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June 05, 2006

唯一の正当性すら残っていない

 NewYorkTimesによれば、ブッシュとブレアは5月25日のホワイトハウスでの共同記者会見で、イラク戦争は間違っていたことを認めることを述べたという。ようやく(ようやくだ)、彼らは誤りを認めたわけである。

 では、何を間違えたと認めたのか。この記事によると

"Mr. Bush said he regretted challenging insurgents in Iraq to "bring it on" in 2003, and said the same about his statement that he wanted Osama bin Laden "dead or alive." Those two statements quickly came to reinforce his image around the world as a cowboy commander in chief. "Kind of tough talk, you know, that sent the wrong signal to people," Mr. Bush said."

 とあって、ようするに、イラクに「かかってこい」とか、オサマ・ビンラディンを「生死に関わらず」つれてこいと言った発言を"regretted"(後悔している)と言ったようだ。そして、"I learned some lessons about expressing myself maybe in a little more sophisticated manner." (もう少し洗練されたマナーで表現することを学んだ)とブッシュは言ったという。

 ん?間違っていたのは、言い方だけなのか。どうも、この記事は何が書いてあるのかよくわからん。そこで、ホワイトハウスのサイトへ行って、5月25日のブレアとの共同記者会見のスピーチと記者会見の内容を自分で読んでみた。この記者会見は動画にもなって記録されている。

 読んでみると、ブッシュのスピーチに次の文章がある。

"The decision to remove Saddam Hussein from power was controversial. We did not find the weapons of mass destruction that we all believed were there -- and that's raised questions about whether the sacrifice in Iraq has been worth it. Despite setbacks and missteps, I strongly believe we did and are doing the right thing. Saddam Hussein was a menace to his people; he was a state sponsor of terror; he invaded his neighbors. Investigations proved he was systematically gaming the oil-for-food program in an effort to undermine sanctions, with the intent of restarting his weapons programs once the sanctions collapsed and the world looked away.

If Saddam Hussein were in power today, his regime would be richer, more dangerous and a bigger threat to the region and the civilized world. The decision to remove Saddam Hussein was right.

But not everything since liberation has turned out as the way we had expected or hoped. We've learned from our mistakes, adjusted our methods, and have built on our successes."

 ははあ、ここですね。フセイン政権を倒したことの正否は論争中であり、我々みんなが(いえ、ブッシュとブレアだけなんだけど)(あー小泉もそうか)信じていた大量破壊兵器も見つからなかったけど、私は我々が行ったことは正しかったと信じている、とブッシュは述べている。以下、フセインはこんなに悪いやつだったんだから倒されて当然だみたいな話が続き、サダム・フセインを倒したことは正しかったと、再度、強調して言っている。

 しかし、そう言っている次に、"We've learned from our mistakes, adjusted our methods, and have built on our successes."とも言っていて、ようするに、我々にも間違いはあったと言っているのだけど、でも、我々はやり遂げたみたいなことを言っていて、なんかはっきりしないのである。

 でまあ、ブレアの方も同じようなことを述べているわけですね、

"I know the decision to remove Saddam was deeply divisive for the international community, and deeply controversial. And there's no point in rehearsing those arguments over and over again. But whatever people's views about the wisdom of that decision, now that there is a democratic government in Iraq, elected by its people, and now they are confronted with those whose mission it is to destroy the hope of democracy, then our sense of mission should be equal to that and we should be determined to help them defeat this terrorism and violence."

 ようするに、フセイン政権を倒したことは、国際社会を分裂させてしまったし、ことの正否は論争中であるとブレアも述べている。しかしながら、なんだかんだ言ったって、民主主義政府がイラクにできたではないかとブレアは言う。これは、ほとんど開き直りなんじゃないか。

 おもしろい(と言っては不謹慎だな)のは、二人のスピーチを動画で聴いていると、なんかこー後ろめたさが感じられるということだ。国際社会の同意を得ることができなかった、フセイン政権打破の正否は論争中であるということをブッシュもブレアも言っている。「しかしながら」(とここで二人とも「しかしながら」)我々のやったことは正しかった、とくるのである。その「正しかった」という根拠はなにかとなると、二人とも"I believe"(私は確信する)なのである。

 この「しかしながら」の部分の、行為の正当性が認められるかどうかであろう。かつて20世紀に、ドイツ、イタリア、日本というファシズム国家と戦ったルーズベルトとチャーチルとスターリンは、こんな後ろめたさを感じことはなかったろうなあと思う。当時の時代の彼らのスピーチを聴くと、後ろめたさなどひとつもなく正々堂々としているのであるが。これに対すして、ブッシュとブレアのこの歯切れの悪さはなんであろうか。

 スピーチの後の記者からも質問への回答でも、「とにかく、イラクは民主主義政府になったんだ」ということをブッシュはやたら強調している。一人記者からの、国連はイラク戦争を違法行為だとしているという質問に対しても、ブッシュもブレアもテロリズムと戦うことは正しいことだみたいな回答しかできない。こうなると話は観念的、抽象的になって、言っていることが納得できるのかというと、なんかわけがわからん。

 ブレアの首相としての訪米はこれが最後になる可能性があるので、記者が冗談まじりに、"At least the beginning of the end of your particular special relationship. "(二人の特別な関係は終わりの始まりですか)という質問が出たのは、単なる冗談にしては意味が深い。イラク戦争は、ブッシュとブレアの戦争だった。

 この共同記者会見について、28日のNewYorkTimesは社説"The Price of Iraq"で、この共同記者会見でブッシュとブレアが誤りを認めたことに触れ、イラクへの軍事介入はいかに間違っていたかを論じている。NYTは言う。

"Of all of George Bush's many arguments for the invasion, the only one that has survived exposure to reality is that Iraqis deserve something better than a brutal dictatorship. But right now the country appears on the way to a civil war among the armed groups competing to impose order on their own terms."

 つまり、ブッシュの言うことで、イラク戦争の正当性の唯一残っていることは(大量破壊兵器はなかったし)、イラクは野蛮な独裁者の時代より良い国になったというものだ。しかし、今やイラクは内戦状態でめちゃくちゃなのである、と書いている。

 すなわち、唯一の正当性すら残っていないのが正しい現状認識なのである。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

真魚さん、

Controvercial=”ことの正否は論争中”ではありません。Controvercial="討論を招く課題である"ですよね。間違えた翻訳までもがリベラルの先入観を示していますね。

上記の記事はイラクではなにも良い事は行なわれていない。アメリカ・イギリスが行なった行動は全く正当化できないと読めます。

しかし、私のブログで取り扱っている”イラクからの朗報”、”アフガニスタンからの朗報”などを読むと、実際には”イラク内部はめちゃくちゃ”ではないことがわかる。

なぜ、リベラルの方々はテロリストと共に状態の悪化を願うのでしょうか?

ブッシュやブッシュのサポーターが”負ければ”、一般の人がどのように踏みにじられようがかまわない、リベラルエリートの考えをどのように正当化できるのでしょうか?

このようなリベラル的考えは韓国での拉致問題の捉え方、キューバ政府をサポートする人達などリベラル的発想に基づいて他人がどのように犠牲になってもかまわない、どんなに”悪”であっても”悪”とは言わない思想となっていますね。

自分の肉親がフセイン、金日成、カストロの配下で投獄されている人達は無視する事ができるリベラルな方々は”リベラル”の言葉の意味を忘れてしまっているように思えます。

MikeRossTky

Posted by: マイク | June 06, 2006 at 12:29 PM

Mike,

"controversial"というのは形容詞で、「物議をかもす」「議論の」という状態を表すものです。「討論を招く課題である」という名詞的なものではありません。"討論を招く課題である"からこそ「論争中」なのでは。

大体、ブッシュもブレアもこうして"controversial"という言葉を使用しただけで驚きです。これまでこうした言葉を使っていなかったと思います。世の中では"ことの正否は論争中"であることを認めざる得ないのでしょう。ブッシュの支持率は低下する一方です。

しかし、私に言わせれば、これは"controversial"ではありません。イラク戦争が間違っていることは、"definitely"や"absolutely"です。

イラクの人々の中には、フセインの頃の方が良かったという声もあります。アフガニスタンでも、 President Karzai's US-friendly administrationへの失望と不信感は高まるばかりです。

ブッシュがやったことは、イスラム諸国の恨みを招いただけです。この恨みが、やがてアメリカへのテロへと発展していきます。そして、また悲劇が繰り返されます。

Posted by: 真魚 | June 08, 2006 at 12:00 AM

You may wish to re-define English, but the meaning is clear. "Decision is controvercial" Decision is the 名詞 and Controvercial is the 形容詞。 The fact is, going to war should always be controvercial. People are going to die. Leaders must make a decision.

<<ブッシュの支持率は低下する一方です。

When a "Leader" starts making decision strickly by gauging popularity, then that leader is useless. Show me a respected leader who did not make hard decisions that went against the wind?

One thing the left does not seem to understand is that Bush is not running for office any more. His popularity means nothing to him. Its up to the liberals to convince people that they can do better. His popularity is just slightly lower than the Democrats and member of congress in general.

<<イラクの人々の中には、フセインの頃の方が良かったという声もあります。アフガニスタンでも、 President Karzai's US-friendly administrationへの失望と不信感は高まるばかりです。

So? There are people who believe the communist party should be ruling Japan in Japan and vote for them even if they loose 100's of seats.

<<ブッシュがやったことは、イスラム諸国の恨みを招いただけです。この恨みが、やがてアメリカへのテロへと発展していきます。

Terrorism existed before Bush came in office. They brought down two buildings in NYC before Bush did anything. The fact that previous Presidents did little (Regan, Bush Sr, Clinton) caused the problem to become bigger.

These terrorist will kill you. If in doubt, why not travel to where they live and see if they will agree to let you live without you converting to Islam.

<<そして、また悲劇が繰り返されます。

The only place where this is not repeated is in places like Syria where they wiped a town off the map. They do not want to talk to you. They want to kill you.

They killed an inocent Japanese traveler couple of years ago. No one in Japan seemed to be angree at the terrorist. Everyone was upset at the young man's stupidity to travel to Iraq.

What was this man's connection to Bush? Why was there no anger against the killers?

MikeRossTky


Posted by: マイク | June 08, 2006 at 07:28 PM

Mike,

After I posted the above article, I noticed that Bob Herbert who is a NYT columnist had written a good column "Consider the Living" on NYT May 29.
http://64.226.238.78/PA/bh/bh207.shtml

I'd like to quote some sentences.

"Pretty soon this war in Iraq will have lasted as long as our involvement in World War II, with absolutely no evidence of any sort of conclusion in sight."

もはや長期化し泥沼化しているイラク。なんの解決策もありません。

"There is no good news coming out of Iraq. Sabrina Tavernise of The Times recently wrote: "In the latest indication of the crushing hardships weighing on the lives of Iraqis, increasing portions of the middle class seem to be doing everything they can to leave the country." "

おや、誰かが「イラクからの朗報」とか言っていたな。でも朗報があるのならば、なぜイラクから出たいと思う人々がいるのでしょうか。

"Iraqis continue to be terrorized by kidnappers, roving death squads and, in a term perhaps coined by Mr. Bush, "suiciders." "

イラクの現状は「めちゃくちゃ」ですね。誰がイラクを「めちゃくちゃ」にしたのでしょうか。フセインではありません。ブッシュとチェイニーです。

"The American ambassador, Zalmay Khalilzad, acknowledged last week that even at this late date, there are parts of western Iraq that are not controlled by American forces, but rather "are under the control of terrorists and insurgents." "

なんとテロリストが支配する国になっているようです。民主化したのではないのでしょうか。ぜんぜん民主化なんかしていないわけです。やはり、唯一の正当性すらないようです。

"Nothing new came out of the Bush-Blair press conference. After more than three years these two men are as clueless as ever about what to do in Iraq. Are we doomed to follow the same pointless script for the next three years? And for three years after that? "

"Leadership does not get more pathetic than this. Once there was F.D.R. and Churchill. Now there's Bush and Blair. "

あの共同会見を見ると、誰でも(共和党支持者を除く)ブッシュとブレアに同じことを感じるようです。FDRとチャーチルの方が良かった。

So, I agree with Bob Herbert 100%!!!

(Bob Herbertのコラム「Consider the Living」は「暗いニュースリンク」さんが日本語訳を掲載されています。)

http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2006/06/by_ceb3.html#more

Posted by: 真魚 | June 09, 2006 at 01:13 AM

真魚さん、

そうですね。すでにBob Herbertさんや真魚さんはイラクのテロリスト達に屈服しているとしかかんがえられないですよね。イラクでは喜びの声。NYTimesやこのブログでは屈服の声。テロリスト達はこのブログでは勝利したように思えます。

詳しくはTrackbackで。

MikeRossTky

Posted by: マイク | June 09, 2006 at 07:43 AM

Mike,
イランに対抗する勢力としてフセインが必要な時はフセインと関係を持つ。ソ連に対抗する勢力としてビンラディンが必要な時はビンラディンを援助する。そういうことをしたのはどこの国でしょうか。アメリカですね。それでいて、彼らが自分たちに敵対するようになると圧倒的な軍事力でつぶす。このどこに自由と民主主義の理念があるのでしょうか。CIAは世界各地の反共勢力のテロ活動に資金を与え軍事物資を援助してきました。

ようするに、アメリカの目的は安全保障と石油利権です。自由と民主主義の理念という高尚なものではありません。自国の利益のためのパワーポリティクスに徹しているのが今のアメリカです。自由と民主主義の理念すらないのです。つまり、それほどアメリカはゆとりがなくなってきた、せっぱつまってきたのだと思います。

Posted by: 真魚 | June 11, 2006 at 12:16 AM

せっぱつまってきているのはリベラルの方々ではないでしょうか?Freedomの重要性を”石油利権”などと… フランスやロシアは石油利権で国連の”Oil for Food"プログラムを悪用したけど、リベラルな方々は一言も。アンチアメリカの名目で勝手な理屈を並べるリベラルな方々の意見は”お見通しです”。

イラク人はザルカゥイ氏の死を喜んでいます。喜んでいないのはリベラルの方々だけではないでしょうか?


MikeRossTky

Posted by: マイク | June 11, 2006 at 09:56 AM

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