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August 02, 2004

The 9/11 Commission Reportを読む

 今日、新宿の紀伊国屋で本の"The 9/11 Commission Report"を買ってきた。ネットでPDFファイルで入手することができるのだけど、歴史的な資料でもあるので紙の本でも持っていたいなと思い買った。それに、PDFでパソコンの画面で読むのはラクではない。

 この報告はかなり分厚く、とても全部読む気になれん。そこで、NewsWeek(August 2,2004)のFareed Zakariaの"The 9/11 Commission Report"についての記事について書いてみたい。Fareed ZakariaはNewsWeek国際版の編集者で、国内版のレギュラー・コラムリストである。ABCNewsの解説者であり、Ted KoppelのNightlineに出ているのを見たことがある。日本で定期購読をするのは国際版の方になるが、こっちでもひんぱんにこの人のコラムが載る。今のブッシュ政権は間違っていると真っ正面から書くことはないが、内容はまっとうなことを言っている。政治的立場は、当然のことながらリベラルでグローバリゼーションを良しとする立場だ。アメリカのイラク侵略はフセイン政権を倒すために仕方がないことであり、今アメリカがイラクから手を引くとイラクの再建は不可能なので、アメリカのイラク統治も認めるということをNewsWeekのコラムで書いている。

 "The 9/11 Commission Report"についての記事で、彼はこの報告書は、超党派の独立した調査委員会の非常に優れた報告書であると書いている。ユニークな鳥瞰的味方で。政府のハイレベルの政策決定のプロセスを分析している。マスコミは、この報告書の指摘にあるa new intelligence czarやnew systems for congressional oversight of intelligenceなどについて注目しているが、そうしたことは重要ではない。the big pictureが大切である。a grand strategyに着目することが必要なのだとZakariaは書く。

 では、そのa grand strategyとはなにか。それは、この分厚い報告書の中の最後の二つの章、"What To Do? A Global Strategy""How To Do It? A Different way of Organizing The Government"に書かれている。

 この報告書は、アメリカの政治の良心と知性が表れていると僕も思う。この報告書は、大変重要だと思う。もともと、アメリカの外交には、一国覇権主義(あるいはその反動の孤立主義)の考え方と、他の国との協調を重視する国際主義の考え方という二つの異なる考え方が底流にある。その後者の勢力がようやく表に現れてきた感じだ。イラク戦争が始まる前に、ここまで見事な洞察があればイラク戦争は違った姿になったであろう。この戦争は、大統領府とペンタゴンが強引に国をひっぱり、議会がそれに引きずられた戦争だった。もちろん、大統領にイラクへの軍事行動の権限を与えたのは議会である。その意味で、議会も軍事行動に同意した。マスコミもそうだったし、なによりも国民がそうだった。

 しかしながら、この報告書が述べるところによると、テロとの戦いは長期間にわたる。ただイラクに軍隊を送り、サダム・フセイン政権を倒すだけではことはすまない。ブッシュ政権は、戦争をすることについては卓越した計画を持っていたが、戦後の統治についてはまったく計画がなかった。報告書は「アメリカは世界の規範のリーダーになるべきであり、人道的に人々を扱い、法律を守り、隣国に寛大で思いやりを持つべきである。」と述べている。このへん、ウイリアム・クリストルやロバート・ケイガンといった現政権のイデオローグたちの意見とは異なる。この報告書ははっきりと、アメリカ国家の安全保障はグローバルな国際協力を必要とすると主張している。一国による覇権主義ではなく、多国主義でなくてはならないと強調している。ようするに、この報告書は、今のブッシュ政権ではテロへの安全対策になっていないと言っているのだ。

 テロとの戦いは、冷戦時代とは異なる新しい戦略を必要とする。ブッシュとその政権のイデオローグたちが言っていることは、一見、新しい時代に対応した新しい戦略のように見えるが、実体は軍事力で(しかも、アメリカ一国の判断で)相手を叩くという冷戦時代と変わらないやり方だ。

 誰が次の大統領になるにせよ、アメリカのテロとの戦いは始まったばかりである。(今さら、わかりきったことかもしれないが)どうやらこの「テロにどう対応するか」が、これからのアメリカと世界の行方を決定することになるようだ。初戦は、ブッシュ政権の一国覇権主義者が主導権を握った。しかし、これから国際主義派の抵抗が始まる。かつて、ジョージ・ケナンやディーン・アチソンらが提唱した反共政策の基礎理論に匹敵するような、最も効果的だと思われる対テロリズム政策はまだ生まれていない。今のアフガニスタンとイラクの現状を見るだけでも、共和党の政策ではもはや話にならないことは明白である。では、どうなるのか。

 アメリカという国は、今ものすごく危機的な状況にある。今のアメリカは内国的で、愛国心だなんだと言っていること自体が、本当の目の前にある危機に目を向けることなく、国全体が退行しているのだ。そうとうヤバくなっているので、星条旗とキリスト教の神にしがみついているだけだ。冷戦が終わって、アメリカはいわばアイデンティティの喪失に陥ってしまった。その心の空白に入り込んできたのが保守主義とキリスト教右派だった。言ってみれば、アメリカはアメリカという殻の中にひきこもっているわけですね。ブッシュ政権はヒッキーであったのだ。しかしながら、ようやく、この新しい時代での新しいアメリカの姿を模索しようという動きがでてきた。この不健全で不健康な状態を改善しようという動きがでてきた。僕は、この回復力こそ、アメリカの最も優れたものだと思う。

 この"The 9/11 Commission Report"は、その最初の第一歩なんだと思う。

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