ライブドアの失敗から学ぶべきこと その2
もし仮に、ライブドアが違法行為をせずに、これまでまっとうに事業をやってきたとしよう。まっとうな事業では、ああまでお金を儲けることはできないはずなので、きっと時価総額はもっと低いであろうけど。とにかく、とりあえず法律を守ってきたとしよう。そして、では、これからも順調に事業を進めていくことができるだろうかというと、そうはならんだろうなと思う。遅かれ速かれ、なんかスキャンダルを起こして(あるいは、起こされて)没落するんじゃないかと思う。違法行為しなきゃオッケーじゃあないですかと言われるかもしれないが、ホリエモン逮捕後のマスコミのホリエモン叩きやIT企業へのいわれなきバッシングを見ていてそう思う。いかに、マスコミはITについてなにも知らんのだなと思う。
しかしだ。マスコミはITを知らない、なーにが虚業だ、と思っていればそれでいいのか、というと、そうでもないなと思う。ネット企業というのは、どうもいかがわしい。何をやっているのかよくわからない、という認識が世間にある。世の中とIT企業の間には断絶がある。
ITバブルが崩壊した2000年ぐらいから、日本社会はインターネットやパーソナル・コンピュータに対する関心をどんどん失っていったと思う。今日、日本の通信インフラは先進国でもトップクラスであり、誰もが携帯電話を持ち、ネットは日常的なものになっている。しかしながら、その反面ネットに対してネガティブな印象しか持っていない。最近のマスコミでも、ネットは危険、ネットの闇、ネットで出会って煉炭心中などばかりであって、ひと昔の前のように、インターネットが新しい時代を作るなどと言うことは誰も言わなくなった。
90年代は、日本の大企業にもインターネットに対してかなり切実な関心があったと思う。80年代の日本経済は、自動車産業や半導体産業で、アメリカに追いつき追い越していった。90年代は、アメリカのネット産業の発展を追っていった。このアメリカの産業界の最先端の動向をウォッチし追っていくというスタイルが、2000年以後になってなくなってきたように思う。
ホリエモン叩き、ネット企業へのネガティブなイメージは、その背後にリアル社会の持つネットへの不理解、恐れ、危惧があるのではないか。そして、その「ネットへの不理解、恐れ、危惧」を生んでいるのは、2000年あたりからの、人々のインターネットに対する関心のなさに起因していると思う。かつて、インターネットが社会に普及し始めた時、歴史的な大きな変動時代に我々はいると言われていた。実際に、ネットが普及した今、何がどうかわったのかという思いがあるかもしれない。
ホリエモンがこれまでこれほど注目されていたのも、この閉塞した日本を変えたいという人々の集団的な無意識なのだと思う。表では古い世代が支配する体制に従順し、ホリエモンが逮捕されたことで、日頃の溜飲を下げると共に、心の中では、これでまたなにも変わらない国になったことを嘆いている人々は少なくないのではないだろうか。しかし、ホリエモンが世の脚光を浴び、そして逮捕された今でも、実は実質的なところは、まだなにも変わっていない。むしろ、実質的な変化はこれからはじまろうとしている。
その一方で、IT企業もまた社会に対して、自分たちの行っている事業が社会にどのように関わっているのか説明する意思が少ないのではないか。六本木ヒルズに居を持ち、「稼ぐが勝ち」とか「金を持っているやつが偉い」と言っていては、ライブドアは証券業者と思われてもしかたがないではないか。世の中とIT企業の間にある断絶を払拭しなくてはならない。
ライブドアにとって、パブリシティをどのように考えていくかということが重要だったと思うし、これからも重要であろう。企業イメージの再構築、社会とのコミニュケーションやメッセージの発信なども必要であろう。そして、それはライブドアに限らず、IT業界全体についても言えることだと思う。ネットが社会全体に及ぼす大きな変化は、実はこれから始まる。これからのインターネットの新しい考え方であるWeb2.0を、どのように世の中に説明し普及させていくか。広告や広報において、従来の企業にはない新しい手法が求められる。だからこそ、よりいっそうsensitiveでなくてはならないはずだ。
IT企業というのは、どうもいかがわしいという世間のイメージをいかに払拭していくか。IT企業は、日常生活に密着したサービスというコンテンツを扱う企業であるし、あるべきだと思う。そして、文化産業でもある。ITを生活文化の中に位置づけるパブリシティが必要だと思う。
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サイトの方でコメントありがとうございました。
私はライブドアと似たようなサービスをしてるところと一緒に仕事をしていたので今回の一件は、色々と思うところがあった訳です。
何よりも、これを契機に良い方向へ進んでほしいですね、国全体として。
Posted by: koma | February 03, 2006 12:59 AM
そうですね。そのためにも、今回の出来事のその後を考え続けていきたいと思います。
Posted by: 真魚 | February 03, 2006 02:01 AM