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June 20, 2006

On the Road 9

 もう一度、『An Inconvenient Truth』を観てきた。

 最初に観た時は夜だった。実は、一日中歩き回っていたので疲れ果てていて、映画の3分の1は寝てしまったのだ。そこで、これはもう一度見なくてはならないと、気力・体力が十分にある昼間に再度見に行ったのである。

 今度は、最初から最後まで気合いを入れてしっかりと観た。全部しっかりと観てみると、昨日感じたイメージとは少し違うことがわかった。これはかなり政治的な映画だなと思った。昨日の感じでは、ゴアが地球温暖化について教育・啓蒙する映画だと思っていた。しかし、重要なところを寝ていたようである。この映画は極めてアメリカの民主主義のプロセスを表しているものであった。

 これはすごく良い映画ではないかと思い、ユニオンスクエアのBarnes & Nobleへ行って原作本を買ってきた。今回のこの旅行は、荷物がかさばるので本は買わない。買いたい本があったらメモしておいて、家に帰ったらアマゾンで買うと決めていたのであるが、その禁を破りこの本を買ってしまった。でまあ、コインランドリーで洗濯していたり(少しでも旅費を安く上げるために、涙ぐましい努力をしているのである)、Barnes & Nobleの4階の椅子が並んでいるところで座って読んだしてざっと一読してみると、この本は、映画のスクリプトというか、映画の中でのゴアが語っている言葉と、数本の短いエッセイを加筆した内容になっている。映画の中でのゴアのレクチャーで使用した図や写真が載っていて、映画の中でゴアがプレゼンしているシーンが頭の中に蘇るのである。ちなみに、ゴアはマックを使っていて、スライドショーのプレゼンもそれを使っている。Windowsでパワポなんて使っていないのである。

 ゴアは、この映画の中で地球温暖化を無視する議会と政府を批判している。この映画を観て初めて知ったのあるが、アメリカの各都市は京都議定書に"批准"している。国際協定に都市でできるとは知らなかった。アメリカは連邦政府が京都議定書に反対しているのであって、各都市のレベルでは賛同しているのである。連邦政府とは、ブッシュ・チェイニーの大統領府と連邦議会である。連邦政府にとって、地球温暖化の事実は「Inconvenient」なのである。

 この映画の最後のシーンでの、ゴアのレクチャーはもはやたんなるレクチャーではなく優れた政治家の演説だった。

 CO2の排出量が世界最大の国はアメリカである。つまり、地球温暖化に関係している最大の国はアメリカである。そのアメリカが京都議定書に参加していない二つの国の一つなのである。ゴアはそう指摘する。そして、我々は今の現状を変えることができるのだとゴアは語る。ここでアメリカの独立革命から奴隷解放、女性の参政権、第二次世界大戦でのファシズム国家の打倒、アフロアメリカンの公民権、そしてアポロ計画での月到達について、ゴアはこう語る。"We landed on the Moon, one of the most inspiring examples of what we can do when we put our minds to it"と。

 ゴアは原作本の中で、自分は全米の各地でスライドショーを行ってきているが、地球温暖化の事実を知らない人が多いと書いている。日本人以上に、アメリカ市民はマスコミの影響が強い。インターネットは独立したメディア的な内容を持っているが、テレビはまだ業界の支配が強い。

 この映画は、日本人が見ても、ある意味当たり前の内容なのであるが、アメリカの一般市民が見ることで大きな意味を持つ。それはマイケル・ムーアの『華氏911』と同じだ。そして、アメリカの一般市民の世論はアメリカの政治を動かすこともある。「こともある」と書いたのは、おうおうにして世論とはマスコミの影響を受けるからである。だからこそ、マスコミとは別のルートのメディアが必要なのだ。『An Inconvenient Truth』とは、そうした映画なのである。この地球温暖化について、そんな事実はないとしているのが共和党である。共和党がなんと言おうと、この映画の中でゴアが語る地球環境の激変とCO2の上昇についての説明は否定できない。

 だからこそ、この映画は極めて政治的だと思う。ゴアはこの映画の中で、地球温暖化対策は政治の問題でもなく科学の問題でもなくモラルの問題なのだと語っているが、モラルの問題であるが故に、モラルなき今の政治にとって政治問題なのである。

 今度も映画の終わりで、たくさんの人が拍手をしていた。劇場内の売店で、アフリカ系のにーちゃんたちと会話する。「この映画はいい映画だ」と言うので、「うん、知っているよ。民主党支持なの?」と訪ねると、「支持政党はない、政治家はみんな腐っている」と言う。「でもゴアは違う。彼は正しい」と僕が言うと、「イエス、ゴアは違う」と言い、そこで僕が"I hate Bush!!"と言うと、そこからどおっと話が盛り上がってしまった。うーん、アンチブッシュは国境を越えた共通感覚なんですねえ。ゴアの奥さんのティッパーが彼らに人気があるのは意外だった。確かに、ヒラリーよりはティッパーの方がいい。このへんも、国境を越えた共通感覚なんですねえ。


 上記の文章を書いた次の日、もう一度観てきた。結局、3日間毎日見て、合計3回観てしまった。それで原作本を買って読んでしまったのだから、この映画のためにNYに来たわけではないと書きながら、この映画のために来たようなものなってしまった。

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