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March 11, 2005

嫌米ではなく、まず事実を直視しよう

 「日本の自衛隊は軍隊なのに、なぜ他国の軍隊に警護を頼るのか」、イラクのサマワで7日に行われた英軍、オランダ軍、自衛隊の共同記者会見で、オーストラリアのメディアが太田清彦・第5次イラク復興派遣支援群長に質問をしたという。これはまったく当然の質問であって、オーストラリアのメディアであろうと、どの国のメディアであろうと疑問に思うのは当然である。唯一疑問に思わないのは、日本のメディアぐらいであろう。

 さて、この質問に対して、自分ならばどう解答するか考えてみた。考えるもなにも、真実を言うしかないであろう。

「えー、自衛隊は軍隊ではありません。かつて、総理大臣吉田茂はそう申しました。我が国の憲法では、戦力を放棄しております。では、アレはなんであるのか。半世紀前、そもそも日本の軍事力を解体したアメリカが、アジアの共産主義陣営に対抗するために、態度をコロッと変えて日本に再軍備化を求めました。アレは、GHQの指令により日本政府が創設した警察予備隊であります。保安隊と呼んでいる時期もありました。現在の日本では、自衛隊と呼んでおります。しかしながら、なんと呼ぼうと、その実体はGHQの指示で無理矢理作らされた警察予備隊であります。
 この元警察予備隊なるものが、今日、サマワにいるのは、日本国および日本国民の総意ではありません。アメリカの手前、行かざる得ないがために行っております。復興支援ならば、こんな軍隊、じゃあなかった元警察予備隊が行くよりも、民間企業やNGOが行うのが一番いいわけですが、アメリカ様が行けというから行っている次第であります。日本政府は、アメリカの意向にはとにかく従う。それ以外のいかなる目的もありません。それが最終的に、我が国の国益になると考えております。」

 そんなことはない。日本は独立した国家である、アメリカの言いなりになっているわけではない、と思うかも知れない。しかしながら、米国牛肉の輸入を再開せよという催促の電話をかけてくるということひとつを見ても、あの国がこの国をどう見ているか明白であろう。そして、そう見られるもなにも、実際の日本はアメリカの属国なのだから、しかたがない。

 では、どうしたらいいのか。アメリカはケシカラン。在日米軍なんか撤去させて、憲法を改正し、日本独自の本当の国軍を作るべきだ、と思ったとしても、今の軍事技術は米軍の存在なくして成り立たない。国の安全保障だけではなく、科学も経済もなにもかもアメリカの存在なくしてやっていけない。親米派が言う、アメリカにとにかく従っていくことが、日本国の国益になるというセリフには、それなりの説得力はある。そう考えると、吉田茂はやはり戦後史に残る政治家であった。吉田は、国家の国益と安全保障がいかなるものか、アメリカの占領下のあの時代の中で真剣に考え、考えた結論がこうだったのだ。その時代のパラダイムが、今大きく変わろうとしている。

 では、どうしたらいいのか。アメリカに従うことが、日本国の国益だとしても、それはいかなる国益なのか。そもそも、なにをもって日本国の「利益」としているのか。国家としての独立した体面を維持しつつ、世界に開かれた社会であるということはいかなることなのか。すべての話は、ここから始まる。他のいかなる場所からでもない。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

自衛隊派遣を政治的に活用すべし

アメリカに従うことが日本の国益であるなら、それがいかなる国益なのか?これは日本の外交・安全保障にとって根幹となる問題です。

今回のイラク派兵では確かに上記で指摘されたような不十分な点があります。それでも派兵するのは、日本の安全保障のためにはアメリカなどとの関係を強化する必要があるからとしか言えません。では、そうやって緊密にした関係をどのようにして、日本自身のために活用すべきか?

最近の例では、EUの対中武器輸出に歯止めをかけるためにイラク派兵の実績が利用できそうです。まず、アメリカへの協力国として、共に中国の軍拡に脅威を感ずる国として、EUに武器輸出を控えるように影響力を行使できます。
さらにサマワで協調関係にあるイギリスを通じて、中国への武器輸出を見直すように呼びかけることもできるでしょう。
日本がイラクに派兵しなかった場合、どこの国が日本の安全保障のために何かしてくれるでしょうか?

対中武器輸出はこうした「利用」が可能な一例に過ぎません。イラク問題では米英両国にとって自分達が国際社会から支持されている証しが必要となっています。日本の出兵は政治的に必要でしょう。

最後にハンガリーの駐米大使は"The best deal for a small country is when a country like the United State needs us."と述べていました(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン2005年3月4日)。アメリカに「従う」ことの国益がいかなるものか?多いに参考になる一言と思われます。

Posted by: Ross K | March 13, 2005 05:36 PM

コメントありがとうございました。

日本のイラクへの出兵は、政治的に見て必要であることは、その通りだと思うのですが、これを日本政府がイラクの復興支援のためと言っているから話がこじれています。自衛隊がイラクへ行っているのは、アメリカとの関係のためであるということは、もはや誰でもわかっていることです。なにゆえ、それを正面から言うことができないのか不思議です。日本はアメリカとの属国的関係にあるという冷厳な事実がまずあって、ここから、ではなぜそうした関係なのか、そうした関係からもたらされる「国益」とはなにかという認識が必要だと思います。今日のこの路線をひいた吉田茂の欠点は、これを国民不在のままで勝手に決めたということです。しかしながら、当時の状況を考えると、それは当然であったかもしれません。ところが、その「国民にはなにも教えない」ままで、終戦から60年後の今日までそのままであり、まだその路線を変える気はないというのが問題です。

私は、吉田ドクトリンをもっと広く知られるようにして、国民的な共通認識にする必要がまずあると思います。アメリカと関係を持つことで、日本及び日本人はいかなる利益と不利益を得てきたのか、そのバランスシートをここで明確にすべきだと思います。その上で、今後もアメリカとのこの関係を維持し続けていくのか、日米関係をやめるのかをはっきりさせるべきです。

続けるのならな、国の政策として我々は日米関係をもっと前向きに捉え、この政策に誇りを持つべきだと思います。ご指摘のように、これをいかにさらに日本国の国益に応用していくかを考える。日米関係をやめるという判断をするのならば、それでは国家の安全保障をどうするのか。これらは、ある意味で工学のような論理的な議論であって、嫌米とか親米とかいった感情論の議論ではありません。ところがマスコミはここまでドライな見解はせず、国民感情としてアメリカへのコンプレックスが残るだけになっています。

アメリカに「従う」ということは、アメリカが「必要としている」ということの裏返しなのですね。そうさせるのが外交的手腕なのだろうと思います。そう考えば、むしろ、日本は中途半端に軍事化するよりも、日米安保を今後も存続させ、外交交渉で影響力を及ぼす国になりうる可能性もあります。外交カードとして、憲法第9条を使う手段も可能性もあると思います。吉田総理はアレン・ダレスとそうやって戦ったわけですし。結局、戦後60年間、自衛隊と憲法第9条を外交カードとして使用できたのは吉田茂ただ一人だったと言えると思います。

Posted by: 真魚 | March 15, 2005 12:59 AM

中国か日本か

アメリカとの関係を考えるうえでもっと冷徹な論点を挙げると、日本と中国のどちらがアメリカの最重要パートナーであるべきかということになります。閲覧者の皆様も承知の通り、米中間では台湾、チベット、香港、人権、などなど対立している問題は数多くあります。一方でテロとの戦いでは中国はアメリカにとって貴重な同盟国でもあり、有望な市場でもあります。

この中国がアメリカの最重要パートナーとして浮上してくる事態は、日本にとって悪夢です。クリントン政権下で言われたJapan passingなるものを許しては、アジアそして全世界で日本の国益を反映させることは非常に難しくなります。

よって日本こそアジア太平洋地域でアメリカの最重要パートナーにふさわしいことを常に訴え続ける必要があります。上記の問題を抱える中国よりも、日本の方がアメリカの推進する世界の民主化でのパートナーにふさわしいでしょう。またハワイからケープタウンまで及ぶ米軍の活動を支援できる戦略拠点を提供できるのは日本だけです。

こうした日本の利点をもっと強調せよと言うのは、最近になってIHT紙でhttp://www.iht.com/articles/2005/03/16/opinion/edxue.htmlとういう論文を目にしたからです。この論文では、アメリカが日本と組んで台湾問題に対処すれば、民主主義を守るという大義が損なわれると主張しています。このような考え方が広まれば日本にとって由々しき事態です。ちなみに、橋本首相が口を滑らせた「米国債の売買」など挑発的な発言では日本の価値を強調するには逆効果でしょう。

だからこそアメリカに「従う」かどうかよりも、いかにしてアメリカを日本に引きつけておくか知恵を絞らねばならないと思っています。アメリカとの特別関係を外交上の強みとしているイギリスがどれほど労力を注いでいるか?これこそ見習わねばならないでしょう。

最後に、憲法9条と平和外交については私は別の考えですが、これはまたの機会にしたいと思います。


Posted by: 舎 亜歴 | March 20, 2005 03:21 PM

私は、アメリカは中国と手を組まないと思います。ニクソンが中国へ行ったのは、ソ連という共通の敵がいたからです。ソ連亡き今、中国はアメリカと思想的に合う国ではありません。

IHTのarticleを私も読んでみましたが、日本の対する反感と中国への過剰な期待感しか感じられませんでした。"After all, anti-American sentiment in China is shallow. Many Chinese people continue to admire America and they also realize that China needs the United States to maintain a stable international order. "とは私はそうは思いません。中国の民衆の国際感覚はかなり問題があります。このarticleは、意図的にアメリカの読者に受け容れやすいように書いていると感じます。最後の"Now the security umbrella may seem partly obsolete. "はなぜそうなのか、このarticleでは理解できません。日本が中国への戦争の贖罪をしていないのはアメリカの"the moral umbrella"があるからだという意見には、何を言っているのかわかりませんでした。この程度のarticleでは、アメリカの知識人には影響は与えることはできないですね。

むしろ、アメリカが恐れるのは日本が中国と結びつくことです。日本にとって、日中関係は対アメリカ関係にならざる得ません。これは別の機会に書きます。

Japan passingは、政治的というより経済的なものですね。いくつかの国際企業は、東京よりも香港やシンガポールや上海に拠点を置くようになっています。グローバルなビジネスの現場では、もはやJapanはあるひとつの「場所」であって、魅力ある「拠点」ではなくなっています。

Posted by: 真魚 | March 21, 2005 11:46 PM

失礼とは思いながらも、この記事にコメントとトラックバックをつけてしまいました。
これからも記事を書く上で参考にさせていただこうと思いますのでよろしくお願いします。

Posted by: stanfield | April 16, 2005 03:36 AM

はじめまして
たいへんわかりやすい記述なので、TBならびにリンクをはらせていただきました。お許し下さい。

Posted by: princip | May 03, 2005 09:27 AM

はじめまして

どうぞ、お気軽るリンクをお張り下さい。

自衛隊の問題は、憲法問題であるというよりも対米問題であると私は考えます。自衛隊のこととなると、政府は常に超法規的対応をとります。つまり、そもそも憲法というものに何が書いてあろうと、その場その場でのアメリカへの政治的判断でやっているのが日本の政治です。これは純然たる立憲国家ではありません。憲法の中身をどうするのかということの以前に、そもそも憲法を守る意思があるのか、ないのかを問うべきだと思います。

Posted by: 真魚 | May 04, 2005 11:39 PM

アメリカへの感情論を言っても仕方がないと言うのは同感です。
しかしよく混同されますが、反米と脱米は違います。
「安全保障はどうしろというのか?」よく出る話題ですが
それと米軍駐留や米隷属をなにも考えず繰り返し、
追従するだけの自民党のポチ政治は全く別だと思います。
アメリカとはある程度共同歩調をとるのも大事でしょう、
しかしアメリカの同盟国はどれも韓国やトルコも、
米隷属ではありません。
絶対に従う事が確定した相手にはどんな扱いでもします。

日本人もそろそろ一度はアメリカに激しく反発してみるのも
手かもしれません。
それに防衛も、結局自分の国の事です。
アメリカが日本を守ったり一緒に戦ったりなど
してくれると言うのは虚構です。
そしてそんな事はロシアも中国も知ってます。
今更抑止にもならない国に一方的に搾取され占領支配を
許し続ける奴隷根性、
まずその意識から変えていくべきでしょう。

Posted by: Syun | April 08, 2009 08:20 PM

アメリカが日本を守ったり一緒に戦ったりなどしてくれると言うのは虚構ではありません。日米安保は日本とアメリカの間で交わされた国際条約です。この条約に従い、アメリカには対日防衛義務があります。

重要なのは、この条約に従い、ということであって、日米安保の範囲内でアメリカには対日防衛義務がある、ということです。アメリカが最後の最後まで完全に日本を守ることは当然のことながらありませんし、だからといって、日本に何が起こっても彼らが守ってくれるわけはない、というわけではありません。何度も申しますが、日米安保の範囲内で、アメリカには対日防衛義務があります。

これは日米安保に限らず、およそ国際的な条約というものは、そういうものなのです。そういうものとして、どこの国でも行っているのです。かつて、明治の日露戦争の時は、日英同盟があり、日英同盟に従って、日英同盟の範囲内で、イギリスは日本に有利になることを数多く行ってくれました。しかしながら、だからといって、イギリス人は日本人のことを好きとかそういうことではなくて、もっとビジネスライクなものです。条約というものは、そういうものなのです。

日米安保があり、アメリカには対日防衛義務があることを、ロシアも中国も知っているから、第二次世界大戦後の米ソ冷戦時代、ソ連も中国も日本に過度の軍事的圧力をかけることができませんでした。彼らもまた常識として、条約というものがどういうものであるかよくわかっています。

上記のことが、いわば「事実」であり、国際的な常識、国際的な知識であり、そう考えれば、アメリカに従属しているとか、独立しなければならないとかいったこと事態が、そもそも非現実的なのです。条約の内容に問題があるのならば、両国間の協議によって変更する、あるいは破棄する等のことを行えばいいのです。アメリカ側は、国際的な条約にともなうことを行っているだけのことなのに、日本側では、なぜかそれが対米従属という意識や構造を生み出すということ、そのことを考えなくてはなりません。

Posted by: 真魚 | April 09, 2009 01:19 AM

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