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August 15, 2004

マイケル・ムーアの『華氏911』を見ました

 マイケル・ムーアの『華氏911』を恵比寿ガーデンシネマで見た。朝いちの回で見ようと8時頃に恵比寿に行くと、ものすごい長蛇の列が!!これは、昨日の夜のオールナイトで見るべきであった。それにしても、もっと早く来ればよかったなあと思いながら列の最終に並ぶ。日本テレビとTBSのTVクルーがきていて、なんかうざい。

 しかしまあ、やはりというか、日本でも関心が高いのだなと思う。マイケル・ムーアは、別に国際問題を扱っているわけではない。ここで扱っている問題は、すべてアメリカ国内の政治と社会問題である。従って、他の国がどうこうできるものではない。大体、僕たちはアメリカ市民じゃないのだから、アメリカ大統領の選挙権を持っているわけではない。しかしながら、それでも、この映画は世界中でヒットしていることを思うと、いかに世界中の人々がアメリカの今年の大統領選挙に関心があるかということであろう。次の4年間もブッシュになるのか、それともそうならないのか。これは、世界のどの国にとっても切実な問題なのである。良くも悪くも、アメリカは世界の注目の的になっている。

 あまりにも人が多そうだったので、午前の最初の回で見ることをやめて、午後2時5分の回で見ることにした。とりあえず、えんえんと列の順番をまって、受付で時間指定の入場券を買って、改めて2時前に恵比寿へ行くと、なんとまだ長蛇の列が!!受付の表示を見ると、夜の最終の回以外はみんな満員になっている。こりゃあ今並んでいるみなさん全員は今日は見れないなあ。

 さて、劇場の中に入り席に座る。周囲を見回してみると、まず男性は20代らしいワカイモンがまず多い、次に老人というか年配の方の姿をよく見る。つまり、僕のような年代、30代から40代らしき男性はあまり見かけないのだ。この午後2時の回がそうなのだろうか。そういえば、朝の列にもそうした年代の男性はあまり見かけなかったと思う。この年代の男性は、あまり映画館には行かない年代ではあるのだが。世の働くおとうさんたちは、あまり外国の政治のゴタゴタには関心がないのだろうか。女性は20代らしき人から30代、40代らしき人とほぼ全般で見かける。典型的オバサンらしき人は見ない。初日に見に来る人々は、マイケル・ムーアの本は全部読んでいるか、DVDは全部見ましたというマイケル・ファンが多いのだろう。

 多くの人が言っているように、この映画は最新著書の『おい、ブッシュ、世界を返せ!』に書いてあることをそのまま映画にしたようなものなのだが、文章で読むのと映像で見るのではインパクトが違う。本を読まない観客(アメリカの一般大衆は本を読まない)に視覚的に、いかにブッシュがアホであるかを伝える映画なので、本の内容のままだといってこの映画を批判するのはお門違いであろう。

 ただまあ、よくこれほど大量の映像と情報を編集して「全部ブッシュが悪い!」的トーンでまとめたものだと思う。ドキュメンタリーにもドラマ的要素が必要だとする人から見れば、これはドラマ的構造も持っていない。ドキュメンタリー映像作家が見れば怒るだろうなあ。この映画は、明らかにアンチ・ブッシュに偏向している。客観的な視点と論理をもって現象を検証するジャーナリズムの基本のカケラすらない。「全部ブッシュが悪い」という結論が最初にあって、すべてはそこに集約されるように事実を編集している。こうした手法は正しくない。マイケル・ムーアの手法と、例えば、1972年、ニクソン大統領の民主党本部盗聴を暴いたワシントンポストのウッドワードとバーンスタインの手法とは天と地の違いがある。

 しかし、である。マイケルはこうしたことをよくわかっている上で、この映画を作ったのだと思う。ようするに、今度の選挙でブッシュを勝たせてはイカン、ブッシュを大統領の座から降ろさなくてイカン。そのためには、どうしたらいいのか。選挙で共和党に票が入らないようにすればいい。そこで、アメリカ全土の一般大衆に向かって、いかにブッシュはアホであるか、いかに社会的弱者がだまされているか、いかにイラク戦争は間違っていることなのか、共和党はこんな陰謀をたくらんだのだ、ということを伝えるのがこの映画の目的なのだ。

 浮動票って、物事を難しく考えて投票を決めるというよりも、イケイケのノリで投票しちゃうところがある。特に大統領選挙は、4年の一度のお祭り騒ぎっぽい感じがある。マイケル・ムーアの映画は民衆を煽っているという批判があるが、そもそも大統領選挙には煽りで投票しちゃえという部分があるんだから、煽ってなにが悪いという気がする。煽りがイカンというのならば、民主党の有力な大統領候補だったハワード・ディーンを失墜させたのはマスコミの煽りだったことはどうなるのか。大衆をある特定の方向に煽るというのは、選挙戦術のごく当たり前のひとつであろう。そして、この『華氏911』は大統領選挙のためのアンチ・ブッシュ映画なんだから当然だろう。

 だから、この映画はアメリカの社会の構造的な問題を論じていないとか、ブッシュの悪とアメリカの悪を混同しているとか、ネオコンの存在が全く触れられていないとか、イスラエルとのつながりはどうなんだとか、キリスト教右派の存在はどうかとか、民主党政権になれば、すべてがうまくいくかというとそうではないじゃないかみたいな意見があるが、『華氏911』って、そんな大げさな映画じゃないのよ。とにかく、今年の大統領選挙でブッシュを落とすべきだと言っているだけの映画なのよ。その程度のことなのかといえば、その程度のことなのだが、今のアメリカのメディアは、その程度のことができない状態になっている。その中で、マイケルは(誰を、あるいは、なにを恐れることなく)「その程度のこと」を堂々とやったということに意味がある。

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Comments

こんにちわ。
ココログの一覧表を見てここにたどりつきました。

私もマイケル・ムーア氏について書いたことがあるのでよろしかったらご覧ください。

あの作品は要するに「ブッシュ嫌いの人たちの溜飲を下げさせる」程度のもので、なんの目新しい情報や論理も見つからないそうですね。

私は、「金持ち白人」が大嫌いだったムーア氏が、今や自分自身が「金持ち白人」になってしまった、ということをちょっと突っついてみたくなるのです。

「深夜のnews」さんのブログは面白そうなので、他のもこれからゆっくり読ませていただきますね。

Posted by: robita | August 16, 2004 at 11:19 AM

robitaさん、こんにちわ
コメント、ありがとうございました。

プログを読みました。そうですね、僕もアメリカはイカンと言うことは、実際にはそうとうシンドイことになると思います。そのシンドさの覚悟をして、アメリカはイカンと言わなくてはならないと思います。

『華氏911』は、本を読んでいる人は新しい発見はありません。ただ、イラクで息子さんを亡くした主婦の方が、ホワイトハウスの前に立って、だまされていた、息子を返してと言うシーンにはホロッとしました。

マイケル・ムーアは太っていますね。あの人はダイエットはもうあきらめていると本に書いていました。ただまあ、アメリカの工場労働者って、みんな大体ああした体型なんですよ。だから、マイケル・ムーアのあの体型とか、着ている服とか帽子とかが見ている人に庶民感覚を感じさせるんです。ああした、でぶっちょが、弱気を助け、強気をくじくというところがマイケル・ムーアの人気のひとつかなと思います。

Posted by: 真魚 | August 17, 2004 at 02:31 AM

http://www.humaneventsonline.com/story-images/BillboardA.jpg

http://www.humaneventsonline.com/story-images/BillboardB.jpg

このJPG,真魚さんのお気に入りの人がでてましたので。

Enjoy!! 

マイク

Posted by: マイク | January 31, 2005 at 10:18 PM

Mike,

Oh, Thank you very much for the nice pic you sent me.

So, I offer this movie to the President of the United States.
http://www.teamamerica.com/

enjoy!!


Posted by: 真魚 | February 02, 2005 at 01:18 AM

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