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April 28, 2005

日中不和は子供のケンカ

 中国の王毅駐日大使は、自民党の外交調査会で講演し、靖国神社参拝について「紳士協定」が日中両政府間にあったという。それは、首相、外相、官房長官の3人は靖国神社に参拝しないというものであったようだ。

 これが事実あったのか、どうかはわからないが、中国が「日本は戦争の反省をしていない」というのは、ようするにこの「紳士協定」を日本が破っているからである。だから日本人は反省をしていないのだと判断している、とでも言うのだろうか。じゃあ、日本国の首相、外相、官房長官の3人が靖国神社を参拝しなければ、それでいいんですね、それが「日本は反省している」という証明になるんですね、と言いたくなるのであるが。

 いや、本気で中国政府はそう考えているのだというのならば、なんかもうワタシは激しく脱力するんですけど・・・・・。国家間の取り決めで、口頭での「紳士協定」ってなに?こんな内容のことで、日中間の不和があり、あの反日暴動があった(つーか、これからも続くと思われる)のだろうか。

 日本の役人は問題アリの人々であるが、中国の役人もまた、それに一層輪をかけて問題アリの人たちであるように思えてならない。考えてみよう。日中の間で誠実に商売をしたり仕事をしたり、あるいは日本に留学をして勉強をしていたりしている中国の人々にとって、本当に迷惑な国はどこの国なのか。

 一方、町村外相は、インドネシアで行われた日中首脳会談を受け、反日色が強いとされる中国の歴史教科書について、政府として実態を調査した上で中国側に改善を申し入れる意向を明らかにしたという。日本と中国が共同で歴史認識を持つことができるように、共同の教科書を作ることを中国政府に申し入れた、じゃあなくて、中国の教科書を日本もきびしくチェックし、文句をつけるべきところは、中国に文句をつけようというのである。他人の国の教科書にイチャモンを言うことは、内政干渉ではなかったのだろうか。不毛の論争になることがわかりきっていることを、あえてやろうというその意味はなんなのか。

 もはや日中の政府は、お互いに子供のケンカのレベルになってきたと言えよう。

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Comments

常々思っていたのですが、アジア諸国が日本の植民地支配を批判する際には全世界史的視野が欠けているのが残念でなりません。自国の被害者意識ばかりを強調する彼らも彼らなら、受けて立つ日本も感情的に反論の繰り返し。

互いに検定し合ったところで、どんな「歴史認識」となるやら。戦争被害も植民地支配も日本との二国間だけで理解するのは無理だとだけ言いたいですね。

あの悪名高きロバート・ムガベでさえ、イギリスの植民地支配にここまで言わないのだが・・・・。

はっきりいって、アジア諸国の外交は、欧米に比べて「稚拙」なところがあります。このへん、ヨーロッパのようなウェストファリア条約以後の近代国家による近代世界システムを形成してきたわけではないということが言えると思います。

チャーチルは、インドで反乱が起きた時に毒ガスの使用を検討したそうです。イギリス人は、インド人など人間とは思っていかなかったわけです。世界史において、大英帝国のインド統治こそ、日本の満州国建国以上の大きな出来事であったわけですが、イギリスとインドで「過去の植民地について云々」という話が外交上の課題になったということはなかったように思います。

どうして日本とアジア諸国は子供のけんかになるのか?欧米人のように普遍的な立場から自己の正当性を主張するという考え方ができていないのも大きな要因でしょう。「民族感情」を根拠にするアジア側も、この時期に当てつけのごとく与野党を挙げて集団で靖国参拝をする日本側も問題あり。

「普遍性」の観点から言えば、日本のファシズムは徹底的に批判されるべきですが、それ以上の「歴史認識」を追及してどうなるのか?

某超大国なら「膨張的なパワー志向と原理的理想主義、プラグマチックな国益追求と高邁な理念の自己主張が独特の仕方で結びつく、そのあり方」で対処するだろうにと思ってしまいます。本当に双方とも稚拙です。

もう一つ、戦後の日本が集団安全保障体制に入らなかったのは大きなマイナスとなったように思えてなりません。ドイツはNATO、EC(現EU)に加盟し、多国間の組織で戦後のスタートをきりました。「謝罪」よりもこちらの方がずっと大きな意味を持つと思います。

日本も韓国、フィリピン、オーストラリアなどとともに集団安全保障体制に入っていれば、アジアでの反日感情をいつまでも引きづらなかったのではと思えてきます。

そうなると、真魚さんが幾度か言及された吉田・ダレス間の合意を再検討する必要もあるかも知れません、

今の憲法問題、安保問題を考える上で吉田茂が行ったことを顧みることが必要であると私が考えるようになったのは、片岡鉄哉の『日本永久占領』(講談社プラスアルファ文庫)を読んでからです。片岡先生は、シカゴ大学でハンス・モーゲンソーの指導を受けて博士号を取っています。この本は、ウッドロー・ウィルソン・センターでの研究の業績として発表されたものです。結局、今の日本の経済的停滞は、経済の歪みが原因ではありますが、根本的原因は政治的な歪みが原因です。その歪みを作ったのは、マッカーサーとダレスと吉田茂にあったというわけです。今、憲法について考える時、まずこの吉田茂の行ったこと、その功罪をしっかりと理解してから考える必要があると私は思います。こうしたことを言っているのは、この片岡先生ぐらいです。他の日本人の国際関係の学者は、なぜかこのことを明確にしません。

そして、あの時代のことを理解すればするほど、吉田はああしたことをやらざる得なかったということがよくわかります。問題なのは、吉田の後の自民党がなにもしてこなかったということです。今の憲法改正論議を見ても、こうした戦後史の見直しを踏まえて行っているようには見えません。

初めまして。natunohi69さんのブログから飛んでここにきました。
僕は「紳士協定」というのはおそらく自民党の田中派の人たちとはあったんじゃないかと思っているのですが。想像ですが、どうもそうらしいと思えます。
もともとどうしてこうした日中の外交で、表向きのとりきめと裏の「紳士協定」みたいなものとがあるかというと、自民党の中に考え方が違う人たちがいるからではないでしょうか。
つまり、田中派の人たちは親中国派ですが、自民党の中には反中国で、台湾独立を支持している人たちもいるわけでしょう。靖国神社参拝を支持する人たちと台湾独立を支持する人たちが重なっているところもあります。
親中国派の人たちが表でそういうとりきめをすると、反中国派の人たちから攻撃を受けることになります。だから、裏の取り決めのようなことをいろいろ決めてきたということではないでしょうか。
しかし、反中国派の派閥の側から小泉首相のような、かたくなに靖国神社参拝を続けている首相が出てきたので、「紳士協定」があったのではないかという話を中国側は持ち出してきたのではないでしょうか。
小泉政権は、中国側の反発も考慮して田中真紀子氏を外相にそえてバランスをとろうとしたようですが、これも続かなかったようですし。
こうした背景があってのことかと思うので、たしかに前近代的な政治の駆け引きかとは思うけれども、現実的な人間同士の力関係から「紳士協定」のようなものが生まれてきたのではないかと思うのです。

はじめまして。コメントありがとうございます。

この紳士協定については、議員の河野太郎氏がメルマガで書いています。これを読みますと実際にあったのではないかと思います。中国と日本の間でこうしたことがあったというのはわかるのですが、このために結果として反日運動での様々な破壊行為や障害事件があったということを考えると、これは一体なんなのかと思います。

この協定なるものは、実体は「形式」であって、いかにも形式主義的な中国らしい「協定」なのですが、もしかりに日本と中国の国家間はこれでいいとしても、この形式のために、中国の人々のあの騒ぎがあったのかというと、なにかやり切れないものを感じます。誰のための「紳士協定」なのでしょうか。日本の政治家も中国の政治家も国民というファクターが欠落し、自分たちの政治的都合だけで物事を行っているようにしか見えません。おそらく中国政府も、これほど民衆の反日運動が高まるということを予想せずに、日本の靖国神社参拝を批判してきたのだと思います。

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