電気用品安全法
電気用品安全法というものが、4月1日より施行されるようだ。これは、中古の家電品の販売を禁止するというもので、PSEマークがついていれば販売してヨシということになるという。ようするにお上の許可がなくては売ってイカンということである。
じゃあ、お上の許可をとればいいじゃんということになるが、なにしろ「お上の許可」なのである。ポンポンとラクにとれるものではなく、かなりのコストがかかる。そのコストは、中古品販売業者がかぶることになり、そんなんじゃあ商売やっていけませんよということになる。事実上不可能なのである。すなわち、リサイクルショップを撲滅させようとしている法律としか思えないしろものなのだ。
ようするに、新製品を買えというメーカーの都合に立った法律なのである。お上に許可をとらなくてはならないということは、お上の側からすれば、天下りができる許認可団体ができるということであり、手数料収入が入るということである。一方、許可を取らなくてはならない側からすれば、手間とコストがかかり迷惑以外のなにものでもない。
さらによくわからないのが、電子楽器もこの対象になるということだ。楽器というものは、当然のことながら新製品ならばいいというものではない。年代ものの楽器だからこそ価値があるものが多い。それらが販売できなくなるということは、近い将来、古い電子楽器は姿を消していくことになる。
官報で前々から告知していたでしょというかもしれないが、なんか、とーとつに何月何日から、これこれの法律を施行する、違反者は罰金を取るという、このお上のやり方はよく覚えておこう。以前、在日米軍の再編成の日米協議についてのエントリーでも書いたけど、国民の生活に関わることであるのにも関わらず、国民の目の見えないところで、ちゃくちゃくと物事を進めていって、本決まりになった時点で権力をもって強制的に行うということをこの国の政府はしばしばする。これを忘れてはならない。
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はじめまして.よく拝見させていただいていましたが,コメントは初めてさせていただきます.
この法律は,2001年4月に成立し,実効まで5年間の猶予期間(商品によっては,7年間・10年間)が設けられていますが,確かにこの猶予期間中の広報が不充分だったと感じます.報道機関が取り上げはじめたのも,つい最近のような気がしますよね.
ただメーカーでは,2001年4月以降の商品にはPSEマークをつけていると思うので,これから流通にのせられなくなるのは,2001年4月以前に製造されたものということですね.中古のオーディオ品を扱うショップでは,2年位前からお客様に広報し,PSEマークのついていない商品の買取をやめていたところもあります.ちなみに,スピーカーは電源がないのでPSEマークはなくても販売できるそうです.
先日新聞で読んだのですが,生活創庫では,かなりの在庫があるらしく,それらをレンタルとして販売し,レンタル期間終了後はそのままお客様のものになるとかいう方法をとるとか,書いてありました.これがもし正しい情報なら,うまいやり方でもあるし,抜け穴の大きな法律だなぁ~とも思いました.
この法律が効力を発揮すると,一時的に大量のリサイクルできなくなった廃家電が出るわけで,それらはどうやって処分するんだろうって思っちゃいます.環境省のやっているチームマイナス6%なんて,ふっとんでしまいそう.
そもそも,この法律はどのような経緯・背景があってできたのかよくわからないので,なんとなく疑問ばかりが浮かんでしまいますね.
初コメなのに,長々と失礼いたしました.
Posted by: とと | February 26, 2006 11:23 AM
ととさん、はじめまして。僕もととさんのブログを拝見させていただいております。
結局、一番わからないのは、これをやれば製品の安全性が保証されるわけではないのに、なんでやるのかということですね。PSEマークがついていれば安全、ついていなければ安全ではないというわけでもありませんし、なにゆえ、当然こんなことをやるのか不思議ですよねえ。とにかく民を規制したい、管理したいというこの役所の体質は永久に変わらないんでしょうねえ。
Posted by: 真魚 | February 26, 2006 09:49 PM
真魚さんが記事で書かれているように、家電メーカーの利益を不動の物にする法律ではないかと思います。実際問題我が家でも結婚した14年前どころかそれ以前の独身時代に購入した家電製品が現役で働いていますので、日本の家電製品の品質から言っても゜ひかーの為の法律としか思えません。バブル崩壊以降のリサイクルショップの隆盛に焦ったメーカーが働きかけたのでしょうね。
Posted by: アッテンボロー | February 26, 2006 11:07 PM
アッテンポローさん、
こうしたことはへんだと感じるのが当たり前ではないかと思います。ところが、マスコミはスポンサーへの配慮なのか、あまりこのことを取り上げません。
昔と今となにが違うのかというとここですね。60年代だって、マスコミは企業をスポンサーとしていましたが、それでも少なくとも言論メディアは市民の側の視点に立って、体制に対する批判的精神を持っていました。今はこれすらありません。全部、体制側に組み込まれています。
こうまでして新製品を買わせたい、そうしなくては利益が出ないというのは、逆から見れば、それほど資本主義はせっぱ詰まっているということだと思います。これは本来の資本主義の姿ではありません。いびつな資本主義です。
Posted by: 真魚 | February 27, 2006 12:24 AM
家電メーカーの利益というより米国の「年次改革要望書」の影響じゃないかと思います。
森永卓郎さんが 2月20日のラジオ放送で「電気用品安全法」の対処方法の説明をしていました。
「1,000Vの通電試験をして PSE マークを付ける」と生活創庫の「レンタルして無償譲渡する」という方法も紹介していました。
ニッポン放送の森永卓郎の「森永経済提言」
http://podcast.1242.com/moritaku/index.xml
2月20日放送の mp3 ファイル
http://podcast.1242.com/sound/302.mp3
Posted by: XYZ | February 27, 2006 08:46 PM
私は,この法律はメーカーのためとは思っていないのです.
なぜなら,この法律はPSEマークのない家電品を使ってはいけないという法律ではなく,流通を規制するだけのものだからです.家電4品目についてリサイクル法が施行されたときや,消費税の導入時,また税率のアップしたときのような買い替え需要はないと思います.
私はこの法律の目的を,リサイクル業者の管理(把握?)だと思っていました.家電の中古流通って,もしかしたらお上の把握できてないところで,そのために産廃業者の不法投棄があちこちで起きるので,この法律でとりあえず中古業者への働きかけをしようと思っているのかなと感じてました.
どちらにしても官による規制の印象は強いですし,明確な目的や背景がわからない分,あまりいい気はしませんね.
Posted by: とと | February 27, 2006 10:54 PM
XYZさん、
なるほど、またしても「年次改革要望書」でしたか。2005年度版の日本語訳がアメリカ大使館のサイトにアップされましたね。
「森永経済提言」はさっそくiTunesに登録しました。情報ありがとうございます。
Posted by: 真魚 | February 28, 2006 01:11 AM
ととさん、
そうですね、今家庭で持っている家電製品が使えなくなるというわけではないですね。しかし、産廃業者の不法投棄を防ぐためと思うのは無理があるような気がします。実質的に、電子楽器ではこの法律は大きな問題になっています。役人は家電は骨董品ではないので、古いものに価値があるとは思ってもみなかったのではないかと思います。むしろ、これだけ準備期間を設けたのに、中古品にもいろいろあるということを知ろうともせず、とにかく十把一絡げに管理しようというのはいかにも役所のやり方ですね。
Posted by: 真魚 | February 28, 2006 01:11 AM
大きな政府にこのような”無駄”が発生するのは仕方がないのでは?もっと小さな政府を推奨します。小さな政府はこのような馬鹿な法案を作ったりする時間や予算はないからね。
少数の方々がみんなに良いと思って行った。リベラルの鏡ともいえる行為では?
MikeRossTky
Posted by: マイク | February 28, 2006 08:01 AM
小さな政府の場合、公益法人・特殊法人等が増えて補助金が増えそうな感じです。
以下、森永さんの放送(2/23)から引用します。
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各役所の公益法人・特殊法人等の天下り、これが、3987団体 22093人行われていて、うち役員が、8884人これだけ天下りをしている。ここの公益法人等になんと5兆5395億円もの補助金が投入されている。
さらに文部科学省の場合は、文部科学省にいる職員の数よりも天下りしている職員の数の方が多い。
あるいは、経済産業省では、経済産業省本体にかかっている経費よりも天下り団体への補助金の方が多い。
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「森永経済提言」 2月23日放送の mp3 ファイル (約2Mバイト)
http://podcast.1242.com/sound/305.mp3
Posted by: XYZ | February 28, 2006 10:54 PM
私は天下り自体には拒否感はありません。しかし、天下り先に政府のお金が”補助金”としていくことには大きな拒否感があります。
民営化ということはビジネスとしてやっていくって事です。ビジネスは競争が必要です。
”団体”と名のつく組織は政府の延長であって、大きな政府の一部です。
日本の公益法人・特殊法人制度の改革が必要じゃないですか?
MikeRossTky
Posted by: マイク | February 28, 2006 11:08 PM
小さい政府が必要なのではなく、必要のない役所はいらない、必要のある役所は必要なのでは。
前にも書きましたが、ブッシュ共和党政権は災害救援組織の予算を削減したから南部の台風災害でなにもできなかった。あれは天災ではなく人災でした。
Posted by: 真魚 | March 02, 2006 12:32 AM
必要のない役所はいらない、必要のある役所は必要なのでは。=小さな政府ですよ!!
日本の政府の話をする時も、ブッシュさんが出現するんですね。
Are you obsessed with Bush? Live a little!!
The Japanese Democratic Party is doing just as well as the American one!!
MikeRossTky
Posted by: マイク | March 02, 2006 11:34 PM
>ブッシュ共和党政権は災害救援組織の予算を削減したから南部の台風災害でなにもできなかった。あれは天災ではなく人災でした。
真魚さん、これはルイジアナ州政の失態だというのがほぼ定説では?確かに人災ではあります。
しばしば思うのですが、真魚さんとマイクさんの議論で「保守」と「リベラル」を十把一絡げにしていませんか?まずアメリカの保守ですが、支持基盤の拡大と多様化が進んでいます。同じ保守といっても宗教右派からリバータリアン、リアリスト、ネオコンまで様々。KKKも保守ですが、これと一緒にされるのはどの保守派も迷惑に感じるのは間違いなし。
一方で日本の保守については思想より党派や利権で仲間を作っています。
アメリカのリベラルの場合は保守ほど多様性もなく、支持基盤も伸びているようには見えません。
「保守」対「リベラル」については別記事で詳しくコメントした方が良さそうです。
Posted by: 舎 亜歴 | March 03, 2006 12:49 PM
KKKは保守でもリベラルでもありません。KKKと自由は関係ありません。
他人の自由を抑制する思想は保守でもリベラルでもありません。理解に苦しみます。
MikeRossTky
Posted by: マイク | March 03, 2006 10:56 PM
舎さん、
いえいえ、災害の責任を州知事と市長に責任転嫁することを大統領主席顧問のカール・ローブが画策しました。これはニューヨークタイムズが報道しています。
http://www.dscc.org/news/latest/20050906_blame/
Posted by: 真魚 | March 05, 2006 01:08 AM
Mike,
必要な役所は必要というのは、必要な規模の役所は必要であるということですよ。外務省にしても防衛庁にしても、情報を分析する部門が日本は貧弱です。必要な組織は必要なのだから作るべき。そのために期限つきで税金を上げなくてはならないのならば支払いましょうと私は言っています。
Posted by: 真魚 | March 05, 2006 01:14 AM
より正しく言えば、KKKのような組織は極右ですね。もちろん、私だって彼らをまともな保守と一緒にはしません。日本の街宣右翼やネトウヨに対応するところ。
ひるがえって、日本での「大きな政府」対「小さな政府」論争では、「政府からの自由」か政府による自由」かといった基本的な議論が交わされていないように思えるのですが。
そうした基礎は省みられずに、「あの公団は無駄だ」とか「あそこの天下りはこんな贅沢をしている」というレベルの問題ばかりが取り上げられています。だからこそ、先の総選挙は「郵政民営化に賛成ですか?反対ですか?」だけで、後は「パンとサーカス」で盛り上がる程度のものだったのでしょう。
ちなみに日本で大きな政府を邁進させているのは、「保守派」の官僚だというのが実に皮肉です。しかも弱者救済のためではない、となるとニューディーラーのリベラルとは明らかに異質です。
最後に、日本での保守と極右の境界線はきわめて曖昧です。これは日本型の保守思想では理念より情念が優先されているためでしょうか?
Posted by: 舎 亜歴 | March 05, 2006 01:21 AM
Mike,
JFKは"ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country."と言いました。これは、一見、いわゆる小さな政府のようですが、実際はケネディ政権は強力な政権でした。これは矛盾しています。矛盾していますが、これが政治の指導力なのではないでしょうか。政治に魅力と希望と理想があり、人々は政治への信頼と期待感をもっている、そうした政権がちっぽけな政府であるはずがありません。
Posted by: 真魚 | March 05, 2006 01:38 AM
舎さん、
以前も書きましたが、欧米の政治思想、特にアメリカの政治は、まず根底に「この世界はどうなっているのか」「なにが正義なのか」「どのような社会であるべきか」「どのようなことをもって社会的公正というか」「人はどうあるべきか」ということについて、確固たる内容と基準が厳然としてあります。
日本で、こうした考え方をするのは社会主義者と国粋主義者ぐらいです。左翼も右翼も思想ですから、上記の考え方をします。しかしながら、その他の大多数はこうした考え方はしません。原理原則がなく、その時、その時で、いいと思われる方向を選択するという、よく言えばリアリズム、折衝主義、悪く言えば、根本的問題はいつまでたっても解決しないということになっています。
ただ、こうした日本の姿も変わりつつあるように思います。「パンとサーカス」でやっているのはマスコミであって、心ある人々はそうした現状では納得できないと感じ始めているのではないでしょうか。人々は「根本的にどうなのか」という考え方を求め始めていて、それに応えることができないのか今の日本のマスコミ、言論者の大多数なのです。
日本とアメリカの保守は本質的に違います。違うものだと考えるべきです。保守を「過去の価値観を守る」という意味であるとするのならば、日本の保守は、日本の過去、つまり国家主義になります。アメリカの保守は、アメリカの過去、つまりアメリカ革命当時にさかのぼり、アメリカの過去の(現在でもそうですが)価値観とは、すなわち国家からの個人の自立と自由です。なにしろ、それを求めて新大陸に移民してきた人々なのですから。日本で、「国家からの個人の自立と自由」というと無政府主義になってしまいます。
Posted by: 真魚 | March 05, 2006 12:33 PM