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February 12, 2006

韓国ドラマ『遠い路』

 近所のTSUTAYAに、韓国ドラマのコーナーがある。そこの棚をつらつらと眺めていたら、なんと『遠い路』があるではないか。僕は、韓国ドラマはまったく知らない。見たことがない。しかし『遠い路』だけは、以前NHKで見たことがあって、これは良い作品だと思っていた。これはぜひとも借りなくては、あの感動をもう一度と思ったけど、運悪くこの時は貸し出し中であった。そこで、それが返却されるのを待って、ようやく見ることができた。いい作品だった。

 この作品は、去年のお正月にNHKで放送された作品で、今年のお正月でも再放送していた。今年の再放送のことは後で知って、ビデオに撮っておけばよかったと思ったものだった。DVDでも出ていることは知っているのだけど、他の作品と二枚組で一緒になっていて、値段が高いんだよこれは。

 この作品を最初に見た時の印象は、自然の風景の美しさだった。この作品を見て、韓国の雪景色の美しさに驚いてしまったのである。そうだよな、韓国でも雪は降るよなと思ったのだ。そりゃあ当然、韓国でも雪は降るだろ、バカかオマエと言われると思うが、正直に白状してそう感じてしまった。このブログでは、世界がどうとか、国際社会はどうとか、ボーダーレスなんだとか書いているが、本当にオオバカなことに、隣国韓国と雪というのが、自分の頭の中ではこれっぽちも結びつかなかったのである。ワタシの外国への想像力など、こんな程度のもんである(だから、実体験のない外国理解なんぞ、底の浅いもんですね、kakuさん)。

 例えば、雪が降っているとする。その雪を見て、京都や大阪にも雪は降るということと同じように、ソウルにも雪が降ることを思い、その降る雪の下で毎日を暮らしている人々のことを思う。ようするに、国際性とは、国際社会や異文化の知識をどれだけもっているかではなく、こうした人としてのあたりまえの感覚を持っているかどうかなのであろう。

 物語は、郵便局に勤めるパク・チニが演じるソンジュは、恋人ギヒョンと一緒に正月休みに故郷の実家に帰り、男手ひとつで育ててくれた父親に婚約者を紹介しようとしていることから始まる。ところが、突然、ソンジュはギヒョンから別れを告げられる。ソンジュは、失恋の悲しみにくれるが、それでも帰省を楽しみにしている父親のために、嘘でもいいから自分と一緒に父親に会って欲しいとギヒョンに話す。帰省の日、失意のままで、でもわずかな期待を持ってソウルの駅前で待つソンジュ。結局、いつまでも待ってもギヒョンはこなかった。悲しくて帰る列車に乗ることもなく、ソンジュは呆然と駅前にたたずむ。するとそこに、以前、郵便局に大量の小包を持ってきたイ・ビョホン演じるウシクと会う。雑貨品配達の仕事(?)をしているウシクは、年末の駅で白タクをやって稼ごうとしていたのだった。ただ泣くだけのソンジュをほおっておくこともできず、ウシクは車にソンジュを乗せて、故郷の実家におくっていくことにした。

 この車でソンジュの実家に向かうシーンでの、自然の風景がすごく美しい。途中、お昼ということで、休憩所で食事をするシーンで、ソンジュはギヒョンと一緒に食べようと思って、前の晩に作った海苔巻きを出す。海苔巻きって、韓国にもあったのか。ていうか、海苔巻きって、朝鮮半島からきた文化なのかもしれない。あるいは、ただ単に日本の食文化が朝鮮半島に渡ったのかもしれない。日本を嫌う韓国がそんなことするわけないだろと言う声もあるかもしれないが、文化というものは相互に交流し合っているものであり、我が国のオリジナルだと思っていたものが、実は意外と外国から来たものだったということはよくあることだ。この2人が海苔巻きを食べるシーンで、窓の外に広がる雪景色の風景がまたいい。

 ソンジュは、ウシクに一緒に父親のところへ行って、別れた婚約者のギヒョンであることを演じて欲しいと頼む。こうして、ウシクはソンジュの婚約者を演じることになる。このソンジュの父親も、娘思いのいい父親で、ここではっと思ったのが、ウシクのソンジュの父親に挨拶する作法が、チベットの五体倒地みたいな作法で、このへん、くわしい人はわかるのだろうけど、とにかく目上の人に対する挨拶の作法というものがしっかりとまだあるということだ。韓国では、礼儀作法の文化がまだ生きているのである。父親は息子ができたことを喜ぶ。ウシクは、子供の時に親から孤児院に預けられて、そこで育った。しかし、いつしかソンジュの父親を自分の本当の父親のように思うようになる。ソンジュの父親もウシクを自分の息子のように思うようになる。

 ソンジュの父親、父親の面倒を見てくれている近所のおばあさん、海の見える場所にあるソンジュの母親の墓など、これら様々なものの中にソンジュはいる。そして、ソンジュの父親にも父と母がいて故郷がある、それは現在、北朝鮮の側にあるようだ。おそらく、ソンジュの父親は朝鮮戦争の戦火の中で若い頃を過ごしたのだろう。故郷と別れ、両親と別れ、韓国に住み、結婚し、妻が亡くなってしまった後は、自分の手でソンジュを育ててきたのだろう。その娘も、こうして嫁ぐことになって、これで思い残すことなく、もうすぐお前のところへ行くと妻の墓に語る。ソンジュの父親は、自分が病に冒されていることを知っているのだ。このシーンも、胸にこみ上げてくるものがある。

 そうした中、ギヒョンから近くまで来たので会いたいという電話がかかる。本物のギヒョンが来て、ウシクはもう自分は必要ないと思い、ソンジュと別れる。去る前に一度ソンジュの父親と会い、腕相撲をする。倒れてしまった父親を背負って帰る。そして、ウシクは去っていく。ソンジュはギヒョンと会うが、なんとこの男はスキー場に行く途中だから寄ってみたみたいなことを言っていて、完全にもう2人の間にはなにもないことをソンジュは知る。家に戻ったソンジュは、そこで倒れて苦しんでいる父親を発見する。すぐに、ウシクの携帯電話に電話をする。かけつけたウシクは、父親を病院へ連れて行く。かなり、病気はマズイ状況になっているらしい。しかし、病院は嫌いだと家に帰る父親。

 ウシクは、ソンジュに「お父さんを2人で分けないか」と語る。君と結婚するって意味ではなくて、お父さんに色々としてあげたいと語る。ソンジュは、そんなウシクに好意以上のものを感じ始める。そして、ウシクは父親にソウルへの家族旅行をもちかける。喜ぶソンジュの父親は、妻の墓に向かって、お前も一緒に家族みんなで旅行に行こうと語る。ここ泣けます。

 この物語は、ウシクとソンジュの恋愛モノではなく(実際、そうしたシーンはない)、素朴で深い家族愛のある。そうした、大きな家族愛が二人を包み込むようにある。これは、しかし、こうしたドラマは今の日本では作られることはないだろうなと思う。では、なぜ今の日本ではそうなのか。ひとつ言えることは、今の日本では、家族は家族であろうとしなければ、あっけなく崩れて消えてしまうものだということだろう。かつての社会では、社会全体に家族を家族たらしめる価値観や伝統があったが、現代ではそうした外的な要因は存在しない。だからこそ、家族とはいかなるものかを自分で自問しなくてはならないのであろう。ある意味で、自由ではあるが、しかしまあ面倒なことで。それに自分で自問したとしても、家族とは相手との関係であって、相手にそうした意識がなければ、家族というものは成り立たない。なにも考えなくても、素朴な家族愛が誰にでもあった時代ではなくなってしまった。

 もうひとつの視点として、ソンジュにとって、ウシクは言ってみれば偶然に出会った人であり、婚約者ギヒョンの代わりであった。形式的に見れば、これはだましであり、ごまかしであり、ウソである。実は、これを最初に見た時、ソンジュの個人としてどう思っているのかということがわからなくて、えーい、個としてどうなのか考えろよ、個として。どう考えても、他の女とつきあっているギヒョンが悪いのであって、ソンジュが悪るかったわけではないだから。そりゃあまあ、男女の間にはいろいろあるけど。あんな男と別れてヨシ。ウソはイカン、ウソは。お父さんに真実を明らかにして対処スベキ、とまっとうな論理的正論を感じていたのであるが。

 しかし、個人としてどうかではなく、家族としてどうかなのであった。それが騙しであろうと、ウソであろと、そんなことはどうでもよくて。ソンジュの父親は、ウシクを実の息子のように感じ、ウシクもまたソンジュの父親を実の父親のように感じ、ソンジュを大切に思う。これが、ずっと孤独だったウシクに初めてできた家族だった。その事実があれば、それでいい。

 ソウルへと向かう車の中で、今まで哀しい顔をしていたソンジュに笑顔が戻り幸福そう。この2人はきっとうまくいくという予感に溢れたラストで終わる。これはロードストーリィーの物語でもあったんだな。もうすっかり娘夫婦と父親の旅行みたいなって、早く孫が見たいと言うお父さんに笑うがこぼれる二人。家族という、大きくて深い愛。見終わった後、この物語の中にいつまでもいたいような、ああでも、これはドラマであって、ここで終わるんだなあと感じた。そして、自分の親のことを思った。

 今月は、母親の誕生日がある月だったことを思い出した。日頃、親孝行をまったくしない親不孝な自分である。母になにか買おうと思った。

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Comments

こんにちは。このドラマ、僕も忘れることができない作品です。真魚さんのエントリーを見て記事を書き、トラックバックしようとしたのですが、どうもうまくいきません。同じココログなのに・・・?

で、お知らせに上がった次第。(笑) リンクからよろしければお読みください。。

Posted by: BigBang | February 14, 2006 at 03:25 PM

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