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May 31, 2004

夏コミで『パト2』論出します

 僕は最近、某大アニメ作家のメーリングリストに登録した。このメーリングリストは、アニメ関係では知る人ぞ知る硬派のメーリングリストである。なにしろ、あのカンヌですら理解できなかったようであるアニメ映画の監督のメーリングリストなのだから、そりゃあもう硬派である。このファンサイトの同人誌が今年の夏コミに同人誌を出品する。

 一応、特集はあのカンヌですら理解でき・・、くどいからやめよう、『イノセンス』なのであるが、この監督の過去の作品についてもあつかっていいよということになり、僕は『機動警察パトレイバー2』の評論を書くことにした。

 このアニメ映画は、1993年の映画である。この映画の中で、陸幕調査部の荒川という男がこう語る「ここは戦線のたんなる後方地帯である。」と。この平和な日本の、この風景が実は戦線の後方地帯にすぎない。つまり、この(平和な)風景とずっとつながっている場所で今戦争が行われている。さらに言うと、ここ(平和なニッポン)とあそこ(戦争を今やっている場所)は別世界なのではなく、同じ世界の「ここ」と「あそこ」の違いだけなんだということを荒川は言っていたのである。「ここ」と「あそこ」はつながっているのである。

 僕がこの平和なニッポンに住んでいて、このことをまざまざと実感したのは、つい最近、新宿駅で警官の姿を見た時だ。なぜ、今至るところで警官や警備員や監視カメラの姿をよく見かけるのか。思えば、この映画を劇場で見てから10年後の今、この言葉の意味することを心の底から理解したと言えよう。ようやくわかったのだ。あんた、わかるまで10年もかかったのか、この歳になるまでわからなかっのかと言われそうであるが、事実そうなのだからしかたがない。このことに気がついた時、僕にとってこれはものすごい世界認識の変革であった。何度も書くが、「ここ」と「あそこ」はつながっているのである。別々の世界なのではなく、同じ世界の違う場所であるだけなのだ。戦後、半世紀間、この国もずっと戦時下だったのだ。

 そして、「あそこ」では、例えばイラクでは、米兵と会話をしていた日本人ということだけの理由で殺害される。彼らは、それほど日本人を憎んでいる。日本人は過去の歴史的いきさつから東アジアの人々からは憎まれているが、だからといって殺害される程ではない。しかし、イラクでは今、日本人を殺したくなる程憎く思っている人々がいる。しかしながら、その殺したくなる程憎い日本人の母国である「ここ」では、とりあえずいろいろな問題や事件もあるが、イラクの人々の憎しみや悲しみを日本にいる日本人はそれほど感じていない。危険地帯なのに行ったジャーナリストの自己責任なんだとでも思っているかのようである。大多数の人々は、「ここ」と「あそこ」がつながっているものとは思っていないのだ。

 荒川は言う「単に戦争でないというだけの消極的で空疎な平和は、いずれ実体としての戦争によって埋め合わされる。」と。ここで言う「実体としての戦争」とは、戦車や飛行機がドンパチやる戦争のことではない。それらは表層でしかない。近代以後の戦争とは、国家総動員体制の下での戦争であり、そこではいかに国家全体を戦争機械にすることができるかが戦争の勝敗を分ける。実体としての戦争とは、国家が強権をもって国民を監視し管理することそのものなのである。戦闘行為は、その管理の目的のひとつでしかない。つまり、戦闘行為なき戦争状態も、また実体としての戦争の姿なのである。『パト2』で、東南アジアのPKOから帰ってきた自衛隊員柘植行人の犯行目的もそこにあったのだと思う。だとすれば、今、僕たちがいる「ここ」はまぎれもなく「実体としての戦争」に向かいつつある。

 今年は『イノセンス』の上映で話題になっているが、今こそ論じるべき作品は10年前の『機動警察パトレイバー2』である。今にして思う。この作品の先見性、質の高さは見事であった。

 あー、それにしても夏コミ、ひさしぶり。前回行ったのは晴海だったんだけど・・・。(遠い目・・・・)

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Tracked on June 22, 2004 at 08:24 PM

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