武力行使はしないというタテマエ
自衛隊を、主権移譲後のイラクで編成される多国籍軍に参加させるという。よくわからないのが、小泉総理の「多国籍軍に参加しても、自衛隊の活動は日本国の指揮下に入り、日本の主体性をもって活動する」という言葉だ。軍隊なんだから、指揮系統は一元化されていなくてはならない。そんなことは当然だろう。あのー、つまり、それって、「多国籍軍に参加しない」と言っているのと同じなのだが。もし僕が多国籍軍の司令官だったならば、そんなことを言う日本は参加しないでよろしいと思うであろう。
きっと小泉総理としては、本心では多国籍軍に参加したくはないのだが、諸般の都合により日本の自衛隊がイラクから撤退するわけにもいかないので、とりあえずイラクに残る理由をつけるために「多国籍軍に参加する」と言っているだけなのだろう。本気で、多国籍軍に参加すると思っていて、それで指揮系統は別にすると言っているのならば、よーするにこの人は軍事の基本を知らないということ以前に、そもそも組織の中で仕事をしたことがないんだなということになる。フツーの会社の勤め人だって、この言葉はいかにヘンかということがわかるだろう。
アメリカ兵の輸送を空自が行っているけど、防衛庁は「これまでも武器・弾薬は運ばないという日本の主体性は確保されている。米兵の輸送も、運ぶ先が非戦闘地域なら武力行使とは一体化しない」と説明しているそうである。「運ぶ先が非戦闘地域なら武力行使とは一体化しない」と本気で思っているのならば、これはそうとう問題ありということになる。しかし、言っている本人も本気でそう思っているわけではないだろう。そう言わなくてならないので、そう言っているのだろう。では、なぜそう言わなくてはならないのか。
そこまで詭弁を弄して、日本の自衛隊は武力行使はしないというタテマエを守りたいのかと思う。このタテマエを、誰に向かって、なんのために守っているのだろうか。イラクではもう、日本人であるということで殺害される状況になっている。それでも、このタテマエを守り続けるのはなぜなのだろう。
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