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May 05, 2005

『Samurai7』はイイ

 過去見てきたアニメの中でベストを挙げよと言われたら、『serial experiments lain』『新世紀エヴァンゲリオン』『ご先祖様万々歳』『機動戦士Zガンダム』『ターンエーガンダム』『攻殻機動隊』『人狼』『機動警察パトレイバー2』『LAST EXILE』『プラネテス』等々と挙げることができるが、『プラネテス』のDVDの最終巻を見た後で、もはや気になるアニメがずーとなかった。

 いや、ずーとなかったというとウソになるな。実は、『ウィッチハンターロビン』の第1巻を見たら、これイイじゃんということで、そのまま、ずるずると全巻をレンタルで見てしまった。『ウィッチハンターロビン』は、全編に漂うゴシック的なダークさと、スタイリッシ感覚のある映像、ヒロインの瀬名ロビンのモノトーンのしゃべり方がなかなかよくて(いえ、こうしたゴスファッションで、あまり笑わなくて、ボソッとしたしゃべりしかしない子が個人的に好きというわけではないけれど・・・・)、音楽も良かった。物語的には、最初は『Xファイル』のような感じであったのだが、後半は話がなんかいまひとつまとまりに欠けた感じだった。最後まで、ハイクオリティーを維持して欲しかったと思う。それをやるのは大変だということはよくわかっているけど、TV版の『攻殻機動隊』はそこを見事にクリアしていた。

 『ウィッチハンターロビン』を全話見終わった後、もういいアニメはないのかと思って、深夜のTSUTAYAのアニメコーナーをいい歳をしたオジサンがゴソゴソと物色していたら(不気味だ・・・)、なんかよさげなアニメあったではないか。タイトルは『Samurai7』。解説を読むと、黒澤明監督のあの『7人の侍』のリメイクだという(そのまんまのタイトルだよな)。しかも、だ。制作はあの『LAST EXILE』を作ったGONZOである。これはなんか、すごくいいかもと思い、さっそくDVDの第1巻を見てみた。やっぱりイイ。この作品はイイ。

 というわけで、GONZOの去年TV放送されたアニメ作品『Samurai7』を今見ている。発売しているDVDは現在のところ第8巻までで、レンタルでは7巻まで出ている。舞台は、日本の時代劇であった原作とは異なり、遠い未来の架空の惑星の架空の時代という設定で、「侍」はメカロボットやサイボーグになっている者もいる。長い戦乱が終結した時代の中で、農民から米を強奪する悪い「侍」(「野伏(のぶ)せり」)がいて、そうした「野伏せり」を倒すために、農民は腕の立つ侍を探し、村を守ってもらおうとする。その農民の願いに応えるのが、カンベイたち7人の侍なのであった。

 と、ここまでは原作の黒澤監督の『7人の侍』を忠実にリメイクしているのが、違う部分も当然あって、キララやコマチといった日本アニメ定番の萌え女の子キャラも出てきて、このへんジューブン楽しめる(楽しめるって、なにを・・・)。黒澤御大も、こうした萌えキャラまでは作れなかったであろう。こうして物語は、最初は黒澤監督の映画とほぼ同じなのであるが、途中からさらに大きく展開していく。『攻殻機動隊』も終わってしまった今、こうして毎月の新作DVDが出るのを待つアニメはひさしぶりだ。

 さて、こうなると原作の映画がもう一度見たくなり、さっそく黒澤監督の『7人の侍』をまた見てみた。もう何度も見ているのだけれど、いい映画は何度見てもいい。

 改めて見てみると、三船敏郎が演じる豪快な菊千代は、実に重要なキャラクターであったことがわかる。三船敏郎は赤ひげ先生や椿三十郎の渋くて寡黙なイメージが強いが、このはしゃぎまくり騒ぎまくる、とにかく自由奔放な百姓上がりのサムライ(?)の菊千代を見るたびに、この役者は本当にいい役者だったと思う。菊千代がいるおかげで、この映画の幅と奥行きが広がっている。志村喬の勘兵衛もいい。武術に優れているだけではなく、人格を磨き、高い知性を持ち、人心を統率できる本当の侍の鏡のような人。加東大介、千秋実もいい。宮口精二の演じる居合いの剣客の久蔵はホントかっこいい。

 今の日本では、こうした映画はできないだろうなあと思う。監督もそうだが、こうしたいい役者はもういないよなあ。もはやアニメでしか、この映画はリメイクできないのだなと思う。農民を愚かで醜い者たちとして描いているが、最後のシーンで勘兵衛が言う「勝ったのは俺たちではなく百姓だ」というセリフが深い。『Samurai7』では、このシーンをどう表現するのか楽しみだ。何度見ても思うが、この映画は本当にいい。監督もすごいが役者も良かった。昔の日本映画は良かった。

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Comments

映画と歴史認識?

私はそれほど映画通ではありませんが、最近のもので興味深いのは「アレクサンダー」と「キング・アーサー」。どちらも時代考証はよくなされていたと思いますが、「自由のための戦い」という語には違和感。古代マケドニア人やケルト人にこうした発想があったか?いかにも「アメリカ映画」ですね。

ところで私の英語ブログは何とかできました。URLはhttp://newglobal-america.blogspot.comです。まだ私のHPとはリンクしていません。しばらくはBBデュオ(ブレアとボルトン)について書くつもりです。

ちなみに私のハンドル・ネームの舎亜歴はShah Alexander、すなわち上記の映画よりとったものです。

こんにちわ
ハイテンションの菊千代、あの時代にこういう演技をする人がいたこと、またそういう演出があったことを知って私はとても驚きました。リアルタイムで見たのではなく、テレビで見ました。
そういえば、「悪名」の貞やん(だったか清次だったか)役の田宮二郎も軽佻浮薄なチンピラを威勢の良い河内弁で演じたのをカッコ良いなあと見とれたものでした。定着したイメージの冷静沈着な二枚目とはまったく違う役柄です。
最近でもいわゆる二枚目がそういう軽い役を演じるのをみかけますが、源流は三船や田宮なのかもしれません。
昔の日本映画って良かったですねェ・・ってそれほど見てるわけじゃありませんが。

舎さん、

私はまだ「アレキサンダー」も「キング・アーサー」も見ていません。「アレキサンダー」はギリシャでは評判が悪かったそうですね。

「自由のための戦い」というのは、やはりアメリカの独立革命とフランスのフランス革命の産物ですね。ただし、例えば、アメリカ大陸の原住民にとって「自由のための戦い」になるのか、パスク人にとってフランス革命とは「自由のための戦い」であったのか。真に民族や国民の自由を掲げるのならば、それはもはや「人種」や「民族」や「国家」というカテゴリーを使わないということだと思います。

robitaさん、

僕も「7人の侍」の菊千代を初めて見た時は、これがあの三船敏郎かと思いました。「世界のミフネ」のイメージって決まっているではないですか。それが、ここまでやるのかという演技をしていましたよね。

調べてみますと、もともと昭和22年に映画デビューして、「7人の侍」は昭和29年なのですけど、結構この人は若い頃はああした感じの役者さんだったんですね。今の我々が「7人の侍」の前の三船というと、せいぜい「野良犬」か「羅生門」ぐらいで、「7人の侍」の後というと「隠し砦の三悪人」ぐらいしかあまり知らない人が多いから勝手にそう思っているだけなんだと思います。きっと昭和20年代から映画を見てきた人なら、むしろ寡黙で重厚な三船敏郎こそ、三船敏郎らしくないと思っているかもしれません。まあ、年相応に渋くなっていったという感じですね。

田宮二郎のチンピラは、確か僕もなにかで見ました。この人は関西(京都だったかな)の人なので関西弁が旨いですよね(あたりまえか)。ちなみに、国立浪速大学は関西の大学で、財前教授は自宅で奥さんと会話する時は関西弁になるのが原作の小説でもそうなのですけど、東京人の唐沢財前はこれができなかったですね。

二枚目役者でコミカルな演技もできるのは、今の役者だと阿部寛がいいですね。

 はじめまして、私も三船敏郎さんに興味を持つひとりです。
 あれほど国際的にも有名な俳優さんは日本でも数少ないですね。
そんな三船さんは、大スターであっても機材運びを手伝ったり、気さくな方だったようです。
 私も三船さんの記事をブログで書いてみました、よかったら遊びにいらして下さいね~、ではまた!

ルーシーさん、はじめまして。

三船敏郎はいいですよねえ。寡黙で落ち着いていて、かと思えば素早い剣さばきを見せるというのが三船敏郎のイメージだったのですが、「7人の侍」の菊千代でイメージが変わりました。で、初期の頃の他の作品も見てみると、この人はこうしたカルイというか活発な人だったんですねえ。それを知ると、晩年の落ちいたキャラクターがさらに深く感じるようになりました。

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