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January 22, 2006

ライブドアとはなにか

 このところ何人もの人から「株をやっていますか」と聞かれることがあった。株をやるほど資産があるわけでもなく、ましてや投資するとなると、それなりの専門知識が必要だろう。とてもワタシごときモノにはできませんよ、エエ、と答えている。

 しかしながら、株ってそういうもん(それなりの資金が必要、専門知識が必要である)なのだろうと思っていたのであるが、(今、一番アクセス数が多いであろう)ライブドアのホリエモンのブログの数千におよぶコメントを、つらつらと読んでみると、なんかこー、そうではないのである。考えてみれば、今、急速に増えている個人投資家とは、一般のごくフツーの人々なのであった。普通、株式を購入するとなると、その企業について、それなりにいろいろ調べたり、ポートフォリオを考えなくてはならないであろう。ところが、ホリエモンのブログに書き込むライブドアの株ホルダーと思われる人々は、別にライブドアの企業活動を評価して、ライブドアの株を買っているのではなく、堀江貴文社長その人個人が好きなので株を買っているという人が多いようだ。「多いようだ」と書いたのは、そもそもホリエモンのブログに書き込む人は、堀江氏個人が好き、もしくは嫌いという人になるのであろうから、コメント上ではその二つのタイプしかいないのだろう。その一方で、例えば有価証券報告書を読んで判断したという人もいるであろう(いるのかどうかわからんけど)。つまり、22万人いるというライブドアの株ホルダーの全員が「堀江信者」というわけでもないであろう。しかし、そうであったとしても、ライブドアに数多くの堀江信者の個人投資家が集まっていることは考えさせられることであった。

 ライブドア・ニュースには「パブリック・ジャーナリスト」なるものがある。17日のPJオピニオンで、ビデオジャーナリストの神田敏晶氏の「ライブドア家宅捜査とオールドエコノミー的感情論」は興味深かった。神田氏は、今のメディアのライブドア叩きを「オールドエコノミー的感情論」と書いている。今のメディアのここぞとばかりのライブドア悪人論はどうかと僕も思う。しかし、今のマスコミが「オールドエコノミー」であるのならば、ライブドアは「ニューエコノミー」ということになる。なるほど、株価の操作で利益を挙げる手腕では「ニューエコノミー」であろうが、これそのものが「ニューエコノミー」なのだというのは無理があるのではないか。

 ところが、だ。IT企業でもなんでもない、ファンド屋のライブドアであっても、これほど数の個人投資家が集まってきたのは一体なぜなのか。ホリエモンを支持していたメディアや自民党なども、今となってはアレは間違っていたことでした、ということにしたいのであろうが、まがりなりにも、ホリエモンを時代の寵児とし、ライブドアが閉塞した日本を変えてくれるものと思っていた人は多い。上記の神田氏のコラムにもあるように、古い日本の権威主義と戦うホリエモンというイメージである。

 先日、佐々木俊尚著『ライブドア資本論』(日本評論社)という本を読んだ。その本によると、今日、ライブドアの派手な経営を通して知られる「株価市場主義」や「時価総額経営」を、最初に行ったのはソフトバンクであるという。

 1994年、ソフトバンクは、野村證券のソフトバンク担当であった北尾吉孝をスカウトし、新規株式公開を行った。この株式上場で、2千億円の資金を調達したという。ソフトバンクは、この資金を元に次々と企業買収を行っていく。1996年、ソフトバンクの孫正義社長はオーストラリアのルパード・マードックととに、テレビ朝日の共同買収を行い、テレビ朝日の筆頭株主になる。これにはテレビ朝日はもとより、マスコミが大反発した。結局、翌1997年に、テレビ朝日を親会社の朝日新聞社に売却することで、この騒動は収まることになった。テレビ朝日の買収は失敗したが、このテレビ朝日買収騒動を前後して、ソフトバンクは積極的に企業買収を繰り広げた。

 元々、ソフトバンクは、パソコン雑誌の出版とソフトの流通が本業であった。その本業からの売り上げは、年間1400億円程度であったという。それに対して、企業買収で約5000億円ものカネを使っていたのである。これが可能であったのは、急成長しているソフトバンクの社債と株の発行であった。ソフトバンクを信頼する投資家がいたからこそ可能だったのである。当然ながら、ソフトバンクの経常損益は赤字になっているわけであるが、孫がここで出した考え方は「株式時価総額が最大の経営指標であり、本業の決算での収益はどうでもいい」ということであった。孫と北尾の経営手法とは、株価を上げていくためにいろいろな新事業を持ち上げ、記者会見もひんぱんに行い、市場に向かってさまざまにアピールしていくことで、株価を上げ、新たな資金を調達するというものであった。この手法を、マスコミは「発表会経営」と呼んだ。本業を堅実にやって、そこで収益を上げることを目指すのではなく、目立つことを言って金融市場で注目され、株価を上げていくという経営手法である。

 孫と北尾が打ち出した「発表会経営」の手法と「時価総額経営」のスタイルは、それまでの日本の経営にとって革命的なものであった。従来の日本の企業は、株主への利益を還元するということをほとんどやっていない。戦後の高度成長では、モノは作れば売れた。さらに良いモノを作れば売れたという、シェア第一主義であり、売り上げ至上主義であった。株は企業間の持ち合いであり、資金は銀行から借りるため、こうしたことをやっていても困ることはなかったのである。これに対して、ソフトバンクは巨額の買収をやり続けた。この時期、ソフトバンクの株式時価総額は6兆2500億円であったという。

 ソフトバンクは、この天文学的な規模のカネを、さらに投資や買収でネット企業にばらまく。かくて、1990年代末のネットバブルはこうして生まれた。このネットバブルは、2000年に崩壊する。崩壊のきっかけになったのは、光通信という企業の粉飾決算であった。この崩壊から生き残ったのが、楽天、オン・ザ・エッジ、サイバーエージェントなどである。オン・ザ・エッジは、2000年に東証マザーズに上場する。ホームページ制作会社であった。しかし、ただのホームページ制作会社ではなかった。ソフトバンクの「発表会経営」の手法と「時価総額経営」のスタイルは、オン・ザ・エッジの創業者堀江と顧問税理士の宮内(後に取締役に就任)によってさらに続いていくのである。2000年代初期のネット不況の中、オン・ザ・エッジは、次々と企業買収を行い、株価を上げ、資金を調達し、さらに企業買収を繰り返していった。2004年に、オン・ザ・エッジは、買収したプロバイダー企業の社名「ライブドア」を自社名とし、ポータルサイト「ライブドア」を開始した。その翌年の2005年、ニッポン放送株の買収劇へと至り、日本全国にその名が知られることになる。企業は、銀行に担保を預けて資金を借りるのではなく、自分のビジネスへの期待と信頼に基づき株主から資金を得ることができるのである。これを示した意義は、大きかったと思う。

 ただし、ライブドアの場合、この期待と信頼が経営の実態を正しく反映していたものであったのかどうか、ということは別の話であり、ホリエモンの「発表会経営」の手法に対抗して、投資する側もやはりそれなりの知識と分析眼が必要なのだと思う。

 以上、ざっとこれまでの状況を振り返ってみたが、こうして見ると、ライブドアという企業がやってきたことは、(特異といえば特異かもしれないが)現在の日本で、いわば現るべくして現れた企業であるとも言えるだろう。

 それにしても、ニュースというのは、昨日・今日の視点ではなく、過去10年ぐらい遡ってみることが時には必要だなと思う。かりにホリエモンが違法行為に関与をしていたとしても、ライブドアについてその功罪を考える視点が必要である。

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Comments

裁判等で全てが明らかになるまで分からないけれど、起業し大企業にするまでの過程では、常に法律スレスレか解釈次第の局面はあるのではないか、と思います。

しかし、彼があれだけ派手に立ち回った以上、その「微妙な部分」を見過ごしてもらえず制裁を想定していなかったとすれば、あまりにも無邪気でした。

何はともあれ、違法であったのならばそこはきちんと反省し、刑に服し、そして再び、依然とは比べ物にならぬほどタフで強く、そして王道を行く「世界一の会社」に挑戦してくれるのを同世代の人間として待っています。

Posted by: kaku | January 23, 2006 at 08:32 PM

はじめまして。 Naktakともうします。 ものすごい分析力ですね やはり編集者のかたですか? ちょくちょく遊びに来ますのでよろしくです。これを読んでからブログ更新すればよっかったな。。 (笑)

Posted by: Naktak | January 24, 2006 at 12:13 AM

kakuさん

そうそう、法律をただ字面通りに従うだけではダメですね。法の目を潜ることをどうしてもやらざるえない。そうすると、当然お上を敵にするわけで。検察から追求された時、どうかわすかということも考えておくべきだったと思う。そのへん、詰めが甘かったですね。今度は捕まらないようにするにはどうしたらいいか考えるべきだと思います。

Posted by: 真魚 | January 24, 2006 at 12:57 AM

Naktakさん、

はじめまして。いえいえ、編集者というわけではありません。しがない勤め人です。こちらこそ、よろしくお願い致します。最近、またちょっと更新が滞ることが多くなってきたのですが、なんとか書くようにします。

Posted by: 真魚 | January 24, 2006 at 12:58 AM

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