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September 06, 2004

共和党大会全国党大会でのMiller上院議員のSpeechを読む

 我が論友マイク・ロスの「保守思想」ブログにて、マイクは今回の共和党大会での現民主党上院議員Zell Millerのスピーチを絶賛している。そこで、どれどれと僕も読んでみた。

 読んでみるとこのMillerという老人は右翼かと思わせるような内容である。この人は民主党右派なのか?

 Miller上院議員は言う。
"Democratic leaders see America as an occupier, not a liberator."

 しかし、こんなことは民主党だけでなく、いまや世界の人々がみんなそう思っていることだ。従って、"All of the world except Republicans see America as an occupier, not a liberator."と言うのが正しい。

 Miller上院議員は、さらにこう語る。

Tell that to the one-half of Europe that was freed because Franklin Roosevelt led an army of liberators, not occupiers.

Tell that to the lower half of the Korean Peninsula that is free because Dwight Eisenhower commanded an army of liberators, not occupiers.

Tell that to the half a billion men, women and children who are free today from the Baltics to the Crimea, from Poland to Siberia, because Ronald Reagan rebuilt a military of liberators, not occupiers.

 というように、なぜか日本に触れていない。日本こそ、アメリカによる自由化と民主化の格好のexampleになるのにも関わらずである。なぜか。少なくとも日本の場合は"occupation"という言葉を使っているため、さすがにそこまで間違ったことを言うわけにはいかないと思ったのだろうか。だとしたら、そうまでしてアメリカ軍を"an army of liberators, not occupiers. "にしたいのだろうか。

 しかし、心配のしすぎだ。共和党大会の出席者の中で、日本占領統治の歴史に詳しい人はいないだろう。もしいたのならば、日本のことを知りもしないのに、イラク統治と日本占領を同列に話す人が大統領をやるわけはないだろうから。だから、堂々と"Tell that to the Japanese people that is free because Douglas MacArthur commanded an army of liberators, not occupiers."と言えばよかったのだ。大学でJapan Studyのコースを専攻した人じゃなきゃばれないから。今の時代は、そのJapaneseがこうやってインターネットで、アメリカの共和党全国党大会の演説文章を読むことができるので間違いを指摘してあげられる。あっ、でも、日本はGHQの占領政策が成功して、戦後日本の教育では進駐軍は軍閥政治からの解放者、「ありがとう、マッカーサー元帥様」ということになっている(つーか、中学・高校でまともに日本の現代史の教育を受けた記憶がない)から、日本人に改めてわざわざ言う必要もないか。そーか、だから日本について触れなかったのか。ちなみに、マッカーサーは共和党だった。

 Miller上院議員はさらに語る。

For it has been said so truthfully that it is the soldier, not the reporter, who has given us the freedom of the press.

It is the soldier, not the poet, who has given us freedom of speech. It is the soldier, not the agitator, who has given us the freedom to protest.

It is the soldier who salutes the flag, serves beneath the flag, whose coffin is draped by the flag who gives that protester the freedom to abuse and burn that flag.

 つまり、外国で戦っている兵隊さんのおかげで、オマエラ(抗議デモとやらで道路を塞ぐ迷惑な連中とか、偏向映画を作って世界中で上映しているあのデブとか、新聞や雑誌やネットに甘ったれたことを書くリベラルインテリとか、だ)は報道の自由や表現の自由や抗議する自由や国旗を侮辱したり焼いたりすることができる自由を持っているんだぞ、というわけである。

 ふーむ、なるほど、確かにこれは正しいことを言っているように聞こえる。しかし、なんかおかしい。「兵隊さんのおかげだろ!」と言われると、「その通りです」としか言いようがないのだが、なにかおかしい。ふーむ、something is wrong.

 まず、国防というものがあって、国内の安全が保たれていることは当然のことだ。軍隊は必要だ。それすらも必要ないと言う人も世の中にはいるけど。少なくとも、僕はそうは思わない。

 でも、イラク戦争は「オマエラに自由を与えるためにやっているんだ」と言われると、それはウソだろうと思う。つまり、アメリカ軍の海外派兵や海外侵攻は、アメリカの大企業の資産と権益を守るために行われるものであって、決して「オマエラに自由を与えるため」ではない。ましてや、現地の「自由と民主主義のため」では決してない。こんなことは、今時のカレッジやハイスクールの学生だってわかっていることだ。いや、アメリカ人だけではなく、世界中の人々がウソだと思う。

 しかしながら、では、アメリカはまったくの「大企業の資産と権益を守るため」だけに外国で戦争を行っているのかというと、必ずしもそう言い切れないところがある。別に僕は共和党を弁護するつもりはない。このへんを細かくここでは書かないけれど、アメリカの言う「自由と民主主義のため」という題目もあながち無視はできないことは確かにある。(このことについては、別稿できちんと論じたい。)

 つまり、Miller上院議員はどう言えばよかったのか。こう言えばよかったのだ。"We send an army to overseas, not only the reason of freedom and democracy but in order to maintain the profits of the big business and the national interest of the United States. "「自由と民主主義のため、アーンド、アメリカの大企業の利益と合衆国の国益を守るために軍隊を海外に送るんだ。なんか、文句あっか。」と堂々と真実を言ってくれば(それはそれで問題はあるけど・・・)、「よく言った!」とリベラルも拍手喝采を送るであろう。

 Miller上院議員のスピーチを続けよう。

It is not their patriotism - it is their judgment that has been so sorely lacking. They claimed Carter's pacifism would lead to peace.

 唐突にカーターが出てきたようであるが、"Carter's pacifism"というのはよく聞く言葉。カーター的平和主義と言われてもねえ。ガンジー的平和主義とかジョン・レノン的平和主義と言われないだけまだましだけど。自分たちのポリシーに合わないものは、なんでも"Carter's pacifism"なんだろうねえ。

They claimed Reagan's defense buildup would lead to war.

 相手がゴルバチョフで、ソ連が財政的に軍拡競争についていけずに自己崩壊したからいいようなものだった。レーガンもそれをわかっていてやったのだと思うけど。

And, no pair has been more wrong, more loudly, more often than the two Senators from Massachusetts, Ted Kennedy and John Kerry.

 と、突然ここでなぜかTed Kennedyが出てくる。Miller上院議員はケネディ家になんか恨みでもあるのかな。

 そして、Miller上院議員のSpeechは以下、ジョン・ケリーが兵器の購入に反対したが、その兵器はコレコレの場面でこれだけ役に立ったんだという話が延々と続くのである。

Right now the world just cannot afford an indecisive America. Fainthearted, self-indulgence will put at risk all we care about in this world.

 民主党Miller上院議員が、同じ民主党のケリーがキライなのはここに理由があるらしい。ようするに、ケリーはindecisive(決定的でない, 決着していない、優柔不断な、煮え切らない)で、Fainthearted(いくじのない, 臆病な, 気の弱い.)で、self-indulgence(好き放題、自堕落)なんだと言っている。そんなヤツを国のリーダーとして認めるわけにはいかないと。なんとなく、体育会系が文科系の生徒会長に向かって言うセリフによく似ている。

 どうやらMiller上院議員は、西部劇のヒーロー的人物が大統領に好ましいと思っているようだ。しかしながら、合衆国大統領の決断は、アメリカのみならず、世界に大きな影響を与える。だからこそ、その決断は慎重な上にも慎重でなくてはならないはずだ。それを大統領は単純明快で、即断即行で決断するジョン・ウェインみたいな人物であって欲しいというのはあまりにも子供っぽくないだろうか。

 でもって、最後は、
God Bless this great country and God Bless George W. Bush.
 これはまあ、お決まりフレーズみたいなものだから別にいいけど。

 共和党の全国党大会というのは、いわば身内の集まりであって、共和党である現大統領を褒めちぎる場でしかない。そうした場で、客観的に現政権の政策を批評しても意味はない。だから、「ジョン・ケリーは信用できない。私はブッシュを支持する」とただ何度も何度もしつこく繰り返せばいいのである。それがイカンとは僕は言うつもりはない。お祭りなんだから、身内でお互いがお互いをほめ合いたいのならば、そうすりゃいいだろうと思う。前NY市長のGiulianiなんか、そこまで強者におもねるのかという感じがしたねえ。2008年の大統領選挙の出馬する下心見えまくり。

 よくわからんのが、なにゆえこんな程度の内容のConventionを4日もやるのかなあ。ブッシュとチェイニーが指名を受けて、演説をして、それで終わりにすれば1日で済むと思うのだけど。まー、お祭りみたいなもんだから、しかたがないのかも。

 このMiller上院議員のSpeechについて、リベラル系オンラインマガジンのSalonにこう書いてあった。

From article in Salon:

"America needs to know the facts," Miller said, but he failed to mention a few of them. Miller told the delegates that Kerry voted against production of the F-14 and F-15 fighters and the Apache helicopter, but he didn't say that Dick Cheney, as defense secretary, proposed eliminating both of them, too. Miller criticized Kerry for voting against the B-2 bomber, but he didn't say that President George H.W. Bush also proposed an end to the B-2 bomber program. In his 1992 State of the Union Address, Bush said he supported such cuts "with confidence" based on the recommendations of his Secretary of Defense: Dick Cheney. With the Cold War over, Bush said, failing to cut defense spending would be "insensible to progress."

 ようするに、今の日本の流行のコトバで言うと、Miller上院議員のSpeechは、彼の脳内妄想のSpeechだったようだ。

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Comments

<<And, no pair has been more wrong, more loudly, more often than the two Senators from Massachusetts, Ted Kennedy and John Kerry.

 と、突然ここでなぜかTed Kennedyが出てくる。Miller上院議員はケネディ家になんか恨みでもあるのかな。>>

もっと素直に見ないと。

Ted KennedyとJohn Kerryは上院議員の中で1位、2位のLiberalレーティングを争う二人なんですよね。John Edwardsは4-5位ぐらいかな? 民主党で一番右派のMillerさんから見ればこの二人ほど間違えた事を行っているSenior上院議員はいないのでは? 二人ともマサチューセッツ州の代表でもあるし、派閥から行くと反クリントン派の代表者でもあるんですよね。

なぜアメリカ南部は以前民主党一色に塗られていたのが、今は共和党の基盤。カリフォルニアもシュアちゃんががんばって次回の上院議員はもっていくだろうし。メリーランドでも共和党の州知事が。ハワイでも共和党の州知事が。民主党員じゃないと選挙に勝てなかった場所で民主党がまけてるのですよね。民主党の基盤が偏ってしまった理由をMillerさんはKerry、Kennedyの両氏のアイディアが基点ではないかと疑いを。

共和党の大会を使わないと意見が言えなくなった民主党って見方もできるのでは? 10年後の民主党がどうなっているのかな?

マイク

Posted by: マイク | September 06, 2004 at 11:56 AM

Millerさんが民主党はダメだというのはわかりますよ。Ted KennedyやJohn Kerryではとても民主党は再生しない。Howard Deanが陰謀で落とされて、John Kerryが大統領候補になったのを知った時、僕はこれはダメだと思った。80年代に共和党が伸びていったのは民主党が社会と世界の変化についていけなくなったからだと思う。

Posted by: 真魚 | September 07, 2004 at 01:12 AM

<>

あれは自滅ですよ。彼が候補ならもう選挙の結果はでてますね。マクガバン以上の敗北が待ち受けていたと。

マイク

Posted by: マイク | September 07, 2004 at 07:33 AM

ノー、ノー
Howard Deanを大統領候補にするぐらいの変革をやらないと民主党はダメですね。
少なくとも彼は大衆からの支持はJohn Kerry以上ありました。
失脚したのはメディアの世論操作であったことはABCNewsが示しています。

Posted by: 真魚 | September 07, 2004 at 02:47 PM

<<少なくとも彼は大衆からの支持はJohn Kerry以上ありました。>>

じゃなぜ民主党の予備選で負けたの?メディアの世論操作?それって今なお反ブッシュに世論操作しているメディアの事?

Mr. "I'm a littel crazy" Howardさんは自滅したんですよ。だれが見ても勝てない候補。

大衆ってだれなんですか?またLiberal的にあなたの意見と同調しているごく一部の民主党グループの人たちのこと?

Howardが候補だったら民主党が完全につぶれていますよね。Ms.Clintonはその方が4年後としては良いのかも。Kerryが負ける事によってアメリカ北東部からの出馬じゃ勝てないって事になりますからね。

マイク

Posted by: マイク | September 07, 2004 at 05:16 PM

John KerryとHoward Deanの比較なんだから、ここで言う大衆とは当然民主党支持者ですよ。その民主党支持者の中で圧倒的人気を持っていたのはHoward Deanです。民主党の大統領指名レースではトップでした。あのまま行けば、大統領候補者指名を受けた可能性は十分にありました。それがなぜ唐突に支持を失ったのか。あの絶叫シーンはメディアが作ったものであって、実際にはあんなにオーバーに絶叫していなかったというのは後にABCNewsが報道しています。Deanが大統領候補者になるような事態になったら困る人々が操作したとしか思えないですね。

Howard Deanがもし候補者になったら民主党は分裂したでしょう。だからそうなっては困る人々がDeanを引き摺り下ろして、Kerryを候補にしたと。しかし、それが結果的に民主党に良かったのか疑問です。東部のリベラルはもはや一昔前のリベラルです。東部のものの見方では、ヨーロッパ相手にはいいでしょうけど、今の西部や中部や南部を理解することができないでしょう。それがわかっていないのが東部のリベラルなんです。

Posted by: 真魚 | September 07, 2004 at 08:55 PM

突然申し訳ありません。
僕は今英語を勉強しているのですが、
”Tell that to~”の意味がいまいちよく分かりません。
教えていただけないでしょうか。

Posted by: 流れ者 | August 01, 2005 at 06:43 PM

私は英語の教師ではないので、よくわかりませんが。
これは簡単に言うと、「話せ」「それを」「誰々に」になります。例えば、
I will tell that to you after you come back.
「そのことは、あなたが戻ってから話します」
となります。

Posted by: 真魚 | August 02, 2005 at 01:11 AM

流れ者さん、

"All of the world except Republicans see America as an occupier, not a liberator."

”共和党以外の人達は解放者ではなく、占領者としてアメリカを見ている。”

Tell that to....はこの見解、視点をだれそれに伝えてその反応を見てみろ!と言う意味です。

”面と向かって言ってみろ”と言う意味ですね。

リベラルの方々は面と向かって事実について語られるのが苦手なので、Millerさんはこの様な言葉の使い方をしたと考えます。

MikeRossTky

Posted by: マイク | August 02, 2005 at 03:28 PM

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