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May 28, 2006

映画『日本国憲法』

 ジャン・ユンカーマン監督の映画『日本国憲法』をDVDで見た。この映画のことは知っていたのだが、あーそうなの日本国憲法なの、という感じでこれまで見ていなかった。しかし、この映画は第9条を世界の視点から考えるという、たいへん意味のある映画であった。これまで、ワタシはこれを見なかったことを反省したい。

 ダグラス・ラミスさんが出ていることは知っていたけど、ジョン・ダワーやチャルマーズ・ジョンソンが出ていたとは知らなかった。日高六郎さんが、憲法9条を国内的なことではなく、国際的な話にしなくてはならないと語るのを見て、なるほどそうかと思う。日本の憲法なんだから、なんで外国の声も聞かなくてはならないのという保守派からのお決まりの反論がくるかもしれないが、日本の憲法だからこそ、広く世界の声を聞くべきなのだと思う。特に、アジアからの声である。

 小泉総理がイラク派兵を決めたことで、世界の人々は「日本は憲法9条を無視するんだな」「それほど、日本はアメリカに従いたいのか」という認識を持ってしまった。これは、日本の外交上大きな損失であった。

 中韓からの、日本はアジアに謝罪していないという声には、憲法第9条を掲げて、我が国はこうした憲法を持っているのだと胸を張って誇りをもって主張することができるはずだ。第9条は今時代に合わないという前に、そもそも日本は日本国憲法の理念を世界に向かって主張したことがあったであろうか。

 もちろん、僕は憲法は変える必要はあると思う。しかしながら、現状の状況では、日本国憲法が作られた歴史や意味についてなにも知らないまま、今の政府が言ってることだけを鵜呑みして改憲の是非を判断するようなものである。まず、日本国憲法について知ろう。世界の人々が第9条をどのように思っているのか知ろう。Kenpo9Zyoって、これからの世界でキーワードにならないだろうか。

 (第9条を考えるために『マガジン9条』はお勧めです。特に、最近の中国脅威論に対して、本当に我々が考えるべきことはアジアの平和であるはずだ。『マガジン9条』の中国の作家班忠義さんのこのコラムは読んで欲しい。)

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Comments

>「それほど、日本はアメリカに従いたいのか」という認識を持ってしまった。これは、日本の外交上大きな損失であった。

アメリカとの緊密な同盟関係抜きに日本が世界の信頼を得る方法はありません。ヨーロッパが日本を受け容れているのは日米同盟のためで、世界第二位の経済力だからではないはずです。中国経済が仮に大きくなっていっても、共産党支配下の国を仲間として受け容れないでしょう。

アジアとの友好は確かに大事ですが、日本の弱体化と日米同盟の離間を目論む相手には常に警戒が必要です。特に中華帝国、北朝鮮。

それにしても、韓国にはもう本当の敵が誰なのかわかって欲しいです。日帝が憎ければ好きなだけ憎んで下さい。しかし、そんな国はもう滅びました。今のあなた方を脅かしているのは誰ですか?核を突きつけ、自国民を拉致しているのは誰ですか?

キム・ヨンナムさんの家族を見ると、そんな気持ちになります。空々しい友好ムードを盛り上げる必要はありません。両国は共通の脅威に直面しているわけで、下らない歴史論争などいつまで繰り返すのかと憤慨しています。

舎さん、

日米関係は必要ですが、日本の中途半場な自衛隊イラク派兵を見れば、日本が本気でイラクの戦後復興支援をしているわけではないということがわかります。中国も韓国も、そうした日本の実体のなさをを見て「日本はアメリカのいいなりになっている」「アメリカの核の下で、ぬくぬくと繁栄をしてきただけではないか」と内心思っているわけです。彼らが日本を嫌うのは、たんなる日帝が行った過去の歴史に対してだけではありません。今の日本に対しても、彼らは言いたいことがあるわけです。こうなると、日本はアジアの国としてどうなのかという観点から糾弾されることになります。

さらに、アメリカが今後も中国を「敵国」とするかどうか。これについては私は疑問に思っています。アジアの超経済大国になり、巨大な軍事国家にこれからなるであろう中国をアメリカはいつまでも敵国とするかどうか。アメリカ内部でも、ざまざまな言論があります(例えば、次期は民主党政権になった場合どうなるか、など)。そうした場合、アーミテージが主張する日米関係の重要性は簡単にひっくり返ります。少なくとも、将来にわたって永久にアメリカは親中国にならないということはわかりません。これは同盟国を信頼する、しないの話ではなく、外交戦略上、当然考えるべき選択肢のひとつです。

つまり、日本にとって最悪のシナリオは、日本以上の経済大国・アジア最強の軍事大国になる中国にはうるさくこずきまわされ、アメリカの意向は日米関係より米中関係重視になる、ということではないかと思います。だからこそ、日本は主体的に理念をもって、アメリカと関係を持ち続けなくてはならないというわけです。このへんについては、舎さんと同意見です。

 もうこの映画がDVDになっているのですね。前々から見たいとは思っていましたが、中々映画館に足を運ぶ機会がありませんでした。この作品以外にも見逃してしまった沢山の話題作があります。地方に住んでいると中々このような作品に触れることが出来ませんが、DVDは購入して家族で見たい物ですね。

アッテンポローさん、これはぜひとも見るべき映画です。憲法9条を世界の視野で考える必要があることを強く感じました。特に韓国が憲法9条をどう受けとめているかということは、この映画を見て知りました。日本の再軍備化は、日本だけの話ではなく(当然のことですが)隣国にも関わることなのですね。

>アメリカが今後も中国を「敵国」とするかどうか。これについては私は疑問に思っています。

民主党ばかりか財界の中には中国の市場への参入を優先する意見もあります。ただ、アメリカの基本的な政策が自由と民主主義の拡大である限り、時には中国と妥協はしてもNATO諸国、日本、オーストラリアのような同盟国になるとは考えにくいです。

ところでNHKのシリーズ「日米同盟」を観ましたか?スエズからパールハーバーに至るまで、日本ほど良好な米軍基地を提供できるくにはありません。横須賀港ほど設備も熟練工もそろった港湾は中国にも韓国にもないでしょう。

とはいえ、アメリカの日中に対する政策バランスが変わることは充分あります。そうならぬよう、日本は常にアメリカを自分の側に引き留めるべく、双務的な同盟関係を心がける必要があります。

日本の指導者層は民主党とも関係を強めておいた方が良いのですが、なぜか自民党は自らを「保守」政党としているため共和党との関係が強いです。実際には同じ保守でも日米では意味が異なっているのですが。歴史認識問題で一部の日本保守派が戦後の民主化を否定する発言をしているのが、将来の日米の火種にならぬか懸念しています。

イラクについては、またコメントします。

舎さん、

NHKの米軍再編の番組は見ていませんでいた。土曜日の討論番組は見ました。日曜の深夜に再放送するようです。さすがに日曜の深夜なので録画することにします。

1997年の江沢民の訪米、98年のクリントン訪中での米中間「戦略的パートナーシップ」、今回の胡錦濤の訪米などを見てもそうですが、アメリカのアジア外交には、アジア外交の基軸を日本にするか中国にするかという問いかけが常にあります。そのバランスの中に、アメリカのアジア外交があります。では日本の側はどうかというと、日本は台頭する中国を押さえ、アメリカと連携し、アジアの平和の要になろうという構想なり戦略なりがあるのかというと、そうしたものが感じられないのが日本の現状です。

私は、自民党はそれほど共和党と関わっていないと見ています。これは日本の民主党もそうですが、日本のアメリカとのつながりの、そのつながっている相手というのは民主党色が多いのではないでしょうか。そもそも民主党系の方が、グローバライゼーションを推進し、社会工学的に他国を管理しようとする意志が強いです。本来の共和党の社会政策は、その実体は社会民主主義に限りなく近い日本の政治がまねできるものではありません。というか、これができるようになるかどうかに、日本の将来はかかっていると思います。その意味で、自民党も、(日本の)(あーややこしい)民主党も、アメリカの(ネオコンではなく、本当の)保守本流を学ぶべきです。

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