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July 13, 2006

北朝鮮のミサイル騒動について

 今、地球上で火薬庫のような地域になっている場所は、二つある。ひとつは、中近東で、もうひとつは極東である。この二つの地域に、今、全世界の注目が集まっている。その真っ只中にあるのが、わが国日本である。

 そこで、このミサイル騒動をめぐる言論について、「日本とアメリカはさらに親密な関係を持たなければならない」とか「日本はアメリカと共同で対処しなくてはならない」とか「日本は軍事力を増強しなくてはならない」みたいな意見は数多いのであるが、「中国・ロシア・韓国と安定した外交関係を保っていかなくてならない」という意見をまず見ないということだ。

 北朝鮮に影響力を持っているのは、中国とロシアと韓国である。今回の北朝鮮が発射したミサイルも、東の日本海(つまり、日本とアメリカ)に向かって発射したのであって、西の(ロシア・中国がある)アジア大陸に向けて発射したものではなかった。テストしたいと言うのならば、東ではなく西に向けて発射したっていいだろと思ったものであるが、彼らは西に向かって発射するつもりはないようである。

 で、あるのならば、北朝鮮に影響力を行使できる国と一緒になって、北朝鮮というこの迷惑な国に対処するのが当然だと思うのであるが、日本はこれができない。なぜならば、日本はアメリカ側であって、アメリカ依存の外交関係「しかない」ので、中国やロシアと親密な外交関係を築くことができないのである。いわば、日本は外交的自由度が非常に狭い。外交戦略のオプションが乏しい。

 しかし、これはやはりへんではないかと思う。極東という21世紀の世界の二大火薬庫のひとつの地域で、他の周辺諸国とはさほど外交関係を持たず。太平洋の向こうのアメリカとだけ強固な関係を持っているというのは、なんかへんではないだろうか。

 日本政府は、国連の安保理に北朝鮮への制裁決議案を提示しているが、どうせこれは安保理常任理事国として拒否権を持つ中国とロシアがゴネるであろう。そうした時、中国とロシアに向かって、極東の秩序を乱す北朝鮮を制裁するのは当然のことであって、これに反対するのならば、あんたらも北朝鮮の仲間と見なすみたいな主張をするのが、自立した国の外交である。そして、これができるようにするには、中国やロシアと親密な関係を持っている必要がある。安定した関係であるからこそ、思い切ったことが言えるのだ。また、日本とアメリカが北朝鮮に対して経済封鎖を行ったとしても、中国と韓国とロシアが北朝鮮を援助していれば経済封鎖にはならない。そうなると、経済封鎖は何の意味も持たない。そう考えてみれば、この極東の周辺国と日本の外交関係はいかに重要であるかがわかるであろう。

 今回のような北朝鮮の暴走は、これで終わりだとは思えない。これからも何度も起こることだろう。日本は国家の安全保障の観点から、アメリカ一辺倒の外交でいいのか見直す必要がある。日本は極東地域の安定と平和を、アメリカだけとの外交関係によってではなく、日米関係を基軸に置きつつ、中国・ロシア・韓国との外交関係によって築いていく必要がある。なんども書くが、それが独立し自立した国家の当然の姿なのである。日本が中国やロシアと関係を密にすれば、アメリカ様が怒るであろうなどと邪推することこそ間違っていることであり、超大国アメリカと日本の関係がその程度で揺らぐことはない。

 もうひとつへんだなと思うのは、アメリカの北朝鮮への対応である。これは別のエントリーとしたい。

補足
本エントリーを書いたのは3日ぐらい前のことなのであるが、ココログのメンテナンスでアップできずになっていた。文中で、中国・ロシア・韓国と安定した外交関係を保っていかなくてならないという意見をまず見ないと書いたが、そうでもなく主に野党の方からそうした声が上がっている。例えば、民主党の菅直人代表代行は、「国境を接する中国、韓国と首脳間対話ができないことが、大きなマイナス要因になっている」と述べている。

これは確かにその通りなのであるが、しかし菅直人がこうしたことを言っても、なんの説得力を感じないのはなぜであろうか。民主党が中国との関係を親密にせよと言えば言う程、この現状では中国のいいなりになるんじゃないかという危惧を感じるのである。ようするに、アメリカと中国という二大超大国の間にある日本は、現状の外交能力では、アメリカに従属するか、中国に従属するかしかない。中国に従属するなどまっぴらごめんだという意識が、日本をより一層の対米従属に押し進めているのである。よって、今後さらに中国の影響力が増すということは、今後もますます日本は対米従属に傾いていくということになる。この現状から脱却することが必要だ。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

拝読させていただきました。少し自分の意見を述べさせてもらいます。
>テストしたいと言うのならば、東ではなく西に向けて発射したっていいだろと思ったものであるが
陸地に着弾してしまえば、それはテストではなく「攻撃」になってしまうでしょう。かといって北朝鮮国内で端から端にとばしても弾道弾のデモンストレーションにはならないのだから、当然東にうつでしょう。そして
中国の面子を丸つぶれにしたという意味で、このミサイルは中国に向けたメッセージでもあったと思います。

>で、あるのならば、北朝鮮に影響力を行使できる国と一緒になって、北朝鮮というこの迷惑な国に対処するのが当>然だと思うのであるが、日本はこれができない。なぜならば、日本はアメリカ側であって、アメリカ依存の外交関>係「しかない」ので、中国やロシアと親密な外交関係を築くことができないのである。
どうでしょう。私もそれは正論だと思いますが、今回の騒動がどう決着したかを見るとアメリカ依存もあながち間違いではないのではないですか。われわれがアメリカに強い態度で要求すれば、アメリカは中国に強い態度で要求し、結局中国は北朝鮮に圧力をかけなければならなくなる。それに反してアメリカとも中国とも距離をとっている韓国は、まったくその影響力を行使できず、仲間はずれにされてしまっていますね。今回の騒動を日本の自主外交の必要性を訴える事例とするには少し適切でない気がします。
ちょっと決議案がでたあとの後だしジャンケン的意見ですが、どう思われますか。

Posted by: 猿小玉 | July 31, 2006 at 07:42 AM

猿小玉さん、

コメントをありがとうございます。コメントへのレスポンス、少々お待ちください。今、ちょっと毎日深夜帰宅の状況でして。

国連の決議案は7章が欠落ですから意味はありません。北朝鮮への対応は、すなわち中国にどのように対応していくかということです。あと、今回わかったことは、ロシア・中国・韓国は「同じ側」だということですね。

こうした状況で、アメリカ依存で北朝鮮に対応していくということが、結果的に中国に過剰な自己防衛意識を生じさせ、それが日本の安全保障にとって大きなマイナスになるということを論じてみたいと思います。少々お待ちください。

Posted by: 真魚 | August 02, 2006 at 12:56 AM

猿小玉さん、お待たせしました。

今回の北朝鮮のミサイル問題については、日本政府はめずらしく強硬な態度を示したわけですが、その姿勢の内容たるや、まったくのアメリカ向けのパフォーマンスであったと思います。自民党にせよ、安倍晋三にせよ、本気で日本国の安全保障を考えているとは思えません。

なぜならば、まず、日本・北朝鮮間の間でミサイル防衛がそもそも成り立つのかということです。この距離で、敵(北朝鮮とか、まあ仮に中国だとかとして)が日本国にミサイルを発射して、それを100%防ぐ技術はありません。日本は現在、アメリカ軍との共同で、MIM-104 Patriot PAC-3を今年中に嘉手納に配置する計画を進めています。次は座間か横田に置くと思います。Aegis SM3はミサイル迎撃には適切ではないので、米海軍・海自は、PAC-3を横須賀に置くでしょう。

では、それで敵のミサイルを100%迎撃できるのか。100%はありえません。おそらく70%~80%ぐらいなのではないかと思います。つまり、アメリカとの共同でミサイル防衛システムを作ったって、それは70%~80%ぐらいの話であって、それで日本の安全は万全というわけではないということです。今の日本の風潮は、日米が親密な関係であれば、それで良い。外交などどうでもいいみたいな感じがありますが、それは誤りです。技術的に見て、この狭い日本海を挟んで敵がミサイル攻撃をしてきた場合、完全に防ぐことはできません。だからこそ、「敵がミサイルを撃ってこないようにさせる」ことが必要なのです。

しかしながら、「敵がミサイルを撃ってこないようにさせる」努力は当然するのですが、それでも、敵がミサイルを撃つという事態になったらどうするのかを考えるのが政府というものです。

では、どうすればいいのか。そうした敵の攻撃を想定しているのならば、日本の各都市は核シェルターを完備する必要があります。しかし、そうした話をまったく聴かないのはなぜでしょうか。核でなくても、通常弾頭のミサイルでも、そうとうな数の死傷者が出ます。そうした被害に対する医療施設の準備とかあるのでしょうか。とてもあるとは思えません。中国は敵のミサイル攻撃や空爆を想定した避難施設をもっています。太平洋戦争で、あれほどの空爆を受け、しかも原爆を2回も落とされた国が60年たった今でもそうした施設を都市に作らないというのは不思議ですね。

つまり、日本政府は本気で「敵の攻撃を受ける」ということを意識していないのです。北朝鮮がミサイルテストを行ったので、アメリカと共同でミサイル防衛システムを作る。で、日本国民はどうせよというのでしょうか。命中してしまった都市の人は死んで頂くしかないのでしょうか。であるのならば、なぜ多額の税金をアメリカの軍事産業に支払ってPatriotを買うんですかと私は問いたいです。「Patriotを完備すれば、日本の都市に敵のミサイルは落ちてきません」というのならば、この狭い日本海で100%迎撃ができるという根拠を政府は示して欲しいものです。

現時点での北朝鮮のミサイルは、軍用兵器として使いものになるレベルにまだ全然達していません。しかしながら、子供だましのレベルのミサイルだったからシリアスに考える必要はないというわけではありません。現時点で北朝鮮のミサイルが日本に命中するのかといえば、命中しません。しかし、将来、もし北朝鮮あるいは中国との戦争になった場合、ミサイルを用いた戦争になるというのは確かなことです。

そして、そうであるのならば、この狭い日本海を挟んでのミサイル戦になった場合、今のようなアメリカ完全依存の国防が果たして意味があるのだろうかということです。そもそも、日米安保は、主として、共産軍が日本海やオホーツク海を越えて日本国に進行してきた場合を想定しています。現在のようなミサイルとテロリズムの時代では、時代遅れの産物なんです。

まず第一に、日本国民の安全保障があり、次にアメリカとの共同作戦があるべきです。しかし、安保とは、日本人が日本の地理と現在の時代背景を踏まえて日本国の防衛を考えたものではありません。アメリカとの安全保障条約とは、日本国の防衛を補完するものであって、それだけで日本国の防衛をなしえるものではありません。ところが、実際は自衛隊は、アメリカの防衛を補完するものとしてしか位置づけられていません。今回の北朝鮮のミサイルテストの情報のほとんどすべては、アメリカ軍からの情報提供によるものです。現在の自衛隊は、そうした東アジア全域をカバーする情報収集・分析を行う組織なり機関を持っていません(実は市ヶ谷台の地下にあるかも)(冗談です)。このことを見ても、おかしいと言わざるをえません。

Posted by: 真魚 | August 05, 2006 at 09:52 PM

補足です。

上記のコメントの文章を書いたのは5日の土曜日でした。翌日の6日の日曜日の読売新聞を見ると、北朝鮮のノドンとスカットが「全6発 目標海域着弾」「日米分析 精度「実戦レベル」」という記事が一面に載っていました。目標地点の半径約50キロ円内に命中したと書いてありました。この時期になって「精度 実戦レベル」と発表するのもなんだかなと思いますが、そうであるのならば、ますます政府は以下の行動をとることが当然だと思います。

(1)北朝鮮にミサイル基地をつくらせない
(2)北朝鮮に核兵器を持たせない
(3)日本の各都市に核シェルター施設を装備する
(4)ミサイル攻撃を受けた際の市民の医療施設を装備する
(5)ミサイル攻撃を受けた際の市民の待避ルート、ライフラインの確保
(6)その他諸々の国民の生命と財産を守るための立法措置
(7)日米共同によるミサイル防衛システムの完備

現状を見ると、(7)についてはもう確定しています。逆から言えば(7)しか確定していません。(3)~(6)については、こういった話すら上がってこないわけです。(1)(2)については、アメリカ頼みです。この国は自分で自国の国民を守る外交ができないのです。

Posted by: 真魚 | August 07, 2006 at 01:08 AM

真魚さん、

(7)にはミサイル攻撃を受ける前に相手を攻撃するというコンセプトは含まれるのでしょうか?

MikeRossTky

Posted by: マイク | August 08, 2006 at 06:29 AM

読むのが遅くなってしまって申し訳ないです。了解いたしました。私の意見を書かせていただきます。
ミサイルの撃ち合い、核兵器のパイの投げあいになってしまった場合の対応を考えて自主防衛論を組むというのはあまり考えたことがありませんでした。
そういう全面戦争になってしまった場合というのは日本の国防上確かに想定されていませんね。
そうなってしまえばもう世界も終わりという諦めがあるからでしょう。
私もそこまでする必要はない、もしくはできないだろうと思います。


ミサイル防衛が完全なものでないという趣旨には同意します。
都市核シェルター構想ですが、その計画に実現可能性はあるのでしょうか。
東京は世界でもっとも人口が多く過密した都市だったと記憶していますが、
まずその全員を匿うだけの施設を作ることは不可能だと私は思います。


真魚さんは日本の対米同盟依存が中国に過剰な自己防衛意識を起こさせているとおっしゃられていますが、
日本単独で中国と国家総力戦になった場合を想定して国防を考えると、現在の日本の軍事力ではとても足りません。
そもそも中国は核兵器をもち、大陸間弾道弾を中国の奥地に設置しているわけですが、
日本は国土が狭く多数のミサイルサイトを建設できないということと中国と日本の人口比を考えれば、
核武装が絶対に必要になるでしょう。それもあまり現実的ではないという話も聞きますが、
それでもやる場合はNPTから脱退するということになります。
そういう選択肢は外交的にみて得策ではないと思います。

また日本にとって海上輸送路の防衛は死活的な重要性を持ちます(海上護衛戦)。
そのためには東シナ海からインド洋に至るまでを日本の海とするために空母を含めた艦隊の運用が必要になるのではないでしょうか。
空母は一隻建造するだけでも莫大な予算を食いますが、無論1隻ではダメでしょうから、数隻空母を建造するということになります。
そこまでした場合と、日米同盟に核の傘を提供してもらい、海上輸送路の防衛を行ってもらい自国領域の防衛に専念する場合とで、
真魚さんは後者の方が中国にとって脅威であるとお考えでしょうか。このあたりがよくわかりません。

私は以上のような条件から、日本国民の安全保障があってアメリカとの共同作戦があるのではなくて、
日本国民の安全保障そのものがアメリカとの同盟に直結していると考えています。日本単独での防衛は
不可能か、もしくはコストがかかりすぎるかのいずれかと思っています。

日本の諜報能力の強化が必要であるという意見には全然同意いたします。

補足コメントのところは防衛的施策になっていますが、これを完備したところで日本が中国にたいして有効な
打撃を与えられないならば長期にわたって中国のミサイルが日本に降り注ぐことになり、
経済システムが崩壊してしまうので、日本単独で防衛を考えるのなら攻撃能力を整備するほうが先になると思いますが、如何ですか。

Posted by: 猿子玉 | August 20, 2006 at 06:52 AM

猿子玉さん、

遅くなりました。

アメリカ依存が結果的にどのようなことになるのか。ここから脱却するためには、どのような対策がとれるかということについて、今回、ちょうどいい機会ですので考えをまとめて別エントリーとして挙げました。そちらをご覧下さい。

Posted by: 真魚 | August 27, 2006 at 11:15 PM

Mike,

専守防衛が自衛隊の規則です。
アメリカの海兵隊にも、Rules of Engagementがありますね。
先制攻撃を言っているのはブッシュです。

Posted by: 真魚 | August 27, 2006 at 11:19 PM

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Tracked on August 03, 2006 at 11:54 PM

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