December 31, 2020

2020年を振り返る

 2020年を振り返ると、やはりというか新型コロナによるパンデミックであろう。2020年は歴史に残る年になった。

 厚生労働省が行ったLINEによる「第1-4回「新型コロナ対策のための全国調査」からわかったこと」によれば、
「「収入・雇用に不安を感じている」に「はい」と回答された方は、全体の31.1%でした。回答結果は職業種で大きな偏りがあり、タクシードライバー(82.1%)、理容・美容・エステ関連(73.0%)、宿泊業・レジャー関連(71.2%)、飲食(飲食店含む)関連(62.2%)の方が、過半数以上「はい」と回答されました。また、職業種によっては、従業員規模が小さいほど、より多くの方が「はい」と回答する傾向がありました。」であるという。

 また、精神的な面では学生への影響が最も高い。

 「一方で、学生は職業種の中で、「人間関係について不安を感じている」、「毎日のように、ほとんど 1 日中ずっと憂うつであったり沈んだ気持ちでいる」、および「ほとんどのことに興味がなくなっていたり、 大抵いつもなら楽しめていたことが楽しめなくなっている」に、「はい」を回答する割合が最も高い結果でした。それぞれ12.9%、14.4%、13.0%でした(回答者全体では9.3%、8.7%、8.3%)。」であるという。

 大学のオンライン教育についていえば、今回の出来事は大学からすれば降ってわいた災難であり、大学教育でオンライン教育はどのようにあるべきかという準備があって行ったわけではない。学生を教室という場所に集めることができなくなったので、代替処置としてやっているだけのことである。その程度のことでしかないので、学生側からすれば満足のいくものではないのは当然のことであろう。本来、オンライン教育とは、教室で教師がしゃべっている動画をただネットで流せば良いというものではない。この点については、根本的な作り直しが必要であろう。

 疫病は高齢者に重症化や死亡リスクをもたらしている。もともと、パンデミックが発生する以前から若者、高齢者、女性は社会的弱者になっていたが、パンデミック後はさらにそれが進んだ。

 必要なことは、当面の課題としてこうした社会の弱い部分に対する援助や保障であるのだが、消費減税をすることはなく、全員一律給付は一度行っただけとするなど政府はこれをやる気はない。よくわからないのは、生産性が低いのは淘汰されて当然だとする考えがあることだ。今起きていることは平時ではない緊急時である。生産性が低いから淘汰云々、失業するのは当然だみたいな考えは今の状況では成り立たない。雇用者において所得減、失業などといったことは起きてはいけない、起こさせないためにはどうしたよいであろうかとするのがむしろ当然の対応なのである。

 救済が必要な人々をどう選別するかは困難なことではあるが、困難だからできません、やりませんが通る話ではない。なんために国民は税金を払っているのかということになる。雇用については非正規労働者、特に非正規労働者の8割を占める女性にしわ寄せがかかっている。

 その意味で、現状の政党の中ではれいわ新選組がいっていることが妥当である。れいわ新選組は以下のような政策を主張している。

消費税は廃止。
奨学金の借金をチャラに。
教育は完全無償化。
一人あたり月3万円を給付。インフレ率2%に到達した際には給付金は終了、次にデフレ期に入った際にまた再開する。
1人あたり20万円の現金給付

 れいわ新選組がこの先どうなっていくのか注目したい。

 311の時、政府とマスコミは無能だったのは、まだ原発村や原発利権があるからと思えたが、今回の新型コロナが明らかにしたのはこの国の政府は全般としてことごとく使えないというものである。

 4月、5月から政府は一体なにをしてきたのであろうか。厚生労働省のホームページには新型コロナウイルス感染症対策本部決定の8月の「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」や12月に行われた「新型コロナウイルス感染症対策本部(第 50 回)」の議事次第が公開されているが、その内容はいかにも役所が作った総花的内容であり、これらの中でなにに重点を置くのか、なにを優先するのかということがさっぱりわからない。GOTOトラベルには1兆円を超える予算が投入されているが、今は医療機関に重点的に予算を投入せずして、いつ投入するのであろうか。本日時点では東京都の感染者数が1300人を超えた。

 憲法を改正して軍隊を持とうという声があるが、日本の再軍備の是非はどうであるのかという以前に、そもそもこんな国民を見捨てる政府に軍隊を正しく運用することなどまずできない。ようするに何においてもことごとく、この国では政府を信信用することができないのである。こんな政府が憲法を変えたり、本格的な軍隊を持たせるのは危険である。何度も書いているが、今のこの国は、仮にパンデミックが収束したとしても、他にやるべきことが山のようにあり、そんなことをやっている場合ではない。

 今年は長く続いた安倍政権が終わりを告げたが、もうこの国は国民全員を守り、国民全体を栄えさせるということは不可能なのであろう。限られたパイを巡って、国民に対して区別や線引きがされている。それが明確に表面化してきたというのがこの一年であった。

 国際社会に目を向けてみると、今年のアメリカの大統領選挙のポイントはバイデンの勝利ではなく、トランプ支持者が7300万人もいるということだ。共和党はもはやトランプ頼み一色になっている。トランプ的なるものは消えたわけではなく、ますます大きくなってきている。変わりゆく共和党と、その一方で、バーニー・サンダースのラディカル右派の運動はますます盛んになっている。政治がまともに対処できていないことでは日本と同じなのであるが、アメリカではそれに対する市民の側からの抗議や主張がある。アメリカの政治状況は今後も見逃すことはできない。

 パンデミックが蔓延する国際社会で、その地位を大きく上げているのが中国である。中国は崩壊する的な話はタワゴトだと思って良い。中国は、アメリカと並ぶ世界覇権国である。経済の側面においても、中国の経済は世界の最先端を走っているといっても良い。

 今年、大陸中国は香港を完全に併合した。香港の若者たちは抵抗を続けているが、中流階級以上の富裕層は国家安全維持法を支持している。大陸中国と対立関係になり多国籍企業や外国資本が香港から撤退してしまうと、自分たちのビジネスに不利益であったり不動産の資産価値が下がることを望んでいないからである。

 よくも悪くもパンデミックが世界を変えた1年であった。そして、この変化は来年はさらに本格的に進むのである。

| | Comments (0)

November 23, 2020

『左翼の逆襲』を読んだ

 『左翼の逆襲』松尾匡著(講談社現代新書)を読んだ。

 「人は生きているだけで価値がある」という文言を読んだ時、ネトウヨの「日本スゴイ」を思った。「日本人は日本人であるだけで価値がある」というのがネトウヨの基本的なスタンスである。この「日本人」というのは、日本国籍を持つ者ではない。日本国籍を持つ者としてしまうと、外国人も含まれるからである。それではなんであるのかというと、よくわからない。よくわからないのであるが、いわゆるニッポン人という括りだとするのならば、これからは嫌韓・嫌中を言っていればすむ状態ではなくなる。「いわゆるニッポン人」の中で格差が進み、「いわゆるニッポン人」という括りができなくなるのである。

 いわば安倍政権時代は「いわゆるニッポン人」という括りができた時代だった。だからこそ、安倍晋三さんは「日本をとりもどす」とか言い、「日本スゴイ」のネトウヨがはびこる世の中になった。浅狭なナショナリズムがもてはやされる時代だった。菅政権になって浅狭なナショナリズムは依然として続き、ネトウヨも含めた社会的弱者の淘汰が当然のことのように行われている。消費税10%への引き上げは、個人商店や中小零細企業の大きなダメージになっている。この先、さらに格差が続き、広がる世の中になる。

 『左翼の逆襲』で書かれていた東京財団政策研究所の今年の3月の「緊急提言」は、たいへん興味深いものだったので、東京財団政策研究所のサイトへ行って読んでみた。

 東京財団政策研究所の「経済政策についての共同提言 新型コロナウイルス対策をどのように進めるか?」を読んでみると、生活支援の現金給付ではなく融資、つまり貸し付けにしているのはいかにも今の政権が好きな提言である。ベーシックインカムなどというものは、口にもしたくないのであろう。

 企業への支援政策も、今の政権向きの内容になっている。「緊急提言」はこう述べている。

 「「雇用の7割程度、付加価値の5割以上」を占める中小・零細企業への支援は不可欠とされる。しかし、度重なる天災・自然災害ごとに中小企業へ支援するのはややもすれば過度な保護になり、新陳代謝を損ないかねない。実際、国際的にみて我が国の開廃業率は低く推移してきた。廃業率は我が国が 3.5%である一方、最も高い英国で 12.2%、独でも 7.5%となっている(数値は 2017 年、独は 2016 年)。低い開廃業率は生産性の低い企業が市場に留まっていることも示唆する。」

 ようするに松尾先生が書かれているように、闇雲な中小・零細企業への支援は、生産性の低い企業を存命させているというのである。「緊急提言」はこう述べている。

 「しかし緊急時に、支援すべき(=生産性の高い)企業と撤退すべき企業を識別することは難しい。雇用を確保する観点からも中小・零細企業の資金繰り支援は当面の間の緊急措置として、やむを得ない。他方、セイフティーネットとして撤退(廃業)に対する支援も講じるべきだろう。」

 つまり、闇雲に支援はしたくないのであるが、緊急時に支援すべき企業と支援しない企業を区分けするのは難しいので、当面はやむを得ないとしている。その一方で潰れるべき企業は潰し、その支援を行うべきであると述べている。

 この潰れるべき企業は潰れるべきである。潰れることについてのセイフティーネットは、十分に考えるべきであるとする主張は確かにその通りであって、正社員は首を切ることができないというのは、日本は再就職が難しいのでそう簡単には首が切れないのである。そこの対応をきちんとつくり、さあ、バシバシ会社を潰しましょうと言っているのである。このセイフティーネットの議論がベーシックインカムにまで話が進んでいくとおもしろいのであるが、そうした「社会主義」的な政策が出ることはないだろう。生産性の低い企業は潰し、円高で商売をやっていけない企業は海外に出て行けるのならば出て行って欲しいというわけである。

 松尾先生のヨーロッパのレフト3.0の動きについての説明は、大変勉強になる。松尾先生は講演で使用した資料を公開されておりダウンロードができるようになっている。ナマ資料がダウンロードできるのはたいへんありがたい。このダウンロードができる資料も読むことで初めて松尾先生の言われていることがわかると言っても良い。

 福祉、医療、教育、保育、貧困者支援、労働者支援などにMMTを背景にした本格的な大規模な投資をする政策を掲げる政党や政治家が欧米では数多く現れている、と同時にまだまだ課題が多い状況になっていることは、日本にいて日本語のメディアから情報を得ているとなかなかわからない。興味深いのは、松尾先生が言われているように、彼らの主張は極めて古き社会主義、レフト1.0に似ているということだ。レフト1.0の主張に戻り、レフト2.0の過ちを正していくことがこれからも続いていく。

 上にネトウヨがいう「日本スゴイ」はこれから成り立たなくなると書いたが、実際のところ格差はさらに進み、「いわゆるニッポン人」という括りができなくなるのであるが、右派ポピュリズムが成り立つためには「いわゆるニッポン人」の浅狭なナショナリズムが必要であるため、マスコミは拡大していく格差の実体を隠し、「いわゆるニッポン人」というものがあるものとして、「日本スゴイ」と嫌韓・嫌中を煽ることをこれからも続けていくだろう。

「私たちは「左翼」を忘却のかなたから呼び起こさないといけません。」

「昭和の大女優山田五十鈴が戦後レッドパージの時代にアカ呼ばわりされ、「貧乏を憎み、誰でもまじめに働きさえすれば、幸福になれる世の中を願うことが、アカだというのなら、わたしは生まれたときからアカもアカ、目がさめるような真紅です」と言ったという逸話を思い出しました。まさにそうこなくっちゃですよ。」

 こうした文章を読むと、おおっと高揚する。その通りである。松尾先生はいいわー。

| | Comments (0)

November 15, 2020

アメリカ社会の分断は続く

 日本では安倍政権が終わり、アメリカではトランプ政権が終わった。この二人は「同じ」ところが数多くあり、安倍が終わりトランプも終わるだろうなと思っていたら、その通りになった。そして、安倍時代が終わってもなにも変わらないように、トランプ時代が終わってもアメリカはなにも変わらない。人々の分断はさらに進行していくであろう。

 バイデンでは分断をなくすことはとてもできない。今回の選挙はトランプかバイデンかという、どちらを選んでもアメリカの未来はない選挙であった。日本の政治の劣化も著しいが、アメリカの政治もまた劣化が激しいものになっている。次期副大統領のカマラ・ハリスも、若い世代にはあまり評判は良くない。女性として初、またアフリカ系・アジア系としても初の副大統領が誕生するのは確かなことであるが、何ができるのか、何をどうしようとしているのかということとは話は別である。

 なぜアメリカの政治は国民の声が届かないものになってしまったのか。例えば、アメリカは大学の費用が高額であり、学生たちは卒業時に膨大な借金を抱えて卒業をすることになる。しかるべき給与の職業に就職できたとしても返済には何年、あるいは10年以上も月収の四分の一から半分をローンの返済にしなければならないという。そうした状態であれば、当然のことながら結婚をして新居を築こうという気にもならず、また結婚したとしても子供を作る余裕はなく、かくて少子化が進むのである。

 さらには、就職すらできない者たちはホームレスになる危機と隣り合わせになることになる。教育費が異常に高額であることと、奨学金という学生ローンが巨額になることは、若い世代にとって切実な問題である。民主党の大統領候補であったバーニー・サンダースや、エリザベス・ウォーレンらは、高等教育のほぼ全額無償化と、学生ローンの免除を提案していたという。高等教育を受けた者たちがホームレスになるような社会では、国の将来が危ぶまれるからである。

 しかしながら、バーニー・サンダースも、エリザベス・ウォーレンも、合衆国大統領候補にすらなれず、高額な教育費に対してとても何かするとは思えないジョー・バイデンが大統領になるのである。学生ローンについて何かするとは思えないということでは、トランプもまた同じだ。バーニー・サンダースのような人物もいるのだから、政治は若い世代の声を聴かないのではなく、若い世代の声を聴く政治家は大統領にはなれないということなのであろう。かくてアメリカ社会の分断は続くのである。

| | Comments (0)

«安倍政権が終わった