民主党の新しい代表になった前原誠司氏のウェブにある「前原誠司の基本姿勢」を読んでみた。
新生民主党は「闘う政党」になるとのことである。「闘う」というのは、何に対して「闘う」のであるか。もちろん、小泉自民党と闘うのであり、現状の民主党の前に立ちはだかる様々な障害と闘うのであろう。しかしながら、この「闘う政党」というスローガンを見ただけで、ナニカチガウとゆーか、あーこれまでの民主党と同じだと思った。国民は別に「闘う政党」というものを求めているわけではないと思うのであるが。
「自民党型旧来政治を打破すること」と書いてあるが、そもそも自民党型旧来政治は、小泉純一郎によって打破されてしまったのであって、むしろアフター・コイズミの状況をいかに捉えるかが必要なのだと思う。「国民の誇りと自信を取り戻し、国民一人一人の多様な幸せを実現できる社会。」と書いてあるが、これはなんか自民党が書きそうなスローガンだけど、民主党もこういうことを言うんだなあと思った。もちろん、悪いことではない。
ただ、今の有権者の中には、民主党はなにか中国・韓国とつながっているのではないかというイメージがあって、それが民主党を今ひとつ信用できない要因になっている。こうしたネガティブなイメージは、きっぱりと打ち消す必要がある。「国民の誇りと自信を取り戻し云々」と言う前に、新しい民主党は中国・韓国をどう考えるのか。靖国神社参拝をどう考えているのか、愛国心というものをどう考えるかといったこともきちんと明確にすることが重要であろう。ささいなことかもしれないが、そうしたささいなことを有権者は気にするものだ。
ようするに、民主党のナニが悪いのか。それを徹底的に国民から聞くということが必要であろう。民主党は、労働組合や各種業界のための政党ではなく、国民のための政党であることをまず全面に大きく打ち出すべきだ。とにかく、なりふりかまわず党の問題点をたたき出し、それをひとつひとつ解決していくことが必要であろう。民主党以外の外部のコンサルティング企業も活用すべきだ。これら手法は、企業の組織改革や体制改革で行なっていることであって、政党も企業も変わりはない。民間の技術、民間のノウハウを導入すべきなのは、役所や官庁である前に政党自身なのである。今必要なのは、政党の民営化なのだ。いっそのこと、新しいスローガンは「民主党を民営化します」であってもいいと思う。党の人事も収支決済も透明化するであろう。今回の選挙で、議員の数が減ったのは余剰人員の削減だったと思えばよい。あやうく菅直人が代表になりかけたが、それも避けることができた。今が民主党の変革のチャンスだ。党の代表が40代なのだから、30代を中心とした民主党改革プロジェクトを発足することができるのではないか。
今回の選挙では、自民党はアメリカのBBDOという調査会社を使っていたようであるが、民主党もアメリカの調査会社や政治コンサルタントを雇うことをしてもよいと思う。党員以外の外部スタッフを幅広く活用すべきだ。特に、メディア対応の専門スタッフは絶対に必要だ。さらに演説原稿を書くスピーチライターも必要だ。政治とは言葉である。政治家とは、言葉で人を動かす人なのだ。だからこそ、世界の政治には名文や名演説がある。日本では、政治の言葉が貧しいものになっている。まずは言葉から、しっかりとしたものにしなくてはならない。
「インターネット、 IT を駆使して国民とつながる 」については言うまでもなく進めて欲しい。ウェブやブログを使っての情報発信は当然のことだ。政治でネットを使うことができない公職選挙法は即刻改正すべきだ。メディア専門の部門を作り、インターネットでのテレビ局やネットラジオ局をオープンして欲しい(Podcasting対応にしてね)。それらのメディア局は、民主党のちょうちん持ち番組ではなく、むしろ民主党批判もOKにして、広くオープンに日本の政治、世界の政治を扱うものであって欲しい。自民党議員にも出演してもらって、語ってもらうのもいいだろう。そもそも、そうしたことは本来はマスコミの仕事であるのだが、今の大手マスコミは国民の側には立っていないので、それならば自分でメディアを作るしかない。
それらのメディアを通して、年金はとうの昔に破綻しているから、国の年金をあてにしない人生計画が必要だとか、国債は紙くずになるかもしれない。日本の銀行の預金金利がこれほど低いのはなぜか。株価が下がっても、大多数の日本人は株を資産の中に入れているわけではないので全然困らない。教育は崩壊している。それでいて教育費が異常に高い。アメリカへの過度の依存関係は危険である。小選挙区制には問題がある等々、伝えるべき真実は山のようにある。
そして国民の側も、民主党を育てるという意識が必要だと思う。なにしろ、戦後60年間、(その間自民党ではない時期もあったけど)事実上自民党の独占政権体制であったのだ。一度も与党になったことがない民主党に、多少の至らぬ点があるのは当然ではないだろうか。自民党は支持しないが、民主党では不安だ、だから自民党に投票しましたというのではなく、「不安な民主党」を「不安ではない民主党」にしなくてはならない。それをやるのは民主党の側なんだから、有権者たる国民はそれをただ黙って待っているだけでいいというわけではない。そんなことでは、100年たっても民主党は万年野党のままであろう。
民主党を育てるのは、なにも民主党のためにやるわけではない。我々国民は、国民・生活者を中心としたマジョリティのための政党を、本気で持つ気があるのかということだ。あるのだったら、若干の不安がある民主党を優れた政党に育て挙げ、将来の政権与党にしていくしかない。我々国民の生活のために、国民の側に立ち、国政を任せることできる政党が必要なのである。そのために、民主党は民間企業の組織改革の手法を導入し、民主党に投票した支持者がオーナーである政策立案運営組織のような政党になるべきだと思う。新しい党首は、こうした柔軟な発想を持った人であって欲しい。
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