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September 18, 2005

今必要なのは民主党の民営化だ

 民主党の新しい代表になった前原誠司氏のウェブにある「前原誠司の基本姿勢」を読んでみた。

 新生民主党は「闘う政党」になるとのことである。「闘う」というのは、何に対して「闘う」のであるか。もちろん、小泉自民党と闘うのであり、現状の民主党の前に立ちはだかる様々な障害と闘うのであろう。しかしながら、この「闘う政党」というスローガンを見ただけで、ナニカチガウとゆーか、あーこれまでの民主党と同じだと思った。国民は別に「闘う政党」というものを求めているわけではないと思うのであるが。

 「自民党型旧来政治を打破すること」と書いてあるが、そもそも自民党型旧来政治は、小泉純一郎によって打破されてしまったのであって、むしろアフター・コイズミの状況をいかに捉えるかが必要なのだと思う。「国民の誇りと自信を取り戻し、国民一人一人の多様な幸せを実現できる社会。」と書いてあるが、これはなんか自民党が書きそうなスローガンだけど、民主党もこういうことを言うんだなあと思った。もちろん、悪いことではない。

 ただ、今の有権者の中には、民主党はなにか中国・韓国とつながっているのではないかというイメージがあって、それが民主党を今ひとつ信用できない要因になっている。こうしたネガティブなイメージは、きっぱりと打ち消す必要がある。「国民の誇りと自信を取り戻し云々」と言う前に、新しい民主党は中国・韓国をどう考えるのか。靖国神社参拝をどう考えているのか、愛国心というものをどう考えるかといったこともきちんと明確にすることが重要であろう。ささいなことかもしれないが、そうしたささいなことを有権者は気にするものだ。

 ようするに、民主党のナニが悪いのか。それを徹底的に国民から聞くということが必要であろう。民主党は、労働組合や各種業界のための政党ではなく、国民のための政党であることをまず全面に大きく打ち出すべきだ。とにかく、なりふりかまわず党の問題点をたたき出し、それをひとつひとつ解決していくことが必要であろう。民主党以外の外部のコンサルティング企業も活用すべきだ。これら手法は、企業の組織改革や体制改革で行なっていることであって、政党も企業も変わりはない。民間の技術、民間のノウハウを導入すべきなのは、役所や官庁である前に政党自身なのである。今必要なのは、政党の民営化なのだ。いっそのこと、新しいスローガンは「民主党を民営化します」であってもいいと思う。党の人事も収支決済も透明化するであろう。今回の選挙で、議員の数が減ったのは余剰人員の削減だったと思えばよい。あやうく菅直人が代表になりかけたが、それも避けることができた。今が民主党の変革のチャンスだ。党の代表が40代なのだから、30代を中心とした民主党改革プロジェクトを発足することができるのではないか。

 今回の選挙では、自民党はアメリカのBBDOという調査会社を使っていたようであるが、民主党もアメリカの調査会社や政治コンサルタントを雇うことをしてもよいと思う。党員以外の外部スタッフを幅広く活用すべきだ。特に、メディア対応の専門スタッフは絶対に必要だ。さらに演説原稿を書くスピーチライターも必要だ。政治とは言葉である。政治家とは、言葉で人を動かす人なのだ。だからこそ、世界の政治には名文や名演説がある。日本では、政治の言葉が貧しいものになっている。まずは言葉から、しっかりとしたものにしなくてはならない。

 「インターネット、 IT を駆使して国民とつながる 」については言うまでもなく進めて欲しい。ウェブやブログを使っての情報発信は当然のことだ。政治でネットを使うことができない公職選挙法は即刻改正すべきだ。メディア専門の部門を作り、インターネットでのテレビ局やネットラジオ局をオープンして欲しい(Podcasting対応にしてね)。それらのメディア局は、民主党のちょうちん持ち番組ではなく、むしろ民主党批判もOKにして、広くオープンに日本の政治、世界の政治を扱うものであって欲しい。自民党議員にも出演してもらって、語ってもらうのもいいだろう。そもそも、そうしたことは本来はマスコミの仕事であるのだが、今の大手マスコミは国民の側には立っていないので、それならば自分でメディアを作るしかない。

 それらのメディアを通して、年金はとうの昔に破綻しているから、国の年金をあてにしない人生計画が必要だとか、国債は紙くずになるかもしれない。日本の銀行の預金金利がこれほど低いのはなぜか。株価が下がっても、大多数の日本人は株を資産の中に入れているわけではないので全然困らない。教育は崩壊している。それでいて教育費が異常に高い。アメリカへの過度の依存関係は危険である。小選挙区制には問題がある等々、伝えるべき真実は山のようにある。

 そして国民の側も、民主党を育てるという意識が必要だと思う。なにしろ、戦後60年間、(その間自民党ではない時期もあったけど)事実上自民党の独占政権体制であったのだ。一度も与党になったことがない民主党に、多少の至らぬ点があるのは当然ではないだろうか。自民党は支持しないが、民主党では不安だ、だから自民党に投票しましたというのではなく、「不安な民主党」を「不安ではない民主党」にしなくてはならない。それをやるのは民主党の側なんだから、有権者たる国民はそれをただ黙って待っているだけでいいというわけではない。そんなことでは、100年たっても民主党は万年野党のままであろう。

 民主党を育てるのは、なにも民主党のためにやるわけではない。我々国民は、国民・生活者を中心としたマジョリティのための政党を、本気で持つ気があるのかということだ。あるのだったら、若干の不安がある民主党を優れた政党に育て挙げ、将来の政権与党にしていくしかない。我々国民の生活のために、国民の側に立ち、国政を任せることできる政党が必要なのである。そのために、民主党は民間企業の組織改革の手法を導入し、民主党に投票した支持者がオーナーである政策立案運営組織のような政党になるべきだと思う。新しい党首は、こうした柔軟な発想を持った人であって欲しい。

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Comments

はじめまして。

私は、今回の小泉さんには不満がたくさんありますが、こういう異様な勝利と民主党の大惨敗は、長い目で見れば、民主党の今後の脱皮のためにもよかったのかもしれませんね。

中国・韓国との怪しげなつながりについては、本当は与党自民党にも濃厚なんですよね。今回の選挙で、自民党の中の右よりがけっこう落選して、特に外交政策に興味のなさそうな人が当選したり、左よりは健在だったりして、妙な感じもしますが。

考えてみれば、アメリカの共和党にもそれなりに左派的な人もいますし、民主党にも右よりな人もいることを考えれば、二大政党制ってこういうものなんでしょうね。つまり、政党名がそのままイデオロギーを示すわけではないと。そうなると、ますますワン・イッシューが重要になりますね。

オッカムさん、はじめまして。

もともと、自民党が戦後60年間事実上の単独政権だったのは、自民党内部にさまざまな考え方を持つ派閥があって、それが良きつけ悪しきつけうまく作動していたために長期安定政権が可能だったのだと思います。それももうなくなりました。

日本の政治基盤は小泉総理が壊してくれましたから、民主党も労働組合からスパッと手を切ることができるのではないでしょうか。改革をするのならば、リセットしてゼロベースでくみ上げていって欲しいですね。民主党は変わることができるいい機会です。これで変わることができなければ解散ですね。

アメリカでも、実際のところ民主党と共和党が常に対立関係にあるわけではありません。むしろ、自分に反対する議員が対立相手であって、それは同じ党員であったりもします。それでもアメリカの場合は、ご存じのように思想的背景がありますから、まだ(とりあえずの)区分けはできると思います。日本の政党には、欧米の政治思想の観点から見れば思想と呼ぶべきものはありませんから「政党」による区分けはむずかしいですね。

真魚さん、

民主党が立て治るためには民主党が”地盤”を作る必要があると思います。今までの民主党はあくまでもアンチ自民党。自民党以外の選択肢を投票者が求める時に投票する党だと思います。今回の選挙では自民党に投票したい人が増えた。既存の自民党の地盤に浮動票が乗って、民主党が敗退した。連合とか組合にしか地盤が無い民主党はいくらがんばっても無理な環境にいたと思います。前回選挙に勝った議員はなぜ自分の選挙地で前回よりはるかに少ない投票しか得られなかった理由を考えなければならない。その反対に郵政民営化を反対した無所属議員がなぜ勝つ事ができたり、票を2分しても民主党は勝て無かった選挙区があったのかをその選挙区の民主党議員は考えないといけないと思います。

アメリカからコンサルを雇うのなら、共和党がどのようにこの10年間地盤を作って行ったかを教えてくれるコンサルを雇う必要があるのではないでしょうか?

アメリカの民主党は既存の地盤をどんどん削っているように見受けます。どんどん左に向かって、何でも反対、何でも左翼アジェンダ。個別の選挙では勝つ事ができても、地盤が弱くなれば勝つ選挙の数はどんどん減っていきます。

MikeRossTky

今回の選挙についてはこちらのブログで先の記事(9-13)にコメントした通り、乗り気になれませんでした。私のように選挙を一切無視した政治ブログは少ないでしょう。

本題の民主党ですが、若手による党改革というのがかつての日本新党でも聞いたような聞かなかったような。また何かを繰り返すのでは?

Mike,

今回の選挙での自民党の圧勝は小泉人気であって地盤や固定票ではない。民主党は今回無党派層の票を得ることができなかったのかが重要です。

共和党の政治コンサルタントを雇うのならならば選挙対策専門です。共和党の政策に、日本の民主党が学ぶべきものはありません。

>>アメリカの民主党は既存の地盤をどんどん削っているように見受けます。どんどん左に向かって、何でも反対、何でも左翼アジェンダ。個別の選挙では勝つ事ができても、地盤が弱くなれば勝つ選挙の数はどんどん減っていきます。<<

Oh, do you think so that? Let me show you this report.
http://www.pensitoreview.com/2005/08/17/poll-buyers-remorse/

舎さん、

あるべき政治が生まれるまで、何度でも繰り替えすしかありません。

民主党には、アジア外交を立て直す必要性を粘り強く国民に訴えていって欲しいが、前原だと対米追従寄りなんでちょっと無理かもしれない。

対米従属ですか。それはよろしくないですね。
アメリカとの従属関係をいかに変えていくか、つまり、吉田茂がひいた戦後日本の(従属的なものにならざる得なかった)対米関係をいかに変えていくかということは、民主党がどうこうとか自民党がどうこうとか言ったこと以上の、この国の抜本的な課題です。

>アジア外交を立て直す
>対米従属ですか。それはよろしくないですね

皆さん、ヨーロッパを忘れていないでしょうか?アジアは日本とは全く異質の世界で、ハンチントンも両者を別の文明圏に分けています。またアジアとの関係に深入りすると対米関係を冷却化させる危険もあります。韓国が格好の例です。ヨーロッパはアメリカ、日本とともに世界の民主化をリードする立場にあります。

ちなみにどの党も対欧関係には触れていませんでした。アジアを過大評価するのは疑問です。

本題の民主党について。
新党首にはトニー・ブレアの成功例から以下を学んで欲しいです。
1)アメリカとヨーロッパの信頼を得ること
今回の自民圧勝では、アメリカが日米同盟の安定を歓迎したということです。民主党になっても日米同盟は強固であるとと示しておく必要あり。ブレアがニュー・レイバーのもとでは対米、対欧関係を強固にするとアピールしたのはよく知られています。
2)「若さ」以外のアピールを
ブレアが指導者として信頼を得たのは若かったからではなく、労働党を立て直し、イギリスを活性化させるビジョンと手腕をアピールできたからです。前原の場合、若さが過剰に取り上げられるのが気がかりです。

真魚さん、マイクさん、ヨーロッパからも学べるものを見つけましょう。もちろん、アジアその他の国にも民主党再生に向けて学べるネタはあるでしょう。

舎さん、

舎さんの言われるヨーロッパとはイギリスのことでしょうか。フランス・ドイツはイギリスとは違うスタンスです。またEUとイギリスの間にも溝があります。イギリスについて言えば、国民はブレアの対米関係に反対しています。イラク戦争の前に、ロンドンでは大規模な反戦デモがありました。最近の地下鉄爆破事件についても、イラクでのイギリス軍の被害についても、これほどのことをしてまでアメリカについていくことはないと国民は感じています。ブレアはイラクから軍を撤退せざる得なくなるのではないでしょうか。

ヨーロッパとはイギリスにもフランスにもドイツにも限定はしていません。ここでヨーロッパに言及したのは、民主党再生のヒントはヨーロッパにもあるという例を挙げてみたまでです。

フランスとドイツについてですが、NATOもEUも東方、北方に拡大している現在、もはやド・ゴールとアデナウアーの時代のように独仏枢軸がヨーロッパのリーダーシップをとれるとは思えません。シラクとシュレーダーはそうした時代の流れについて行けなくなっています。

イギリスで反戦運動があるからといって、簡単にイラクから撤退すれば大西洋同盟、中東、グローバルな自国の地位を考えればどうなるか?。特に、現在の対イラン核兵器交渉でEU3が窓口になれるのはイギリスの対米協力があればこそです。アメリカの了承がなくてEU3がイランと交渉するのは難しいでしょう。

NATO、EUの拡大は自分のブログ記事でも取り上げたいテーマです。ラムスフェルド発言はやり過ぎですが、ヨーロッパは日々新しくなっています。トルコが加盟すればもっと変わってくるでしょう。

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