアに対して親近感を感じるであろう。ロシアにとって、旧ソビエトのイメージを払拭することがなによりも大事なのである。ロシアというと、「遅れている」とか「西側諸国とは価値観を別にする国」というイメージが今でもある。これに対して、こうした国際新聞で国家元首がコラムで自分の意見を表明することにより、国際社会はロシアを自分たちと同じ価値観を共有していると感じるであろう。実際のところ、ロシアは他の国とは別の独自の価値体系をもったところがある。しかし、こうして新聞で国家元首が意志を表明することは大きな意味がある。

 ひるがえって、わが日本国の小泉総理はどうであろうか。こうして世界の人々が読んでいる国際新聞に英語でコラムを書いたことがいまだかつて一度たりともあったであろうか。誰が読んでいるのかよくわからないメルマガでは、「らいおんはーと」とかいうものを書いているが、ブッシュの前でプレスリーのモノマネをする日本国の小泉純一郎と、自国で開催されるG8を前にしてInternational Herald Tribuneに英語でコラムを書いて載せるVladimir Putinの差は大きい。

 話題は変わり、少し前になるがNewsweekのJun 26の特集"Can America Comperte?"はたいへん興味深かった。最近のNewsweekは、世界は今こうなっていて、こう変わってきていて、その新しい環境の中でアメリカはどうすればいいかというマクロ的な視点の記事が多いように思う。そして、そうしたマクロの変化が、実際の企業の現場にどう関わってくるのかという記事が多い。これは実質的に、世界は今大きく変化しているからだ。その中で、アメリカは、企業はどうあるべきなのかという問いかけが多い。こうした内容は、少なくともこれまでのTIMEやNewsweekにはなかったと思う。私は、学生時代の80年代からTIMEやNewsweekを読んできたが(といっても、その頃の自分の語学力では読むではなく、眺める程度であったが)、今のTIMEやNewsweekほど読んでいて楽しいものはない。あの頃は、アメリカとそれを凌駕する経済パワーになった日本との対抗しかなかったと思う。しかし、今はボーダーレスでフラットになった世界をTIMEやNewsweekの紙面から強く感じる。

 この特集"Can America Comperte?"の中のFareed Zakariaのエッセイ"How Long will Ameria lead the World?"はたいへん示唆に富む記事だった。Fareed Zakariaはいい記事を書くジャーナリストだと思う。この人の本"The Future of Freedom"は買って持っているけど、まだ読んでいないけど。この人は、自分が進行役を務める"FOREIGN EXCHANGE Where America Meets the World"という番組を持っていて、この番組は全米のテレビで流れているわけであるが、ネットでもこの番組のウェブで見ることができる。最近はこうやってアメリカの番組をネットで見ることができるので、いい時代になりました。

 このエッセイは、冒頭、1897年6月22日のイギリスのビクトリア女王の即位60周年式典の様子から始まる。ビクトリア女王の時代のイギリスこそ、世界に冠たる大英帝国に最盛期の時代であった。イギリスは、最新のテクノロジーである電報と英国海軍によって、この惑星全土を支配(当時のニューヨークタイムズがそう表現しているのだ)していた。そして、Zakariaは、この式典のとてつもなく豪華な式典を記述した次に、この式典を当時8歳の少年だった歴史家アーノルド・トインビーが見ていたことを書いている。トインビーは、このビクトリア女王の即位60周年式典が、大英帝国が最も輝いていたと回想している。つまり、この後、大英帝国は没落の道を進むのである。

 では、アメリカはどうなのか、とZakariaは話を進める。このへんの書き方がうまい。イギリスのように、アメリカもまた全盛から衰退の道を進むのだろうかということである。Zakariaの結論はノーだ。アメリカは今後も発展していく。なぜならば、と話は進むのである。その理由のいくつかをZakariaは書いているが、その中で印象深いのは、まず人口である。

 人口については、世界の先進国はどこも小子化になっているのに対して、アメリカは逆に人口が増える。これは、アメリカには移民があるからである。私も先日、アメリから帰ってきて、まず感じたのは日本は年寄りが多いということだ。アメリカでももちろん年寄りはいるが、ワカイモンも多い。この人口が増えているということが、アメリカの活力のひとつになっている。

 次に教育だ。労働集約型産業や、アウトソーシングできる事務作業等は、今の時代は中国やインドへシフトしている。では、なにをもって外貨を得るのかということである。世界の中では、国は鎖国して自給自足でもしない限り、外貨を得て、その外貨で外国から資源や食料を買わなくてはならないのである。ではどうするのか。福祉産業では、国内で老人という同国人相手のビジネスになる。福祉は、基本的に外国との商売ではない。アメリカは、簡単に言うと、新しい知識や技術やデザインを世界のマーケットで売って商売していく国になろうとしている、というか、もはやそうなっている。そうした国になるためには、教育がもっとも大事であることは言うまでもない。ところが、我が国では、愛国心がどうのこうのという話しかされていない。愛国心が大切だということはよくわかるが、その先はどうするのだろうか。

 個人が知識や技術を学ぼうと思ったら、いつでも大学や教育機関で学ぶことができるようになること。図書館などといった公共の知識・教育施設が充実していること。そしてなによりも、大学を出て就職して、その後、学校で学ぶことができないという今の日本の社会のあり方を変えることが必要だ。これは、ポストインダストリアル社会にとって致命的なことであり、これができないということは新しい産業社会には日本はならないということである。こうした根本的なところは何ひとつ変わらなくて、それで景気が良くなったと言っているのは、ようするにこれからの世界はどうなるのかわかっていないのである。

 最後に、Time July 17から。Timeは"The End of Cowboy Diplomacy"というタイトルの記事で、ブッシュ政権の外交政策の終焉を述べている。この記事はUS国内版では、カバーストーリーになっていて、この記事をめぐって、アメリカのネットでは結構話が盛り上がっている。ブッシュの外交政策がいかに間違っているかということは、このブログでも何度も書いてきた通りだ。最近のTime,Newsweekは、はっきりとブッシュ政権の外交は間違っていたと主張するようになってきた。当然といえば、当然のことなのであるが、これも政権の任期が終わりに近づいてきたこととも関係しているであろう。ワタシからすれば、NYTも含めてイラク戦争の開戦時、Time,Newsweekも明確に反対しなかった、いまさら何ゆーてんねんという思いがあるのであるが、まあ、あの時それをやったらヤバかったということもあるが。

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Comments

>ブッシュの前でプレスリーのモノマネをする日本国の小泉純一郎と、自国で開催されるG8を前にしてInternational Herald Tribuneに英語でコラムを書いて載せるVladimir Putinの差は大きい。

昨年9月頃、こちらのブログでカーネギー国際平和財団のアンダース・アスランドが今回のサンクトペテルスブルグ・サミットをロシアの民主化推進の好機と述べていたことに触れました。今サミットはロシアが議長ということで以前から対欧米関係が注目されていたのですが、どうも北朝鮮やパレスチナ危機でこの問題は霞んでしまった感があります。

プーチンはIHTに投稿していましたが、英語は得意でしたっけ?ドイツ語はよくできると読んだような。実際にはスタッフの執筆か?(プーチンが国際会議や記者会見で英語を話すところを見たことがありません。)

それにしても純ちゃんはStペテルスブルグでも踊ったとか。たしかにプーチンとは大違いです。

それにしても私は今、ロシアについて書いているところです。北朝鮮についても書いたばかり。偶然の一致。

Posted by: 舎 亜歴 | July 17, 2006 at 11:30 PM

真魚さん、

<<そしてなによりも、大学を出て就職して、その後、学校で学ぶことができないという今の日本の社会のあり方を変えることが必要だ。

そうかな?結構、6~8時以降から始まる大学院コースや放送大学に通っている人知っていますよ。そして、結構会社に来る履歴書には就職後、お金を貯めて海外のMBAや大学院(オーストラリアが多いですね)に行っている人を見受けます。大手企業、特に金融ではヨーロッパの学校に会社が経費もちで行かれている方にも会っています。

日本の政府の機関関係の方もアメリカでMSやPhDを取りに行かれた方は知っています。

Georgetown Universityの東京Alumni Clubのメンバーのほとんどは日本の大学を卒業して就職した後にMBAを取りに行った日本人ですよ。

アメリカでも、ヨーロッパでも一度就職した後はそれなりのSacraficeをしないとMBAやマスターズは取れませんよ。私も考えましたが、進んだ道が当初、MBAやMSでは投資に見合った報酬がないと考えたので取りに行きませんでした。

フリータの方々にもっと学術的にがんばってもらわないとね。

MikeRossTky

Posted by: マイク | July 18, 2006 at 06:42 PM

舎さん、

G8前のことですが、ロシアの現状について、まだ民主化に至っていないとチェイニーが述べたことに対してプーチンが怒りましたね。ブッシュ政権としては、ロシアの民主化はまだ完全ではないという認識があります。これについて、NewsWeekのZakariaはチェイニーはロシアを理解していないと書いています。ロシアの民主化の状況については評価が分かれています。

IHTのプーチンのエッセイは、プーチン本人が書いたものではないかもしれません。確かにプーチンが英語で会議や会見をするところは見たことがないですね。ゴルバチョフは英語が達者な人でしたが、プーチンはそうではないようです。

Posted by: 真魚 | July 19, 2006 at 11:28 PM

Mike,

日本でも、金融だけではなく中央官庁や大手企業では留学制度があるところは多いですよ。大体まあ、仕事関係の留学になるわけですが。しかし、アメリカでは日本以上に、社会人を対象にしたコースやインターネットを使った遠隔教育も多いです。コースの種類も豊富ですね。

日本の大学教育は、基本的にまだ学生相手の教育機関のままです。これから、大学は少子化で対象を学生から社会人に向けざる得なくなりますが。社会人に対して何をどのように教育するのかということが明確になっていないところが多い。

Posted by: 真魚 | July 19, 2006 at 11:30 PM

>ブッシュ政権としては、ロシアの民主化はまだ完全ではないという認識があります。

ロシアに懐疑的な見方は欧米に広く行きわたっています。この記事にTBした記事にもありますが、アスランド(元スウェーデン外交官)もIIEに移ってからロシアに一層厳しい論文を書いています。同じくIHTで民主・共和両党の元大統領候補がロシアに強く当るべきという論文を出しています。

他方、こうした見方に反対の声もあります。イギリスのライン元駐露大使もザカリアに近い考え方です。

ところで、プーチンがIHTに投稿したなら、純ちゃんも韓国のメディアに投稿すればと思うのですが。実際にノ・ムヒョンの北朝鮮政策を厳しく批判するメディアは多いです。ハングルが駄目なら英字紙があります。空々しい日韓友好ムードなど盛り上げなくてよいから、本当の脅威を認識する韓国民を日本側に引き寄せられればと思います。

中国は自由な報道がないので、日本の政治家が投稿して日本の立場を訴えるのは無理です。そもそも、日中は正面衝突が宿命づけられている(とは言っても”デタント”ができないわけではありませんが)ので。

Posted by: 舎 亜歴 | July 19, 2006 at 11:51 PM

舎さん、

ロシアはアメリカとは違う形の他民族国家ですので、欧米の基準では理解し難いところがあります。日本のロシア研究にも優れたものはありますので、それらを踏まえたロシア理解をする必要があります。

韓国のメディアで日本の政治家にインタビューしているものは数多くあります。しかし、やはり英語ですね。英語で書けば、欧米のメディアも注目するでしょうし。大体、シンガポールにせよマレーシアにせよフィリピンにせよ、国の指導者はみんな英語で読み書き話すことができます。

Posted by: 真魚 | July 20, 2006 at 12:46 AM

>日本のロシア研究にも優れたものはありますので、

そうですね。実際にライン元英大使はストローブ・タルボット、日本の渡辺元大使と共著でロシアに関する本を出版していると紹介されています。こちらのブログ記事でも日本人の議論も取り上げたいと書いたのですが、政治問題は次々におきます。また、余りの多くの情報があふれています。なかなか全てに目が行き届きません。

新聞投稿といえば、日本の政治家がロシアでも極東の新聞に投稿するのもよいかも知れません。内容は翻訳してもらえばよいです。北方四島の話しをモスクワやStペテルスブルグばかりに向けても効果は期待できません。極東の住民なら、四島の同朋の生活が保証される限り、領土などさっさと返還して日本とビジネスする方を望むはずです。広く大衆に訴えるには現地語メディアが有効です。

Posted by: 舎 亜歴 | July 21, 2006 at 12:52 PM

舎さん、

ロシアとイスラムについて自分がもっとも多くを学んだのは、山内昌之先生の著書です。この人は歴史学と国際関係論を融合して論じることができる希有な歴史学者です。外国のロシア研究者には、どうも西欧中心主義があるように感じられます。エドワード・サイードが言った「Orientalism」です。我々アジア人は、欧米の研究者のマネをする必要はありません。我々は、欧米プラスアジアの視点を持つことができるはずです。

新聞に投稿するというには、まったくその通りだと思います。日本も東京がからむとややこしくなります。永田町の政治家ではなく、新潟や北海道などの政治家がハバロフスクとかイルクーツクなどの新聞で発言すべきです。そうした地域レベルのグローバル化が、本来もっと進んでいいはずなんです。

Posted by: 真魚 | July 22, 2006 at 08:07 PM

ロシアに対して日本の立場は基本的に欧米と同じと考えています。ただ、これはロシアだけでなく、イスラム圏であれ、他の第三世界であれ、現地の権力に入り込んでゆく能力は明らかに日本より欧米の方が上です。私がとり上げたアンダース・アスランドもロシアとウクライナで政府顧問を務めていました。

やはりコロンブスやガマ以来、世界に進出してきた国民と、たかだか「日帝36年」で恨みだけをかった国民の違いは歴然としています。

モスクワやStペテルスブルグではとても日本人がYanks & Britsと競争しても勝てない(能力が充分でも、受け入れ側はどうしても後者を選んでしまう)かも知れませんが、極東ロシアなら日本人の方が有利かも知れません。

極東ロシアの大学で日本語学科の人気は高いです。犯罪組織のために中国人の評判は悪いですが、逆にこれが日本人の評判を高めています。

現在、東シベリアでのパイプライン開発が議論されていますが、ここはシベリアトラやアムールヒョウといった絶滅危惧種の生息地でもあります。パイプライン建設によりred databook animalsへの圧迫が懸念される中、日本の技術で環境に配慮した開発が成功すれば、極東ロシアでの日本の立場は強化されるでしょう。

ちなみに、この絶滅危惧種の問題は温暖化と違って明らかな事実です。モデルをいじって学者たちが議論するようなものではありません。

Posted by: 舎 亜歴 | August 06, 2006 at 06:34 AM

舎さん、

ロシアの沿海地方の投資については、ロシア側にまだまだ課題が多いです。西側資本のビジネス感覚がまだ定着していません。これからですね。

Posted by: 真魚 | August 07, 2006 at 12:47 AM

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