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May 24, 2005

仕事というもの その1

 このところ、連日、仕事をさせられまくりの状態になっている。「させられまくり」というのも、へんなコトバであるが、毎日午前0時近くに帰宅することや、土曜も日曜も仕事をして、自宅に帰るともはや疲れ果ててなにもする気もなくなるというのは、決して自分が望んでそうなっているわけではない。しかしながら、世の中には「自分がそう望んだわけではない」ことに、なぜだか知らんが関与せざる得なくなることがある。さらに、これも「自分がそう望んだわけではない」のに、社会的責任というものを負わせられる。ちなみに、そのことを考えれば、例えばJR西日本に向かって、さも自分たちが正義であり無誤であるかのような態度をとるマネは自分にはできない。多かれ少なかれ、自分もああした間違いをするかもしれないという気分が自分にはある。

 解剖学者の養老孟司先生がどこかで書いていたことであるが、養老先生の職業は解剖学である。言ってみれば、死体を切り刻む職業である。死体を切り刻むということが、「自分に合った仕事」と思っている解剖学者はまずいないであろうと書かれていた。つまり、自分らしい職業を探すというのは、この世に自分らしい職業があるはずだということが前提になっているが、「自分に合った仕事」というものはないのである。そもそも仕事とは、社会のなんらかの需要に対する供給なのであり、それは「自分らしい」とか「自分らしくない」とかいうこととは別次元のことなのだ。仕事では、他人の理不尽に振り回されることもあれば、不本意なことをやらなくてはならないこともある。これほど高度に管理化された今の社会では、仕事を通しての「本当の自分」や「自分の個性」というものは存在しない。かつ、存在させなくてはならないものでもない。

 しかしながら、じゃあ、どんな仕事でもいいのかというと、人には向き不向きがあると思うので、そういうわけにもいかないであろう。それに組織の中の仕事とはいえ、程度の問題として個としての選択や判断はある。しかしながら、それもあくまでも「程度の問題」であって、基本的には仕事というものは、他者の要求に対する対応であり、自分の好きなことを好きなようにやるわけにはいかないものなのだという意識が根底にあって、その上で、なおかつ「自分らしさ」や自分の向き不向きがあると考えるのが妥当なのではないか。もちろん、だからと言って無理をする必要はないが、まったく無理をしないで、この世の中を生きていくことができるのは、働く必要がない資産家か公務員ぐらいではないか。このへんも程度の問題であろう。(補足:5/24にkakuさんより、この部分の文章は、公務員に失礼であろうとのご指摘があった。確かに公務員と言ってしまうと、警察官や自衛官も含まれるので、失礼と言えば失礼であろう。まことに、ごもっともなので「公務員」という箇所はないものと思って頂きたい。公務員さん、ごめんなさい。)

 昨今の「自分らしさ」とか「個性」とか(だけ)にこだわる若者たちを見ると、自分も昔はああだったかなあと思い、そうした思考の設定そのものに誤りがあるんよと言いたくなるのである。

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Comments

真魚さん、

>まったく無理をしないで、この世の中を生きていくことができるのは、働く必要がない資産家か公務員ぐらいではないか。

これは余りに失礼ですよ。バイアスかかり過ぎ。この世の中、「楽して稼ぎ“続ける”ことの出来る職は無し」…これを伝えるのがオトナの責務ではありませんかっ!喝!

それはそーとお体気をつけなくてはイケマセンぞ。糖分/炭水化物ばかり取ると太りますぞ。もうそういうお年頃なんだぞ。

小姑より

真魚さん、こんにちわ。
相当にお疲れ様のようですね。

>基本的には仕事というものは、他者の要求に対する対応であり、自分の好きなことを好きなようにやるわけにはいかないものなのだという意識が根底にあって<

そうですね、まずこれがあるのが厄介です。

そこで、わたしも定番の夢想に、○○億(一桁じゃたりない)の資産家になったらわたしはどうしたいのか、があります。でも、なんのきっかけもないところで、全てを自由に創出するっていうのは、かなり能力が必要で、そんなのあったら今頃とっくにもっと別の人生送ってるよ!と自分突っ込みをして果てます。

少なくとも、与えられた要求や今おかれている条件を、冷蔵庫の材料だと考えて、どうせ食べるならどんな美味しいものに変えようかなって思えるぐらいの余裕は欲しいですよね。
そうじゃないと、かえって効率が悪いものです。


kakuさん、

お気遣い、ありがとうございます。
しかし、もう手遅れです(笑)。十分体重過剰になっています。アメリカに行けば、平均体型と見られるから、まっいっかーとか思っていますが。うーむ、いくないですね。まず、毎晩アイスを食べていることをやめねば・・・・と、言いつつ、今日も会社帰りにコンビニでアイスを買ってきて食べたワタシ(中学生か!)・・・。

珍獣さん、こんばんわ。

このところ、少しラクになってきました。
巨額の資産ができたら、外国の銀行に預けて金利で暮らしたいですね。でも、それこそ夢ですよ。啄木の歌を思いながら、ぢっと手を見ています(笑)。

冷蔵庫の材料であると共に、クローゼットの洋服でしょうか。他者の視線(社会の要求)を意識しつつ、逆にそれを楽しむ感覚です。でも、そうなるにはそれなりのゆとりが必要ですね。忙中閑あり、でありたいと思っています。

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