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December 31, 2005

日本の"The Japanese Way"とは、なんなのか

 とりあえず、昨日で今年の仕事は終わりとし、今日から年末年始のお休みモードになった。ようやくとれた数日間のお休み。ていうか、もう大晦日なんですけど。

 というわけで、ここ数ヶ月分ぐらいの溜まりに溜まったTIMEとNewsWeeKを片っ端から目を通していった。日本についての記事を読んで思うのは、日本はまったく「終わっている国」扱いだなということだ。今、アジア経済で注目されているのは、当然のことながら中国であり、インドである。日本が記事になるのは、おもに政治の話だけで、日中関係や日韓関係の悪化についてのことぐらいだ。ようするに日本は、他のアジア諸国から孤立しているのだな、ということがよくわかる記事ばかりである。

 NewsWeekのDec19の号のカバーストーリィが"Bush's World"というタイトルで、そのサブタイトルが"The Isolated President: Can He Change?"と書かれていて、"Isolated"とはうまく表しているなと笑ってしまった。まさに、今のアメリカは世界の中で"Isolated"(孤立)している。このへん、ヨーロッパの中で孤立しているブレアのイギリスともよく似ている。つまり、「ブッシュ-ブレア-小泉」というこの3人のもとで、「アメリカ-イギリス-日本」とその他の国々の間はどんどん距離が広がっているということだ。某元外務官僚によれば、日本はとにかく英米に従っていればいいとのことであるが、英米だけに従っていって、世界を敵(「敵」というのも語弊があるけど)にまわすのは、外交上いかがなことだと思うのであるが。

 今年の1月1日に、僕は「2005年は中国が最大の課題になるだろう」と書いた。実際、今年の日本外交は中国が最大の課題になった。世界は今、中国に注目している。TIMEにせよNewsWeeKにせよ、中国についての記事が毎週載っている。日本がかろうじて記事になっているのは、この注目の的の中国との関係が険悪になっているから記事になっているのであって、それがなかったら、もはやJapanなんてワードは出ることすらなくなるのではないか。日本は、90年代にIT時代に適応した経済と社会に変革することができず、10年以上の不況に陥っているというのがTIME/NewsWeeKの日本観である。

 TIMEのDec26/Jan2合弁号の記事"Standing Tall"を読むと、今やアジアのリーダーを目指して急速に成長しつつある中国に対して、日本の総理大臣が考えた策は、アメリカとの密接な関係を保つことと、靖国神社に参拝することであるという、まことに「ええんか、それで」という有様である。

 NewsWeekのDec26/Jan2合弁号は、安倍晋三官房長官が表紙になっていたが、中身は3ページ程度の人物紹介記事があるだけだった。これは一体なんなのかよくわからん。同じくNewsWeekの年末特集号「ISSUES 2006」は、情報通信の発達が世界を変えたことを踏まえ、知識革命の時代がやってきたことを述べている。この特集は、日本版NewsWeekの12/28,1/4合併号でも読むことができる。今の経済は、知識や革新性や創造性を主体とし、それらがネットワークでつながり、共有することで価値を生み出している。NewsWeekの特集では、この新しい経済について書いていて、非常におもしろかった。

 この中でシンガポールの首相であるLee Hsien Loongのコラム"The Singapore Way"に着目したい。Leeはこう書く。

"Globalization has moved beyond industry and is now penetrating the knowledge processing in every object, and link people and organizations in networks that are always on, always connected. Even in textiles, traditionally a low-tech, low-wage industry, a new breed of company has emerged. They manage a full season's offerings of department stores in the United States and Europe, creating the designs, sourcing the materials, organizing production in foreign countries and managing the logistics and value chains from beginning to end."

 かつて大前研一が書いていたが、シンガポールには農民はいない。しかしながら、日本よりも農作物が安い。なぜならば、世界中で最も品質が良くて安いものを自由に輸入することができるからだ。今の時代の「国の富」とは、広大な領土やたくさんの資源を持っていることや強力な軍事力を持っていることではない。むしろ「持ってない」ことが強さになる時代になったのだ。シンガポールは、現代の時代で何が富をもたらすのかということについて、それは国境のない経済ということであり、世界とつながることだという明確なビジョンを持って進んでいる。

 そして、Leeは書く。

"Countries all over the world are working hard to position themselves for the growing competition in the knowledge economy. Singapore is likely to do well in this environment. Our ethos is open, cosmopolitan and pragmatic. Our society is meritocratic and egalitarian. Our multiracial population is English speaking, but bilingual in Mandarin,Malay/Indonesian and other languages, and comfortable with European, American and other Asian cultures."

 島国であるシンガポールは、まさにボーダーレス経済の時代に"is likely to do well in this environment"なのである。それが"The Singapore Way"なのだ。

 ひるがえって、我が国の首相は、上記のようなことを言ったことがあったであろうか。同じ島国である日本の"The Japanese Way"とは、なんなのであろうか。靖国神社に参拝して、平和を願っていればそれでよくて、あとはアメリカ様がなんとかしてくれると思っているのであろうか。日本経済は、世界の各国に依存している。日本は、日本企業の製品を外国のマーケットで販売し、資源も食料も世界から輸入することで成り立っている国である。世界とつながることが日本の生存手段であり、世界との相互依存関係こそが、強力な安全保障である。それをわざわざ壊すようなことを行っているのが、今の日本である。「文句言ってきたのは、あいつらだろ」という声もあるかもしれないが、あの程度の文句で騒ぐような薄っぺらい愛国心しかないのだろうか。

 このシンガポールのLee Hsien Loong首相のコラムは、なぜか日本語版には載っていない。アメリカにせよ、中国にせよ、韓国にせよ、シンガポールにせよ、世界は新しい時代の中で、新しい競争へ向かって進んでいる。では、我が国はどうかというと、株の操作でテレビ局から大金をせしめた話や、構造計算書を偽装したとか、小学生の殺害が続く話ばかりである。世の中の製品が完全に「安全」であるという確認をしなくてはならなくなったり、日本中の通学路のいたるところに、監視カメラを置かなくてはならなくなったとして、そのコストは厖大なものになるであろう。それらはやむを得ないことだとしても、そうやって、本来向けるべき新しい時代への労力を、日本社会はどんどん失っていくのである。日本だけが、さらに失われる10年の中にいるのだ。

 映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のラストシーンは、昭和33年の12月31日、完成した東京タワーの向こうに沈む夕日を見つめる夕日町三丁目の人々の姿であった。あの日から47年後の今日、僕たちはいかなる気持ちで夕日を見つめるのだろうか。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

どうもこんにちは.

興味深く読ませて頂きましたが,数点
はっきりしないところがありますので
お考えを教えて頂ければ幸いです.

> 今、アジア経済で注目されているのは、当然のことながら中国であり、インドである。日本が記事になるのは、おもに政治の話だけで、日中関係や日韓関係の悪化についてのことぐらいだ。

これは実際には日本の経済が成熟している
のに対し,中国,インド(韓国も)は未熟だから
注目されるのではないでしょうか.
また,中国は国民の人権侵害問題でよく
話題になっておりますが,如何お考えでしょうか.

> ここ数ヶ月分ぐらいの溜まりに溜まったTIMEとNewsWeeKを片っ端から目を通していった。日本についての記事を読んで思うのは、日本はまったく「終わっている国」扱いだなということだ。

この先の話のソースはTIMEとNewsWeeKだけ
ということでよろしいでしょうか?

> 世界を敵(「敵」というのも語弊があるけど)にまわすのは、外交上いかがなことだと思うのであるが。

「世界」を定義して下さい.
後述のシンガポールを例に挙げますと,
彼らは日本に対して極めて友好的です.

> 日本は、90年代にIT時代に適応した経済と社会に変革することができず、10年以上の不況に陥っているというのがTIME/NewsWeeKの日本観である。

TIMEとNewsWeeKに明確に書かれていたのですか?

> 今やアジアのリーダーを目指して急速に成長しつつある中国に対して、日本の総理大臣が考えた策は、アメリカとの密接な関係を保つことと、靖国神社に参拝することであるという、まことに「ええんか、それで」という有様である。

アジアを定義して下さい.
また,実質上のリーダである日本と
リーダを目指す中国は政策が異なって当然だと
思うのですが如何でしょうか?

> 日本経済は、世界の各国に依存している。

> シンガポールは、現代の時代で何が富をもたらすのかということについて、それは国境のない経済ということであり、世界とつながることだという明確なビジョンを持って進んでいる。

と同じではありませんか?
つまり,シンガポールの経済も世界各国に依存していますよね?

> 世界とつながることが日本の生存手段であり、世界との相互依存関係こそが、強力な安全保障である。それをわざわざ壊すようなことを行っているのが、今の日本である。

「世界」とは何ですか?
今までの話だと日中関係と日韓関係の冷え込みは
出てきましたが,それを世界というのは飛躍しすぎです.

> 我が国はどうかというと、株の操作でテレビ局から大金をせしめた話や、構造計算書を偽装したとか、小学生の殺害が続く話ばかりである。

これはワイドショーですよね?
ワイドショーの世界と経済の世界は
異なるというのはご理解されていますか?
構造計算書が偽造された話が続いたとして,
仕事の内容が変わった方はそんなにいるのですか?

> それらはやむを得ないことだとしても、そうやって、本来向けるべき新しい時代への労力を、日本社会はどんどん失っていくのである。

次の世代を守れなくて,どうやって新時代が
築けるのですか?新時代の労力は今の子供であり,
それを守るのは当然のことではないでしょうか?

また,

> そのコストは厖大なものになるであろう。

とありますが,今までODAとして外交に使っていた資金を
削減すれば簡単に払える額ではないでしょうか?
中国に今まで何兆円も払ってきたのに自国の子供を
守るために同じくらいの額を使うことになると反対する
というのはとても残念なことだと思います.

Posted by: はぎわら | January 02, 2006 at 12:56 AM

中国とインドは良くも悪くも既存の世界体制に加わった新しい有力国として注目度があがるのでしょう。

ところで、「アメリカとの密接な関係を保つことと、靖国神社に参拝すること」というのは本来は極めて矛盾することだと思うのですが、これを可能たら占めているThe Japanese wayとは何なのでしょうか?こちらにTBした記事でも記したように、靖国イデオロギーに忠実であろうとすれば日米関係の強化は否定されるべきものとなってしまいます。ところが、現実には靖国神社参拝に積極的な政治家の方が日米同盟支持という奇妙なことがおきています。

ところで真魚さんは戦後のレジーム・チェンジと靖国参拝の矛盾をどこで拭い去ることができましたか?靖国のイデオロギーには反対でも国民として参拝と追悼は行なうべきとの主張でしたが。

というのもTB記事にある通り、戦後のレジーム・チェンジと矛盾する靖国だから参拝は躊躇せざるを得ないと思っているだけで、こうした矛盾が解決されてしまえば、靖国参拝をしても良いと考えています。

Posted by: 舎 亜歴 | January 02, 2006 at 01:42 AM

はぎわらさん、こんにちは

>>これは実際には日本の経済が成熟している
のに対し,中国,インド(韓国も)は未熟だから
注目されるのではないでしょうか.<<

経済に成熟はありません。環境は変化していますので、新しい環境に対応していくことが必要です。欧米のメディアが今の日本に注目するのは、第二次世界大戦以後の経済的巨人であった日本が、21世紀の新しい環境に対してどのように適応していくのかということです。ところが、そうしたものがさっぱり見えてきません。市場開放ひとつをとっても、中国は日本より進んでいます。つまり、アメリカのメディアが中国に注目するのは「未熟だから」ではありません。もちろん、中国は将来に大きな可能性があるということもありますが、それよりも、中国の経済発展のやり方がボーダーレス経済のやり方に適応している、あるいは適応したものにしようと苦闘しているからです。


>>また,中国は国民の人権侵害問題でよく
話題になっておりますが,如何お考えでしょうか.<<

まず"human rights"というのは、西欧社会の思想であって、アジアには西欧の"human rights"という概念はありません。しかしながら、だから中国は中国のやり方がでいいというわけではありません。中国が国際社会で政治的なパワーを行使する国になりたいというのならば、人権についても欧米の社会思想を前にして、どうであるべきなのかを彼らは考える必要があると思います。また、経済が発達していけば、いやでも欧米的な社会意識に変わらざる得なくなります。少なくとも現状にままで中国政府が変わらないというのならば、やがて中国は崩壊か内乱が起こるでしょう。


>>この先の話のソースはTIMEとNewsWeeKだけ
ということでよろしいでしょうか?<<

このブログの記事ではTIMEとNewsWeeKです。しかし、日本を「終わっている国」扱いにしているのは、欧米のメディア(といっても私が読めるのは英語だけですが)ではめずらしくありません。イギリスのガーディアンもアメリカのNYTも主力記者を東京から北京などに移動させています。2002年のNYTの記事ですが"As Tokyo Loses Luster, Foreign Media Move On"よると、"The Chicago Tribune, The Christian Science Monitor, The Independent of London, Dagens Nyheter of Sweden and Corriere della Sera of Italy"などが東京事務所を閉鎖しています。


>>「世界」を定義して下さい.
後述のシンガポールを例に挙げますと,
彼らは日本に対して極めて友好的です.<<

ここでいう「世界」とは、地理学的な意味での「世界」ではありません。アジア地域で言えば、ロシア、インド、中国、韓国(南北統一する可能性も含めて)、そして日本になります。シンガポールやブータンやチベットなどがいかに日本を支持しようとも、国際社会のpower politicsでは意味を持ちません。


>>TIMEとNewsWeeKに明確に書かれていたのですか?<<

TIMEだったかNewsWeeKに書いてありました。どの号だったか覚えていないのですが。


>>アジアを定義して下さい.<<

アジアについての明確な定義はありません。そもそも、歴史上、アジアとは西欧がユーラシア大陸の非西欧文化地域を総称してアジアと呼びました。アジアの概念は、時代的、文脈的に変化します。


>>また,実質上のリーダである日本と
リーダを目指す中国は政策が異なって当然だと
思うのですが如何でしょうか?<<

ボーダーレス経済は、国家が「リーダーである」とか「リーダーを目指す」とかいったこととは別です。中国の大連、四川、上海などの都市は、規制を緩和し、どんどん外資を積極的に導入しています。グローバルな経済の時代では、やるべきことはひとつです。中国だろうが、韓国だろうが、日本だろうが変わりありません。これまでの過去、成功した国であったかどうかはあまり関係ありません。新しい基準になって、みんな同じスタートラインに立って、よーいどん、になったのです。


>>と同じではありませんか?
つまり,シンガポールの経済も世界各国に依存していますよね?<<

同じです。だからこそ、日本の首相も、シンガポールの首相も、経済の考え方において共通するものがあるはずだと申しています。しかしながら、小泉総理の言動にはそれが見えないと申しています。


>>「世界」とは何ですか?
今までの話だと日中関係と日韓関係の冷え込みは
出てきましたが,それを世界というのは飛躍しすぎです.<<

なるほど、この文章の文脈では「世界」というより「他国」と書くべきでありました。しかし、他国の存在を意識するということは、世界を意識するということではないでしょうか。具体的に言えば、ご指摘の通り韓国、中国です。日本は生鮮食料を中国からの供給に頼っています。逆に、工作機械は日本の方がダントツに優れています。この相互依存関係こそ、日本国の安全保障であり、日米安保があればそれでいいというわけではありません。


>>ワイドショーの世界と経済の世界は
異なるというのはご理解されていますか?<<

民情と経済は関係しています。経済学の学説を書いているつもりはありません。


>>構造計算書が偽造された話が続いたとして,
仕事の内容が変わった方はそんなにいるのですか?<<

あらゆる物事は絶対で確実な安全性を立証せよとなれば、法律はさらに増え、手続きがややこしくなります。現場からすればやりにくくなります。


>>次の世代を守れなくて,どうやって新時代が
築けるのですか?新時代の労力は今の子供であり,
それを守るのは当然のことではないでしょうか?<<

現状の日本を見れば「それらはやむを得ないことだ」と書いています。「としても」それらのコストは甚大なものになると申しています。私が申したいのは、ワイドショーならワイドショーの話がどうしてこうも暗い、未来への展望のない話ばかりなのかということです。資金にも時間にも限りがあります。監視カメラを置くコストを、教育改革に向ければ、もっと大きな改革ができるのではないでしょうか。監視カメラがある社会で子供を育てなければならないことは、大人にとっても子供にとっても不幸なのではないでしょうか。何度も申しますが「それらはやむを得ないことだとしても」そうした現実しかない今の日本が残念でなりません。

Posted by: 真魚 | January 04, 2006 at 01:02 AM

舎さん、

戦後のレジーム・チェンジと靖国参拝ですが、靖国神社は宗教です。宗教にレジーム・チェンジはありません。靖国神社の教義や遊就館の展示や説明文は、歴史学としての展示や説明ではありません。あの展示や説明が偏っているのは当然です。靖国神社が、戦後日本に合わせる必要はありませんし、合わせなくてはならないとも思いません。それは現代の比叡山の天台宗や高野山の真言宗が、今の時代に合わせる必要はないということと同じです。

しかしながら、昭和の一時期に、あの神社とあの宗教を日本人が「信仰」をしていたのは事実です。この事実は否定できません。あの戦争があったということも事実であるのならば、天皇と靖国神社が国家神道のシンボル的存在であったのも事実です。その良し悪しを論じるのは、我々、後生の世代の努めですが、あの時代に生きた人々はそれを「善」だと信じて生きていました。その生を忘れ去るべきではないと思います。

Posted by: 真魚 | January 04, 2006 at 01:07 AM

宗教にはレジーム・チェンジはない、しかし宗教団体にはあるのではと考えています。何も外国の力によらなくても、日本人が自ら行なった例があります。比叡山と本願寺は織田信長によるレジーム・チェンジに激しく抵抗しましたが、今やどちらも本能寺の変の日に信長の追悼をするほどまでにレジーム・チェンジしました。靖国神社ではできるのか?それにはもっと靖国を知る必要がありそうです。

それよりも本題のThe Japanese Wayについてですが、私は長らく日本の政治座標に奇妙なものを感じてきました。それは日米同盟を積極的に支援している政治家や言論人の方が戦後のレジーム・チェンジを否定するかのような発言をしていることです。東京裁判は戦勝国本位で裁かれた不当なもの、平和憲法はアメリカが敗戦国日本に押し付けたものといった類です。そして戦後の民主主義よりもナショナリスト感情を重視するような発言をする者もいます。このような思想の持ち主が日米同盟重視の保守派なのに対して、東京裁判や占領統治を受け入れてナショナリスト感情を批判する左翼が日米同盟に反対しています。本来なら立場が逆のはずなのですが。日米同盟重視とは、当然ながら戦後のレジーム・チェンジへの全面支持でなければすじがとおらないはずです。

この奇妙なねじれは何なのでしょうか?ともかく、本題のthe Japanese wayについて真魚さんはどう考えますか?また、マイクさんは「保守思想」の立場から、この奇妙なねじれをどう考えますか?

なお、靖国については私のTB記事にコメントをお願いします。ともかく、本題のthe Japanese wayについて、以前から奇妙に思ってきました。

Posted by: 舎 亜歴 | January 05, 2006 at 02:25 AM

舎さん、

>>本来なら立場が逆のはずなのですが<<

いえいえ、立場の逆転を行ったのはアメリカの方です。敗戦後の日本の占領政策を立案し実行するGHQのスタッフは、かつてルーズベルトのもとでニューディール政策に関わっていた人々が多かったのです。彼らはニューディーラーと呼ばれるリベラルな一群でした。彼らはあまりにもリベラルすぎて本国のニューディール政策ですらできなかった数々の社会政策を日本で実行することを考え、そして実行しました。いわば、日本はリベラリストの実験場みたいなものになったようなものです。その中で、東京裁判や農地解放、財閥解体、教育改革、平和憲法の制定、天皇の人間宣言等が行われたわけです。徳田球一、志賀義雄など戦前からの共産主義運動の指導者たちも釈放され、日本共産党は大きく勢力を伸ばし始めました。個人の自由と権利を尊重するということも、戦前軍部に押さえつけられていた自由主義知識人たちにとってたいへん良いことだったわけです。アメリカはまさに解放者でした。反共主義であったダレスの国務省は、こうしたGHQのやり方に反対していましたが、GHQは国務省の指示を突っぱねていました。

ところが、チャーチルのアイアン・カーテン演説やトルーマン・ドクトリンが示すように、東西のイデオロギー対立が激化します。朝鮮半島では、朝鮮戦争が起こります。ここでアメリカの対日占領政策は180度回転するわけです。(簡単に言いますと)従来のリベラルなニューディーラー主導の占領政策ではなく、反共主義の国務省主導の占領政策に転換します。マッカーサーは警察予備隊の創設を指令し、日本は再軍備します。労働団体や社会主義・共産主義への抑圧が始まりました。かくて、アメリカは反共の帝国になり、日本は東アジアでの反共の砦になったわけです。(大ざっぱに言えば)このようにして、戦後の自由主義知識人は、戦後民主主義は良いがアメリカは良くないという意識を持つに至ったわけです。

では、保守はどうか。1950年代からの、このいわゆる「逆コース」の中で、アメリカの国務省やCIAは自民党を支援します。カネもかなり流れています。戦犯だった岸信介なども巣鴨刑務所から釈放されます。つまり、「逆コース」後のアメリカがバックあって、自民党は日本の政権党になり、戦後日本の長期安定政権になるわけです。保守派は日本に共産主義政権ができることを恐れていました。反共ということで「逆コース」後のアメリカと密接につながるわけです。保守のナショナリズムとしては、東京裁判も平和憲法も受け入れがたい、しかし、戦後、保守政党はアメリカをバックにして成り立ってきた。ましてや、ソ連崩壊後の今日では、リアリズムの視点から見れば英米に従っている方が国益である、というのが保守の意識であるわけです。その意味で、今の自民党がやっているアメリカ支持のもとでのナショナリズムの強調、憲法改正、軍備力増強というのは、戦後史の中で一貫として変わっていません。

靖国神社については、舎さんのブログの方でコメントします。

Posted by: 真魚 | January 05, 2006 at 01:28 PM

真魚さん、

あけましておめでとうございます!!今年もよろしく。 

年末年始はあまり頭を使わない事に集中することに。新しいノートパソコンにソフトの導入などを行っていました。Macならもっと頭を使わなくて良かったかも…

<<かつて大前研一が書いていたが、シンガポールには農民はいない。しかしながら、日本よりも農作物が安い。なぜならば、世界中で最も品質が良くて安いものを自由に輸入することができるからだ。

12月はじめてシンガポールに行ったのですが、”日本より安い”はどのようなものさしを使ったのでしょうか?シンガポールの物価は日本より安いです。でも庶民の給料も日本より安いです。私の働いている会社もシンガポールで製品を売っていますが、日本と比べると同じ製品(ソフト)が60-70%の価格で売られています。

シンガポールは町程の大きさの国です。隣のマレーシアから農作物が入ってきます。物価はシンガポールより安い。日本より安いに決まっていませんか?

なぜ、リベラルな方々は経済の話になるとものさしの使い方を間違えるのでしょうか?

何時もおもうのですが、良く貧困を”一日1ドル”以下の収入と言われます。でも物価が日本の1000分の1であれば、べつに海外からくるプラズマテレビを買おうとしないかぎり、問題はそれほど大きなものではないのでは?

また今年もよろしく。

MikeRossTky

Posted by: マイク | January 06, 2006 at 08:15 AM

真魚さん、

<<市場開放ひとつをとっても、中国は日本より進んでいます。

どの市場について中国は日本よりすすんでいるのでしょうか?私が関わっている市場では中国は非常の遅れているのですが。

中国で契約書を交わす”勇気”が必要ですよね。

MikeRossTky

Posted by: マイク | January 06, 2006 at 08:18 AM

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

In the US, this year is year of a midterm election. I hope that Americans make the right choice.

>>シンガポールは町程の大きさの国です。

Yes, it is. 僕もシンガポールに行ったことがありますが、都市の景観がきれいな国です。マレーシアも(ペナン島だけですが)行きました。つまり、物価が安くて暮らし良い国であるということと、国家の国土の大きさは関係ないということです。むしろ、シンガポールのような小さい国の方がいいんです。日本も地域別に分割した方がいいのではないでしょうか。

So you deny 物価の国際比較?? You don't know about PPP(Purchasing Power Parity)???

>>何時もおもうのですが、良く貧困を”一日1ドル”以下の収入と言われます。でも物価が日本の1000分の1であれば、べつに海外からくるプラズマテレビを買おうとしないかぎり、問題はそれほど大きなものではないのでは?<<

ほほう、だからアフリカは貧困ではないんだと。どうなってもいいと。

Posted by: 真魚 | January 08, 2006 at 01:36 AM

Mike,

日本のおもちゃは、ほとんどmade in Chinaですけど・・・・・。

Posted by: 真魚 | January 08, 2006 at 01:37 AM

真魚さん、

シンガポールを使って国単位の”物価の国際”を行うのには無理があるのでは?都市間の物価比較、特に不動産などならわかkりますが。シンガポールはマレーシアと言うもう少し大きな国の経済を取り入れて考えるべきだと。

<<だからアフリカは貧困ではないんだと。どうなってもいいと。

またまた、書いてもいない事を。You need to stop putting words in my mouth.  You just can not compare living wages and cost of living with developed and non-developed nations.

<<市場開放ひとつをとっても、中国は日本より進んでいます。

<日本のおもちゃは、ほとんどmade in Chinaですけど・・・・・。

輸出産業をもって”市場開放”ですか?

MikeRossTky

Posted by: マイク | January 08, 2006 at 10:36 AM

真魚さん、

まさに模範答案です。レジーム・チェンジの際には前体制で経験を積んだ人材が必要なので、ある程度は彼らを取り込むようになります。ただ、ドイツの非ナチ化は日本より徹底しており、戦後の「アメリカ押し付け統治」を批判する声は保守派ナショナリストからさえも殆ど挙がっていないはずです。私は中国や韓国への謝罪にはあまり関心はありません。この件では彼らの意図に対日優位を築こうとしているのではという疑念があるからです。ただし、レジーム・チェンジに不満をくすぶらせ続けてきた日本人が多いことには懸念を抱いています。日独の違いは何か?非常に興味深いところです。

冷戦期には反共というだけでアメリカが非民主政権を支援してきた例は枚挙暇がありません。そうした中にはパキスタンのようにアメリカの国益と世界の安全保障を脅かす国もありました。カーン・ネットワークによる核拡散やタリバン支援がその典型です。9-11以降のインドとアメリカの急接近に私が注目するのはこうした理由からです。

ただ、日本の場合には軍部と官僚の支配するファシスト国家の打倒という明確な目標があっただけに、最近のナショナリストの台頭は苦々しく思えてきます。また、日米同盟をめぐる奇妙なねじれが将来の両国関係に悪影響を及ぼさないかと懸念しています。そうなると貿易摩擦どころではありません。

最後に、私が平和憲法を全面破棄すべきと考えているのは、日本にはレジーム・チェンジが定着したはずだと見ているからです。戦後に平和憲法を採択したのは、ファシスト国家への懲罰として絶対に必要であったと考えています。しかし罰に永遠なものはありません。刑期を終えて社会でまじめに過ごして信頼を得た元犯罪人をいつまでも白眼視はしないでしょう。むしろ、アメリカの有力同盟国として日本もイギリスのように世界の安全保障に積極的に関わるべきだという考え方はここから来ています。同じ改憲派でも昨今の保守派政治家、言論人、そしてうじ虫のように増殖するネトウヨには、こうした理由から嫌悪感を抱いています。

Posted by: 舎 亜歴 | January 08, 2006 at 04:10 PM

マイクさん、

ところで日米同盟への支持と戦後のレジーム・チェンジへの賛否をめぐる奇妙なねじれについて、本当におかしいと思いませんか?この問題は日本の保守と英米の保守がいかに異質なものかを示しているち思います。

政府の大小はその国の政情で変わってきます。例えばデンマークのアンダース・ラスムッセン政権は保守ですが、福祉国家をやめたりはしないでしょう。それがデンマークだからです。一方でアメリカにどんなリベラル政権が成立したとしても、北欧型の福祉国家ができることは有り得ません。それがアメリカだからです。

日本の保守政治家が英米型の保守の理念を信奉しているなら、間違っても戦後のレジーム・チェンジを否定するような発言はしません。このような指導者たちが日米同盟を支持しているのに対して、日米同盟に批判的な左翼の方が戦後のレジーム・チェンジを肯定的にとらえているという事実には大きな矛盾を感じています。

同じ保守でも日本の保守と英米の保守はこうまで異質な理念なのでしょうか?

Posted by: 舎 亜歴 | January 08, 2006 at 04:25 PM

旅行関連の情報を載せました。
ぜひお立ち寄り下さい。

Posted by: tyou777 | January 08, 2006 at 05:43 PM

舎さん、


日米関係で障害になっているのは、日本人の偏狭なナショナリズム感情よりも、日本側に明確な世界観、国家意識が欠落していることだと思います。

いわゆる「ネトウヨ」や偏狭なナショナリズム的感情というものは、日本では必然的に発生するものだと思います。これはもう幕末の頃から変わっていません。尊皇攘夷なんだと思います。しかし、これは切り捨てられません。明治維新は革命でしたが、この革命が成功したのは、薩長は日本人の尊皇攘夷感情を倒幕に向けることができたからだと思います。倒幕以後の明治の近代化も、この日本人の土着的な感情のパワーがあってできたものです。この土着的な感情をなくすことはできないです。

日本側に明確な国家戦略がないということについては、これが日本とイギリスの違いだと思います。日本には、ようするに、世界はこれからどうなって、その中で日本はいかなる方向へ進むべきか、またその方向に進むには今何をなすべきか、といった世界的視野のプランがないということです。いや、あることはあるのかもしれませんが、それが国家として統一がとれておらず、各省庁が勝手に独自でやっているということです。憲法改正にしても、これからの世界はこうで、従って日本はこうでなくてはならないという思考からではなく、アメリカがこう言ってきたので、こちらはそれに対応しなくてはならない、そのためには今の憲法を変えなくてはならない、そうするのが国益だ式の流れになって、その場その場の場当たり的なんです。自民党内部でゴタゴタやって、さらに外務省や防衛庁もまた独自に勝手に動いていきます。アメリカから見れば、日本は国としての主体的意志がどこにあるのかさっぱりわからないという状態になっています。とてもこれでは、日本をイギリスと同列に扱うことはできないのではないでしょうか。国にそうした明確な国家的方針がないから、世論が偏狭なナショナリズムに走るのではないかと思います。


Posted by: 真魚 | January 09, 2006 at 01:21 AM

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靖国神社への参拝については賛否両論があるが、多くの人がこの神社がどのようなところ [Read More]

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