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August 22, 2004

ナベツネ氏の謎の辞任劇

 スポーツ・ジャーナリストの成田好三氏が非常に興味あるコラムを書いているので紹介したい。

 なにやら巨人で選手のスカウトする際に、その選手に対して200万円の裏金が支払われたという。この内部文章の存在を報道したのは、朝日新聞だった。これに対して、読売新聞はその事実を認め、プロ野球会界はこの出来事への調査と処罰を行うという。

 この調査と処罰を行うのは、コミッショナーの根来泰周という人である。この裏金問題は、実は今回が初めてではなく、球界では常識化していることだという。ところが、この根来泰周という人は「過去の不正行為は調査しない」という意味の発言をしている。根来氏によると、「ないことを祈るしかないが、改めて調査するには限界があり、もし疑いがあるとすれば各球団の自浄能力に期待するしかない」とのことであるが、これはもう「なにもしない」と言っているのに等しい。さらに巨人の球団社長の桃井恒和氏も同様の発言をしている。これはつまり、根本的改善はなにもしないということを意味している。と同時に、裏金を使って選手のスカウトを行うということが常識化している現状に対して、アマチュア野球界の側もこのままでいいという意思表示をしたことなる。つまりは、アマチュア野球界の指導者側にもなんらかの(公にはできない)利益が入る仕組みになっているようだ。それを「改善」するなんてつもりはまったくないのだろう。

 で、僕は野球にはそれほど関心はないので、このこと事態は「ふーん」という感じがしないでもない。体制の末期的症状はどこも同じようなものであり、だから日本のプロ野球はもう終わりなんだろうなと思うだけだ。

 しかし、だ。この事件の責任をとるということで、読売巨人軍オーナーの渡辺恒雄氏が辞任した。今回の事件で言えば、裏金は200万であった。2千万円でも、2億円でもなく200万円である。この渡辺氏の日頃の言動を見ると、200万円で巨人軍のオーナーを辞任する人とは思えない。どうもなにかあるのではないか。

 渡辺氏の辞任が発表は8月12日だった。翌日の13日にはアテネ五輪の開会式だった。各メディアはオリンピック騒ぎとなり、誰も渡辺氏の辞任の不可解さを思わなくなった。この、発表しちゃと非常にマズイことになるのだが、どうしても発表せざる得ない場合、なにか大きなイベントの直前に世の中に発表することによって、人々の関心をそらすという手法は政府がよく使う手であるが、今回の読売新聞が行ったことはそうしたことだった。

 つまり、プロ・アマ野球界の裏金システムというものに対して、オーナーは辞任、だたし、その辞任発表はオリンピック当日前に行うことによって、人々の話題になることを避ける。コミッショナーと社長は、今回の事件のことは(ばれてしまったから)処罰するけど、このシステムは今後も変えない。ばれなきゃ、なにやったっていい。で、すべての幕を下ろそうとしている。

 それで済んでしまうのかというと、実は済んでしまうのである。近鉄の40億円などといった球団の経営損失は親会社からの補填によってまかなわれている。これは親会社から子会社へのいわば「贈与」になり課税対象になる。しかしながら、プロ野球の場合は1954年の国税庁通達で、赤字補填金が広告宣伝費の性質をもつ場合は全額経費として認められているという。

 同様に、選手のスカウトの際の裏金という正規の契約金以外の金品の贈与になる。しかし、これも「広告宣伝費の性質をもつ」という題目が成立するのならば課税対象にはならないだろう。つまり申告義務もないということになる。あとは、社会的道義から見てどうかということのみであり、この人々は社会的道義なんてどうとでもなると思っているのであろう。

 成田好三氏はコラムの中でこう書いている。

「プロ野球界は、国税庁から税金面で特別な保護を受けている業界なのである。戦後、国民的娯楽を提供する業界として認められ、さらに当時の業界人の強い政治力によってこの「保護通達」ができたのだろう。そうした特別扱いを受けている業界が、赤字で球団経営が成り立たないと言いながらも、巨額の裏金を横行させているとしたら、これは間違いなく悪質な犯罪行為である。」

 プロ野球は1リーグ制になろうと、2リーグ制になろうと、この体質が変わらない限り、プロ野球の未来はないなと思う。もう戦後の巨大な大衆娯楽としてのプロ野球の時代はとっくに終わっている。

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