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April 09, 2006

昨年のNewYorkTimesの記事を読んで

 自民党が選挙に圧勝した昨年の9月、NewYorkTimesは"Why Japan Seems Content to Be Run by One Party"(なぜ日本は一党に統治されることに満足なのか)という記事を紙面に載せている。ちなみに、この記事を今、NYTのWebで読もうとしても、過去の記事は有料になっていてタダでは読めないのであった。そこで、どっかにないかなとググッてみたら、なんと台湾の安全保障を研究していると思われるサイトにあった

 通常、他の民主主義国家では、政権はいくつかの政党が交互に交代して運営しているものである。ところが、日本はそうではない。NYTは、こう書いている。

"Japan's democracy is East Asia's oldest, but its ruling party has held power almost as long as the Communist parties in China and North Korea. "

 つまり、「自民党の長期政権保持は、中国や北朝鮮の共産党独裁と同じではないか」と書いている。
 そして、

"Younger democracies in South Korea and Taiwan have already experienced changes in ruling parties, and the underpinnings of democracies, from vibrant civil societies to strong, independent news media, appear to be flourishing there more than they are here."

 つまり、「日本より民主主義の歴史が短い韓国や台湾では政権交代は経験しているし、活発な市民社会や独立したマスコミに支えられた民主主義が日本より進んでいる」と書いている。

 さらに、この記事を読んでみると、ようするに「戦後半世紀間のアメリカの支援と強力な官僚制と中央から地方へのバラマキ行政と自民党による権力の掌握は、何十年も揺るがなくなった。このため有権者は、自民党以外の政党を政権党として選ぶことは、日米間の関係を悪くさせ、社会主義が力を得ることになってしまうのではないかと恐れるようになった。自民党が長期に政権を独占したことが、日本での民主主義の発展を妨げている」という意味のことを書いている。そして、「メディアが自民党の長期政権のため、自民党への投票に不利になる小泉総理のアジアに対する考え方やイラク派兵についての報道をあまりしない」と書いている。

 興味深いのは、

"Just as these pillars of Japanese democracy tend to be tenuous, experts doubt the soundness of the main Democratic Party opposition. The party, made up of former Liberal Democrats, Socialists and other groups, famously lacks unity and could disintegrate if it loses badly."

 「日本の民主主義の基盤は薄いため、専門家たちは、民主党の健全さを疑っている。民主党は自民党の一部と社会党、その他のグループが集まってできたもので、統一さに欠けていて、崩壊しやすい」と書いてある。今回のメール事件では、まさにこのことが露呈したと言えるであろう。

 しかしながら、この自民党が長期にわたって政権政党であったことが、日本の民主主義の発達を妨げてきたというこの記事の見方には、僕は同意しない。戦後の半世紀の自民党政権を見てみると、政党の交代はなかったが、古くは吉田茂と鳩山一郎のように、派閥間での権力交代があった。つまり、自民党というのは一枚岩ではないのである。派閥によって意見の対立があり、いわば自民党内部に異なる「政党」が複数存在していたようなものなのであった。そして、その派閥間の調整により、バランスが取れた政権運営を可能にしてきたのである。

 もちろん、自民党の長期安定政権の背景には、GHQ及び占領時代以後はアメリカ国務省やCIAの支援と、朝鮮戦争からベトナム戦争により特需景気と高度成長政策の成功があったが、基本的には自民党は派閥を単位とした複数派閥政党であったということが、長期間にわたり政権政党であった理由のひとつであったと思う。有権者である国民は、そのことを知っているから安心して自民党に投票してきたのではないだろうか。

 この自民党の複数派閥スタイルがなくなったのが、小泉政権からであった。複数派閥スタイルではなくなったのに、ではなぜ昨年あれほどの大勝を自民党はしたのであろうか。それは自民党に従っていれば、うまくやってくれるだろうという従来からの意識が有権者の大多数にあったのと、NYTの記事にもあるように、マスコミが自民党路線になっていたからであろう。ただし、マスコミは、確固たる信念があって自民党路線になっているわけではなく、ホリエモンブームを見てもわかるように、その時、その時で変わるものなのだと言えよう。

 日本における政治闘争とは、結局、政党単位ではなく、やはり派閥なのであろう。つまり、「民主党」ではなく「小沢一郎」なのである。かつて自民党にいた小沢派閥が、今たまたま民主党にいるだけのことであった。それがいよいよ表面に出てきたということで、自民党は意識しているのだ。結局、この国では、戦後、政党政治そのものが発展することがなかったという意味では、NYTのこの記事の指摘は正しい。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

真魚さん、

この記事を書いたのはアメリカ人ではなく、Norimitsu Onishさんですよね。この人は結構”アンチ日本”、”アンチ自民党”、”アンチ米国”の記事を書くことで知られている人です。

<<結局、この国では、戦後、政党政治そのものが発展することがなかったという意味では、NYTのこの記事の指摘は正しい。

日本の政党政治って発展していなのでしょうか?自民党内での派閥。地方vs都市。若手vs年配。などなど。日本の政党政治はそれなりに。社会党や民主党はそれなりに影響力を日本の政治に与えてきた。また保守党や自由党、さきがけなども少数党だが影響力はあった。今、公明党も自民党への影響力はそれなりにある。政党政治が面白いときはそれなりに投票率もあがる。

真魚さんが好きな政党が勝てないから、日本の民主主義が育っていないと考えるのは間違えでは?平和的に政権が変わり、自民党内での政治は”選挙”で動かされ、任期が終わる前に首相は幾度も代わっている。

昔から、日本の野党は弱かった。社会党は”なんでも反対党”。民主党は”寄せ集め党”。その弱さが自民党の強さだと思います。自民党もなんども分裂した。弱い時もあった。野党はその隙を突く事ができていない。2-3回前の選挙では成功を収めたが、選挙に勝った後の無能さが今を物語っている。

MikeRossTky

Posted by: マイク | April 09, 2006 at 09:03 AM

Mike,

大西哲光さんですね。子供の時に家族でカナダに移住、国籍はカナダ。大学はアメリカのプリンストン。現在、NYTの東京支局長。日本のネットでは Anti-Japan journalist、「またオオニシか」ということでよく知られている人のようです。NYTなので反共和党、よって、共和党とつながりのある小泉政権に対して反小泉なのでは。細かいところでは同意できない点はありますが、ざっと見て、この人のこの記事の内容に間違いはないと思いますよ。外国から見れば、こう見えるでしょう。

保守党や自由党、さきがけなどに影響力はなかったですよ。公明党は政党としての影響力ではなく、その背後の巨大宗教団体の影響力なのでは。公明党を見ても、日本では政党の力はないことがわかりますね。

日本で健全な政党政治が育たなかったのは、GHQの占領政策があったことと、反対勢力としての社会主義が極端であり過ぎたからです。国民の経済生活を豊かにするという意味では、戦後、自民党のやってきたことは成功しました。しかしながら、政治とは経済的に豊かになるということだけではないということを、戦後日本人は顧みる余裕がなかったということでしょう。その余裕ができた80年代に、日本は健全な政党政治になるべきだった。それができずに、今日まで続いているんです。

Posted by: 真魚 | April 09, 2006 at 11:52 AM

真魚さん、

<<日本は健全な政党政治

政治(Politics)は政党政治でなければならないとどこに書かれているのでしょうか?

日本の政治は日本のユニークな環境の中、きちんと日本の市民の意向に基づいて動いていると思います。それを”GHQの占領政策”や”社会主義が極端であり過ぎ”と論じるのは日本の市民がこれまで参加してきた政治のプロセス、選挙などをきちんと評価していないとしかいえません。

もう少し日本に”Credit"を与えても良いのでは?また、自民党が行ってきた政治に対しても”Credit"を与えてもよいのでは?完璧な統治はありません。そのために政治のプロセスがあり、そのプロセスを制した人達が選ばれて政治を行っていきます。

日本国民は世界の中でも”自由”な国民です。

MikeRossTky

Posted by: マイク | April 09, 2006 at 08:44 PM

Mike,

Credit?? Who trusts the Japanese government?

小泉総理は国債発行30兆円枠を守るといったのに、逆に300兆円も増やしましたけど。

>>日本国民は世界の中でも”自由”な国民です。

Are you joking?

Posted by: 真魚 | April 10, 2006 at 01:05 AM

真魚さん、

What freedoms are denied to Japanese citizens?

MikeRossTky

Posted by: マイク | April 10, 2006 at 06:56 AM

Mike,

We know that Japan is not democracy but Kleptocracy.

Posted by: 真魚 | April 15, 2006 at 11:50 PM

マイクさん

派閥政治は民主主義とは言えません。国民が党首の政策に共鳴して投票している訳ではないからです。

LSEの故森嶋通夫教授が「サッチャー時代のイギリス」のp.17で興味深いことを述べています。日本では選挙の後で党首が決まるので、国民はその当がどのような政策をとるか知らずに投票すると聞いたイギリス人の教授が驚いたということです。

こうした事態は小泉政権になってから大きく変わりましたが、これまでの日本が本物の民主主義とは遠かったのは事実です。

それと日本人は自由な社会に住んでいるのか?確かにマイクさんが言われる通り、圧政はありません。しかし、本当に自由な国であるためには国民が政治的な意思決定に参加できなくてはなりません。日本の「システム」についてはウォルフレンが指摘するように、官僚や大手マスコミは国民に重要なことを知らせないようにしているという議論がなされています。ちなみに、ウォルフレンが大西哲光のような偏向左翼でないことはご存知の通りです。

だからと言って、韓国や台湾が日本より民主的という主張には疑問の余地があります。本当の民主主義の発展には理性的で自覚ある国民意識が必要ですが、韓国の政治はどう見ても反日、時には反米のポピュリズムです。台湾はここまで酷くはないですが、それでも敵対心や嫌悪といった感情が政治を支配する度合いは欧米や日本より高いように見えます。

大西哲光の偏向記事を妄信はしませんが、日本の現状は厳しく問い直した方が良さそうです。

Posted by: 舎 亜歴 | April 16, 2006 at 01:04 AM

舎さん、

ちょうど、London School of EconomicsのSir John Hicks Professor 森嶋通夫先生の本を、明日買いにいこうと思っていたところでした。著作集の方は値段が高いのでやめようと思っていますが、岩波の「思想としての近代経済学」「なぜ日本は没落するか」「なぜ日本は行き詰まったか」の3冊を購入しようと思っています。

Posted by: 真魚 | April 16, 2006 at 02:04 AM

民主主義=Freedomなのでしょうか?

真魚さんは民主主義ではない、盗賊政治だから自由が無いといっているのでしょうか?どのような自由が日本の国民から奪われているのですか?

舎さんは民主主義の発展と。より良い民主主義=もっと正統な政府ですか?民主主義の発展より政治のプロセスがいかにその政治の結果をうける国民が評価するかだと思いますが。

マイク

Posted by: マイク | April 16, 2006 at 08:33 AM

Mike,

国民主権という民主主義の基本が国家権力によって侵害されているということです。例えば、岩国では、アメリカ空母艦載機の受け入れは住民投票では反対という結果になりましたが、それでもなぜ基地移転は行われるのでしょうか。

Posted by: 真魚 | April 16, 2006 at 12:06 PM

真魚さん、

だれもごみ処理場を自分の近所にはほしくありませんよね。いくら投票を行っても、この結果はでるでしょう。

What freedoms are denied to Japanese citizens?に答えが無い限りぐるぐる回るだけですよね。

Why can you not answer a simple question? Or are simple questions too hard for a liberal mind?

MikeRossTky


Posted by: マイク | April 16, 2006 at 12:38 PM

真魚さん、

What freedoms are denied to Japanese citizens?

MikeRossTky


Posted by: マイク | April 23, 2006 at 02:39 PM

日本が自由かどうか、参考までにフリーダム・ハウスのランキングを見てみました。ランキング表のリンクは

http://www.freedomhouse.org/template.cfm?page=211&year=2005

それによると7段階で日本はPolitical Rightsで1、Civil Libertiesで2という評定です。数字が少ないほど好成績です。PRとCLのどちらも1-1であった国は、以下の通り。

アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、スイスなどなどは予想通り。

意外な国では

チェコ、スロバキア、スロベニア、ポーランドといった「新しいヨーロッパ」が目立つこと。

さらに

ウルグアイ、キプロス、ドミニカ連邦、ナウル、ツバルといった途上国が挙がっている。

ちなみに韓国は1-2、台湾は2-1なので、少なくとも大西哲光が言うように日本が韓国と台湾より自由と民主主義で劣るということはないようです。

ところで、このランク付けはどのように行なっているのか?という疑問がわいてきます。そこで以下のリンクを参照。

http://www.freedomhouse.org/template.cfm?page=35&year=2005

まずPolitical Rightsについては

Rating of 1 - Countries and territories that receive a rating of 1 for political rights come closest to the ideals suggested by the checklist questions, beginning with free and fair elections. Those who are elected rule, there are competitive parties or other political groupings, and the opposition plays an important role and has actual power. Minority groups have reasonable self-government or can participate in the government through informal consensus.

Rating of 2 - Countries and territories rated 2 in political rights are less free than those rated 1. Such factors as political corruption, violence, political discrimination against minorities, and foreign or military influence on politics may be present and weaken the quality of freedom.

そしてCivil Libertiesについては

Rating of 1 - Countries and territories that receive a rating of 1 come closest to the ideals expressed in the civil liberties checklist, including freedom of expression, assembly, association, education, and religion. They are distinguished by an established and generally equitable system of rule of law. Countries and territories with this rating enjoy free economic activity and tend to strive for equality of opportunity.

Rating of 2 - States and territories with a rating of 2 have deficiencies in a few aspects of civil liberties, but are still relatively free.

何だかよくわからないところですが、貴重な指標であることには違いありません。


ただ、ウォルフレンの著書を読むと日本のCivil Libertiesの評価はもっと下がりそうに思えてしまいます。そして、韓国は横暴な警察に「親日」を半殺しにしかねない雰囲気を考慮すれば、Civil Libertiesのポイントを日本以上に下げる必要があるのではと思えてきます。

他の国でも評定ポイントが高過ぎないかという疑問を感じる国も多いです。

最後に、英語圏の民主主義大国であるインドは2-3です。

Posted by: 舎 亜歴 | April 23, 2006 at 10:52 PM

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» 自由の格付け:フリーダム・ハウスの指標 [グローバル・アメリカン政論]
現在のアメリカ外交の重要な課題の一つが自由と民主主義の拡大である。この目的を達成 [Read More]

Tracked on May 02, 2006 at 10:39 PM

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