韓国大統領が遊就館の訪問を希望
韓国の盧武鉉大統領は中曽根康弘元首相と福田康夫元官房長官との会見で、靖国神社の遊就館の訪問を希望していると述べたという。
戦後日本では、靖国神社とはただのいち宗教法人なのである。そのいち宗教法人のただの施設に、なにゆえ韓国の大統領が訪問するのか。
これはどういうことかというと、日本の首相は、その「いち宗教法人」にすぎない神社に、やたらこだわっているじゃあないかという意味であると思われる。靖国神社の遊就館は、戦前の日本の世界観が濃厚にある展示館である。そのこと自体は「いち宗教法人」なのだから、靖国神社がどんな展示館を建てて公開しようと自由である。何度も強調するが、戦後日本ではフォーマルに言えば靖国神社は「いち宗教法人」にすぎない。決して、現在の日本国および日本人のなにものも表すものではない。
ところが、日本国総理大臣が、その「いち宗教法人」に参拝するとなると、中国・韓国から見ると、日本人はまだアレを崇め奉っているのかということになる。この「なる」ということについて、そんなもんはお前たちが勝手にそう思うだけであって、俺たちには関係ないという意見もあると思うが、日本国総理大臣が参拝したとなると、これはそう思われて当然であって、そう思うなというのは無理があるであろう。
盧武鉉大統領は、靖国神社の遊就館がどのような展示をしているかということは知っているのだろう。知っていて、自分がそこへ訪問すれば、ここがどんな場所であるが広く世間に知られることになり、こんな展示館がある神社に日本の首相は参拝しているのかということになって、さらに日中、日韓の関係はこじれるであろう。だからこそ、盧武鉉大統領は遊就館の訪問を希望しているのだと思う。日本とアジア諸国の関係を悪くさせようとしているのではなく、アジア諸国から見て、靖国神社に日本の総理大臣が参拝することがなぜ反感を感じるのか、その理由を日本に伝えようとしているのである。
現状では、盧武鉉大統領が遊就館を訪問し、「戦前の日本はこうでしたなあ」で終わる話にならない。そう思うためには、戦後の日本はこうではないという明確なものがなくてはそう思えない。アジア諸国が求めているのは、この「明確なもの」なのだ。今の日本人の一般認識としてどう思っていようとも、政治家が「あの戦争は正しかった」みたいな発言をするので、どうも日本人を信じられないのであろう。
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>>政治家が「あの戦争は正しかった」みたいな発言をするので、どうも日本人を信じられないのであろう。
こうした発言は日本の立場を悪くします。アメリカはじめ西側諸国は本来ならこのような過激ナショナリズムを歓迎しないはずですが、かといって中国や韓国の言いなりになる日本も望んでないわけです。
>>戦後の日本はこうではないという明確なものがなくてはそう思えない。
まさにこれを明確にできれば、いかに日本叩きを政治利用しようにも利用できなくなるわけです。
Posted by: 舎 亜歴 | April 01, 2006 01:29 AM
小泉総理が「どうぞどうぞ」と発言したら、この話題、消えてしまいましたね。
>>政治家が「あの戦争は正しかった」みたいな発言をするので、どうも日本人を信じられないのであろう
捉え方も両面ありまして、日本人に心底「あの戦争は正しかった」という人ってサンフランシスコ講和条約も日韓基本条約も日中平和友好条約も、悔しくて悔しくてたまらない条約でしょう。「ご愁傷様」と嗤ってやれば、終わりです。条約>心情が国際ルールですので。
(マック&I.E.だと二重投稿になってしまいます?)
Posted by: てんてけ | April 01, 2006 01:54 PM
舎さん、
>>こうした発言は日本の立場を悪くします。
事実は事実として直視しなくてはなりません。「日本は正しかった」というのは、何がどう正しかったのかということがわかっている上での発言なのか、それともただ単の感情的な発言なのか。かつて、クリントンが日本の首相に対して日米関係の意義を述べていましたが、全米自動車労連では、さすがにジャップというワードは出てきませんでしたが、日本を悪玉にした発言をしているのをCNNで見ました。すべて悪いのはジャパニーズなのだと言っているわけです。つまり、internationalな場とdomesticな場では政治家は発言が違うんです。これは当然のことなんです。しかしながら、今のワールドワイドなメディアの時代では、domesticな場での発言もinternationalな場に流れてしまうんです。だからこそ、政治家は発言を考えなくてはならないんです。
エントリーにも書いていますが、「戦前の日本と戦後の日本は違う」ということを明確にすること、これだけができればいいんです。そして、これを明確にするのは中国がやることではなく、日本人がやることなんです。中国が求めていることは、これなんです。「戦前の日本と戦後の日本は違う」のはあたりまえじゃないか。それを理解しない中国が悪い、理解できないのは中国が無知だから、じゃあないんです。あなたが理解できないのならば、日本はあなたが理解できるまで100回でも、200回でも説明しますという姿勢、その姿勢があって、初めて中国、そして国際社会は日本人は過去を反省しているのだなと感じることができるんです。そして、これは何度も書きますが、これは決して日本が中国に屈したということではありません。
Posted by: 真魚 | April 02, 2006 02:43 AM
てんてけさん、
盧武鉉大統領も、本気で靖国神社へ行くつもりはないのでしょう。日本へのメッセージみたいなものですね。
「あの戦争は正しかった」と言うのは、あの戦争で死んだ人々を、間違ったことで死んだことにはできないということだと思います。それはそれで心情的にはわかるのですが、ではなぜ勝つ戦争をしなかったのか、そこですね、その理由を明確にすることこそ、あの戦争で亡くなられた人々に対する後の世のやるべきことだと思います。ただ「正しかった」では、大本営の理不尽な作戦で死んでいった人たちの魂は納得しないでしょう。
Posted by: 真魚 | April 02, 2006 02:44 AM
真魚さん、
>あなたが理解できないのならば、日本はあなたが理解できるまで100回でも、200回でも説明しますという姿勢、その姿勢があって、初めて中国、そして国際社会は日本人は過去を反省しているのだなと感じることができるんです
仰っておられることはわかりますが、ただ、中国も韓国もましてや北朝鮮も、理解できないのは相手が無知だからではなく、ファシズムプロパガンダの一環として反日教育、政策をしているという実態を見落としておられるのではないでしょうか?
韓国の反日教育はもはや、ナチスの人種差別政策レベルですが、こちらがいくら歴史を説いたところで、それを向こうのマスコミが国民に伝達しなければ何も変わりません。
例えば、中国ならばこの前の反日官製デモの時に、結局、暴動プラス反共産党デモになって世界から非難を浴びたところで慌てて潰しています。韓国では、日韓基本条約が今年の一月にようやく公開されました。内容は要するに日本がとっくに賠償しているといった内容でしかも、当時の韓国ファシズム政権がそれをネコババしたことが最近になってようやくバレたわけです。(しかも、日本人の朝鮮半島に略奪された財産やインフラのお金、これは賠償金よりもはるかに高額ですが日本はそれを放棄)今まで、韓国政府はずーっと隠してきたわけです。日本人がいくらとっくに賠償していると言っても韓国人は信じていなかったわけです。
こうした事は情報の流通化にともなって東アジア諸国の情報鎖国が崩れて来たことを意味します。
今までのように反日プロパガンダでファシズム政権を維持するのが難しくなってきたといえましょう。
さらに言えば、反日を掲げて日本に歴史の謝罪や反省を繰り返すのは東アジアのファシズム三カ国しか存在しません。少なくとも国家レベルでここまでたかるのは三カ国だけです(もちろん個別的な例外はあります。華僑やオランダの兵士、アメリカ民主党など)
大概の国は、中国の官製デモの時の反応のように日本が謝罪してないという論調ではなく、向うの反日政策、引いてはファシズム国家の対応を非難しています。
ただこういったことを日本人が言えるようになったのはごく最近の出来事です。
日本から積極的に説明ということですが、日本が歴史論争で強気になったのはつい最近です。
私は二十台後半の若造ですが、その私の人生でも、日本の左右のゆれを感じたのは、2000年前後でしょう。従軍慰安婦問題や、教科書問題などが出てきたあたりだと思います。
それ以前は日本が歴史で強気に今のような政治状況になるなど想像だにしていませんでした。
私は子供のころから家が朝日新聞を購読いたからその変化はわかります(笑
本当につい最近になってこれらの意見を日本が言えるようになったと言えるでしょう。
今までは大臣レベルでもが向こうの反日歴史に背く意見を言えば首が飛んだのですから。
正直言って、これから日本が100回でも200回でも説明するのは、向こうの歪んだ捏造歴史に対する謝罪ではなく、
こちらの言い分や向こうの非を、国際社会に情報プロパガンダとして展開していくことではないでしょうか?
ただ、韓国の立場に立って考えてみると、彼らの言いたいことも理解できないことはありません。日本のこれらの行動は非常に忌々しい、もしくは、情勢の変化に戸惑っているのも無理はありません。
なにしろ数年前まで妄言!と言えば日本の大臣の首を飛ばせるような圧倒的有利さが小泉政権になって歯牙にもかけられなくなったのですから。こうした事情には日本のネット情報化による右の意見の増援の他に東アジア情勢の変化が上げられます。
イランのあとは北朝鮮でしょうが、本格的に日米、および欧が北朝鮮を見限った今となっては、中朝と組んで日米を離れたノムヒョン韓国の価値は加速度的に暴落しています。米韓の信頼度の低下はもはや誰の目にも明らかで、http://www.onekoreanews.net/news-seiji02.cfmの最後の行、
> ワシントン、ソウル、東京から入ってくる情報は共通している。「日本と米国は盧武鉉をまったく信じていない」
というのがそれを表しています。
もう、過去を反省していない日本人が彼らに謝って、それで善良なる東アジア(彼らはアジアと拡大して言う)諸国が許して下さる事が世界の平和であるというテーゼは、もう通用しないでしょう。
中国韓国北朝鮮の情勢がリアルタイムで入ってくる現代では、そのようなことは誰も信用しないからです。この間も国連に人権委員会で日本軍の性奴隷を訴えた南北コリア(と一部の日本人)の人たちは、コリアの人権状況や性奴隷の人身売買を指摘されて逆に失笑を買っています。もちろん予断は許しませんが、今までとは状況がはっきり変わっているのは間違いありません。もう、小泉以前の日本には、戦争で負ける以外は元の土下座外交をする日本には戻らないでしょう。
長々と長文駄文をお許し下さい。最近の右よりの若造の愚考として、何かの参考になれば幸いです。
Posted by: 雪水 | April 02, 2006 08:10 AM
真魚さん、こんばんは。
「グローバル・アメリカン政論」のコメントを拝見させて頂きまして、正直、度肝を抜かれました。
私の思いつきみたいな底の浅いコメントがとても恥ずかしいです。
なんというか、すいませんでしたというのも変な気がするのですが、うーん、すいませんでした。(_ _)
Posted by: てんてけ | April 02, 2006 11:38 PM
雪水さん、こんにちは
長文大歓迎です。どんどん長文で意見を聞かせてください。
日本が中国に100回でも200回でも説明するというのは、過去の侵略行為の謝罪ではありません。戦後の日本は戦前の日本とは違うということです。そして、日本はこれからのアジアをどのように考えているのかということです。土下座外交というのは、田中・橋本派の政治家によるものです。森派は、今の政治は経済がキーであることがわかっていません。
まず日本と中国の間のいわゆる歴史問題を国際世論からの視点で見れば、これは中国が間違っているという認識がもはや定着しています。日本がなにをいうことなく、世界は中国が日本に言っていることはおかしいということをわかっています。国際社会は毛沢東がどれだけの殺戮を行ってきたかよく知っていますから、現代中国は過去の日本をとやかく言えたものではありません。中国の方も、このことがわかってきて、毛沢東をあまり持ち上げることをしなくなってきています。そうなると、建国の父とは誰になるのか。辛亥革命の孫文かということなりますが、孫文だとすると、その後継者は蒋介石ですから、これもまた現代中国にとって都合が悪くなるわけです。
次に経済的に見ればどうかといいますと、今の中国の輸出の伸びは、日本企業が中国に工場を建てて、その製品が日本に出ていっています。つまり、貿易統計上は中国の輸出になるわけですが、その実体は日本企業によるものです。繊維品や雑貨品以外は圧倒的に(メイド・イン・チャイナですが)日本の製品です。工作機械などはとても日本にかないません。中国経済が伸びれば伸びるほど、日本の製品に頼らざるえないというのが現状です。経済的に言えば、日本と中国は「ひとつの経済圏」のようになっていまして、ここに台湾企業、韓国企業も加わり、ボーダーレスな経済圏になっています。
つまり、国際社会的に見ても、日本は中国からとやかく言えるスジはないし、経済的に見れば、もう切っても切れない関係になっているわけです。
では、それならば、なぜ歴史でこうまでもめるのか。
まず中国の反日教育ですが、これが本格的に始まったのは1992年頃です。それ以前の中国の教育は反米・反資本主義でした。人々は毛沢東語録を持って、アメリカは敵、資本主義は悪ということになっていました。この流れを変えたのが鄧小平です。80年代に、鄧小平は改革開放路線を宣言し、上海や天津に経済開発区を作ります。これが大きく成果を挙げ、92年に鄧小平は「一国二制度」で経済発展を行うという「南方講話」を発表しました。ここで、中国の反米・反資本主義が根本から変わります。この変化を受けて、アメリカ企業は中国市場に参入し始めました。中国の金持ち階級の子弟たちはアメリカに留学し、アメリカとの関係を持つようになりました。今では、誰も毛沢東語録など持っていません。資本主義を敵だと言っていた、かつての中国はどこにもありません。つまり、イデオロギー教育などというものは、あっけなく変わるということです。
しかしながら、この反米・反資本主義路線の否定は、中国共産党にとって国内の不平不満をそらす相手がいなくなってしまったということなります。そこで、抗日が出てきたわけです。おもしろいのは、領土問題での敵であるインドを使って、反インドをやってもあまりぱっとしなかったし、これも領土問題の敵であるロシアを使っても、あんな発展途上の国は敵にふさわしい相手ではなかったということです。やはりここは、かつて中国人民を苦しめ、ちっぽけな島国のくせに世界の経済大国になった日本こそ、にっくき敵にするのにふさわしいと思ったようです(笑)。
今の反日教育というのは、ですから付け焼き刃みたいなものなのです。かつて、戦前の日本は鬼畜英米の教育でしたが、戦争に負けてGHQがやってくると、今度は(これが同じ民族かと思うぐらいに)コロッと「ありがとう、マッカーサー元帥」になりました。こんなもんなんです。中国の反日運動は、中国政府が「やれ」と言っているからやっているようなものです。そのやっているのも若い学生が多く、彼らが卒業して就職するようになっても、まだ反日デモをやるかどうか疑問です。話は少し変わりますが、日本でも、かつて安保反対闘争をやった世代が、その後なにをしてきたかということを見てもよくわかりますね。
ただし、だからと言って、中国にすぐに反日運動をやめるかというと、そうはいきません。やはり、当分は続くでしょう。日本は中国からワーワー言われ続けるでしょう。しかし、反日教育をやっているから、中国との関係を持たなくてもいいわけではありません。
かつて80年代のアメリカでのジャパンバッシングは、今の中国の反日運動よりもっと大きかったわけですが、それでも日本企業はアメリカに行きました。戦後の日米の経済関係は、日米繊維交渉、日米半導体協定、日米自動車貿易交渉、日米構造協議などさまざまな摩擦と対立がありました。それでも、戦後日本の経済人は粘り強くアメリカと交渉を重ねてきました。我々の先人たちは、必死に日米関係を作ってきたのです。日米の対立から見れば、日中、日韓の不和などたかがしれています。台湾もまた中国と不和なわけですが、それでも台湾企業は必死で中国市場に食らい込んでいます。抵抗があろうが、なんと言われようが、台湾は中国市場に活路を見出しています。それは台湾は中国市場を開拓しなくては、自分たちに未来はないと思っているからです。そして、中国もまた台湾企業なくしてやっていくことはできないことを理解し始めています。
今年、中国はドイツと並んで世界第3位の経済国になる可能性があります。今後、元の切り上げがあれば、日本に並ぶようになるでしょう。これは19世紀にアメリカが世界経済に影響を与え、20世紀後半に日本が世界経済に影響を与えた以来の歴史的な変革の時代になったということを意味しています。この大変革の時代に、「反日教育をしているから云々」で中国を相手にしないでは、日本に未来はありません。今こそ中国へ突き進んでいく、そして、その次はインドへです。
ですから、土下座外交とか、謝罪とか、中国に屈するとか屈しないとか、そんな時代遅れの思考は捨てましょう。国家とか国内政治とかの枠組みだけで世界を見るのはやめましょう。世界は国家を越えて、大きく変化し続けています。
Posted by: 真魚 | April 03, 2006 12:17 AM
てんてけさん、
いえいえ、お気になさらず、気軽るに書き込みください。
Posted by: 真魚 | April 03, 2006 01:11 AM