青山ブックセンターが閉店
なんと、青山ブックセンターが閉店してしまった。最近ではもうすっかり足を向けることはなくなったけど、学生の頃は新宿のルミネでよく買っていた。新宿ルミネの青山ブックセンターと池袋のリブロポートは、お気に入りの本屋だった。その店の中に立って、本棚の本を眺めているだけで楽しくなる場所だった。セゾン美術館もなくなり、WAVEもなくなり、そして青山ブックセンターもなくなってしまった。自分が学生時代を過ごした80年代がどんどんなくなっていく。こうなると、同系列の本屋さんである東京ランダムウォークが潰れないように、なるべくここで本を買わねばと思う。(神田神保町店って、店の建物の方が潰れないかと心配なんだけど。)
新宿ルミネの青山ブックセンターの最大の魅力はマンガの品揃えだった。専門書の方は、神田神保町に足繁く通っていた者の視点から見ると、「ああ、あの本が置いてあるな」という感じで、それほどいいとは思えなかった。つーか、例えば宗教学にしても、青山ブックセンターの本の選択は、流行に応じた本が置いてあるだけで、クロウト受けはしないと思った。もちろん、別に宗教学を勉強しようという客が来るわけではないのだから、これはこれでいいのだけれど。なんか中途ハンパなんだよなと思っていた。ファッションとしての知識と教養さがミエミエで。この「ファッションとしての知識と教養」というのがいかにも80年代的だった。その意味では、モロ80年代の本屋だった。でも、置いてあるマンガの選択は、マンガ専門店の選択とはまた違ったサブカル的視点があって、マンガの棚を見ながらその視点を読み解くのがまた楽しかった。
閉店の理由は業績の悪化だという。しかし、僕が学生だった10年前と今とで、業績はそう変わってはいないように端から見ると思うのだが、それほど売れていなかったのであろうか。本屋以外の事業で失敗したといううわさもある。いずれにせよ、80年代当時、サブカルチャーに関心がある者は、本屋に行くしか情報を集めることができなかった。それが今では、ネットにアクセスした方がより多くの情報が集めることができる(と思うのは実は錯覚なのであるが)ので、本屋よりもネットの時代になったのだろう。
今、あんたは青山ブックセンターで買っているのかと言えば、買っていません。新宿だと紀伊国屋へ行く。なんでかというと、紀伊国屋書店はネットで本が店頭にあるかどうか在庫確認ができるからだ。コレコレの本が必要だな、買わなくてはならないなという時、僕はまず紀伊国屋にその本があるかどうか、あるのならば何階のどの場所にあるのかを調べる。それはもう今の自分の歳と身の上になると、時間をかけて本を探しているよりも、さっさと本を買って、さっさと読まなくてならないからだ。青山ブックセンターでまったりと本を眺めている時間は、自分にはもうなくなってしまった。
だからこそ、あの頃の自分の記憶とともに青山ブックセンターはあったと思う。自分は変わったけど、新宿のルミネに青山ブックセンターが今もあって、80年代を今でもやっていますという本屋さんがあるということで、それはそれで意味があったと思う。しかし、実際としての青山ブックセンターはなくなってしまった。世の中から80年代が消えていく。それでいいような、悪いような、どちらとも言えない気持ちになる。
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