December 04, 2016

トランプのアジア

 昨日、トランプはアジアのことなど関心がないという意味のことを書いた。

 その後、トランプ次期米大統領と台湾の蔡英文総統と電話で協議したというニュースが飛び込んできた。今朝の産経新聞は、習氏はメンツをつぶされたと大喜びである。

「習氏は米大統領に当選したトランプ氏への祝電で、米中両国が「衝突や対抗をせず相互尊重する」ことを呼びかけ、トランプ氏との初の電話協議でも「協力こそが両国にとって唯一の正しい選択」と強調していた。今回の電話協議は習氏のメンツをつぶすものだ。」

 しかしながら、かつて、ソ連と並ぶ、世界の覇権国であったアメリカ、アイゼンハワーかケネディの頃のアメリカであれば、台湾の総統と「合う」ということは国際政治において大きな意味をもっていたであろうが(実際のところ、アメリカにとって大陸中国と台湾の問題が大きくなったのは、アイゼンハワーやケネディの時代ではなく、ニクソンの時代からであるが)、この時代では、トランプと台湾の総統が電話で会話をしたというのは、アメリカの軍事産業のお得様である台湾の総統がアメリカの次期大統領と電話で会話をしたという程度のことでしかなく、大騒ぎすることではない。

 これは、大陸中国のいう「ひとつの中国」へのゆさぶりでも何でもない。そんな政治的意味などまったくない。米中関係に影響を及ぼすことでもなんでもない。このことをもって、すわ、アメリカは台湾の「独立」を支持すると思うのは間違いであり、アメリカには台湾の「独立」を支援(して、大陸中国との関係を悪化させることに)するつもりはまったくない。

 トランプのアメリカがTPPから離脱すれば、アジアの各国は中国につく。つまり、誰が一番利益を得るのかといえば、いうまでもなく中国であり、誰が一番不利益を得るのか言えば、TPPに固執する日本である。

 トランプのアメリカは、アジアにおけるアメリカの利権を脅かすことをしない限り、中国がなにをやってもかまわないというのがトランプのスタンスである。つまり、台湾の総統と電話をしたドウコウということは表面的なことであって、その本質はアメリカは(結果的に)中国の台頭を妨げることをしないということだ。

 これがこの先、何を意味することになるのか、ということを考えなくてはならない。

 重要なことは、この状況がこれから起こるとなると、、この先、中国のAIIB(アジアインフラ投資銀行)にアメリカが参加したり、中国の国際インフラ投資計画である「一帯一路」にアメリカが協力したりすることが起こり得るだろうかということである。さらに言えば、国連の平和維持軍の主導国からアメリカは降りて、中国が担当することになることが起こり得るだろうかということである。これらが実際に起きたら、本当に国際社会の秩序が変わることになる。

 これらは十分起こり得るということを前提として、これからの中国について考えていかなくてはならない。

 AIIBにせよ、「一帯一路」計画にせよ、その実体はとても話にならないレベルのことが数多く、今の中国のノウハウや技術では、とてもこうしたことができていないのが実情である。しかしながら、中国は日々進歩していることも忘れてはならない。トランプの顧問からは、オバマ政権でアメリカがAIIBに不参加したことは間違っていたという声はすでに挙がっている。

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December 03, 2016

トランプの対アジア政策

 アメリカのトランプ次期政権は、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍司令官、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にマイケル・フリン元国防情報局長を起用するという。この人事について、産経新聞はこう書いている。

「軍事経験が豊富な元将官を起用されたことで、タカ派色が色濃く表れた形だ。オバマ政権から次期政権に持ち越されるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の掃討を強化する明確な意思の反映だとみられている。」

 「イスラム国」(IS)については掃討しようとしているとして、では中国については、トランプはどうするのであろうか。

 大ざっぱに言えば、アメリカは今だかつて中国について「よくわからない」国なのである。これは、ソビエト・ロシアについても同じことが言える。アメリカという国は、ヨーロッパから移民してきた人々が建国した国であるためか、ユーラシア大陸のウラル山脈以東のことについては理解するフレームを持つことが不得意な国なのである。 
第二次世界大戦以後のソビエトについても「よくわからない」から「敵」として扱ってきた。

 中国についても「よくわからない」ので、基本的に商売相手として扱うだけであり、それ以上、それ以下でもない。ようするに、アメリカの連邦政府や議会は、アジアが絡むととたんに「わからない」状態になり、本質を見ようとせず「商売相手」(中国)とか、「家来」(日本や韓国のことだ)とか、「やっかいもの」(ドゥテルテのフィリピン)とかいった見方、考え方しかできない国なのである。

 さらに言えば、これは中近東に対してもそうであり、アラブやイスラムといったものがからんでくると同じだ。基本的に「オリエンタリズム」でひとくくりにくくるしかできないのである。

 しかしながら、そうはいってもアメリカにとって石油資源がある中東は無視することができない場所である。だからこそ、アメリカは中東に介入し続けてきた。トランプの選挙公約のひとつに、「イスラム国(IS)」に徹底的に軍事対抗するというものがある。今回の人事も、アメリカはこれからも中東に軍事的に介入し続けるということを表している。

 その反面というか、対象的な場所になっているのが、アジアである。アメリカにとって、アジアはビジネスの対象であり、それ以外は「どうでもいい」という状態がこれからも続くであろう。

 トランプの中国政策は、これまで以上にビジネスに特化した関係になるだろう。トランプには、中国の国内の環境破壊とか、人権弾圧とか、言論封殺とか、少数民族への圧力とかいったことには関心はない。アメリカ国内のインフラ整備に、積極的に中国のマネーや中国企業を使ったり、貿易交渉で、アメリカに有利な条件を認めてくれるのならば、中国のアジア覇権になにも言わないかのような取り決めをする可能性は高い。トランプのアメリカは、アメリカ一国の利益しか見ない(ちなみに、ロシアについても中国と同様の「商売相手」に変わるだろう)。

 結局、アジアのことは、アジアでやらなくてはならないのだ。勃興する中国に対抗するのは、大陸中国の周囲の国々がやらなくてはならない。何人もの人々が述べているように、トランプのアメリカの時代において、日本は独自の外交がしやすくなる。日本は外交をもって、東アジアの主導国の位置を占めることができる。

 ただし、それは、このブログで私が何度も述べているように、この国に、アメリカ依存ではない独自外交を実行できる手腕があるのならばの話である。そして、そうしたものがまったくないのが、この国である。かくて、トランプのアメリカの時代において、中国はますます台頭するであろう。

 この国は、自国にそうした力がないことをよく知っているから、ひたすら対米従属に依存しようとしている。しかしながら、対米従属をする国の言うことなど、アジアのどの国が信頼するであろうか。対米従属であるから、自分で物事を行う力が持てなくなっている。この悪の循環を断ち切らなくてはならない。これが、本当の意味での戦後日本からの脱却なのである。

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November 27, 2016

朴槿恵の退陣デモ

 近所のTSUTAYAで、韓国のテレビドラマ『第五共和国』のレンタルDVDを借りてまた見ている。『第五共和国』は、韓国の第五共和国の時代、つまり全斗煥政権の誕生と終末までを史実をもとにしてドラマ化した番組である。

 このドラマは数年前に見ていた。全斗煥政権は、1980年から88年に至る。この時代は、私の高校、大学の頃になる。あの頃、隣の韓国ではこんなことがあったのかと思ったものである。

 その後、数年たって、それなりに韓国現代史についての知識を得て、今回改めてこの政治ドラマを見てみると、全斗煥とその支持グループによる政権の簒奪の手段が実に見事で、よくもまあこれほど考えることができたものだと関心する。全斗煥が政治の実権を握る1979年12月12日に始まるクーデター事件、いわゆる「粛軍クーデター」は朴正煕が政権をとった「5・16軍事クーデター」から多くを学んでいる。

 政権簒奪だけではなく、いわば全斗煥の軍人政府がやったことは、同じ軍人政府の大統領であり、全斗煥が若手将校であった時から、彼を将来の側近として育てていた朴正煕がやったことから学んでいる。全斗煥は、朴正煕の劣化コピーのようなものであった。

 李承晩の第一共和国から全斗煥の第五共和国までの軍人政府だった時代、人権運動や民主主義運動はすさまじく弾圧された。今の韓国の民主主義は、そうした先人たちの累々たる死の上に成り立っており、戦後、GHQから民主主義を与えられた日本とは比べものにはならない程、韓国の民主主義は重い。

 この韓国の民主主義の現在として、今の朴槿恵大統領の退陣デモがある。

 産経新聞はこう書いている。

「韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人で女性実業家、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件で、朴氏の退陣を求める大規模集会が26日、ソウルなど全国で行われた。5週目となる今回、主催者側は全国で190万人、警察は32万人が参加したと推計。12日のデモを上回り、最大規模となった。」

 なぜ、朴槿恵大統領退陣デモで、これほど盛り上がるのであろうか。

 崔順実への機密漏洩疑惑にせよ、セウォル号沈没事故での政府の対応のまずさにせよ、こうしたことは韓国では「よくある話」ではないのだろうか。権力を私物化したり、要職に縁故で採用することは、正直に言って隣国のイルボニンから見ると、韓国社会のどこにでもあることである。これらをもって大統領が弾劾されるというのはまったく理解できない。

 機密漏洩疑惑や沈没事故での政府対応についてなど、父親の朴正煕であれば即座にもみ消し、その後、誰からも非難されることはなかったであろう。それだけの政治手腕を、朴正煕は持っていた。娘の朴槿恵には、それがないということなのである。

 もちろん、そうした慣習はいいか悪いかで言えば、悪いことであり、そうしたことはなくさなければならない。しかしながら、それと朴大統領の退陣とどうかかわるのであろうか。仮に朴槿恵を大統領職から退陣させたとしても、それらの悪慣習は韓国の社会からなくなることはない。大統領に取り入り、癒着して財をなした人々は崔一族だけではない。

 実際のところ、今の韓国にはデモをやっている暇などないはずだ。

 中国との関係、北朝鮮への対策、アメリカのトランプ政権への対応、これらをこれから一体どうするのかさっぱり見えてこない。スマホ企業の世界ランキング第二位だったサムスンが脱落するなど、今、韓国経済は大きな転換期を迎えている。財閥中心ではない新しい経済はどのようなものであるべきなのか。そうした考えなくてはならないこと、やらなくてはならないことが山のようにあるのだ。しかしながら、朴槿恵退陣の声に、これからの韓国の方向のようなものはない。

 今の韓国では、日本統治時代に生まれ育ち、独立後の韓国を指導していった世代、独立後の韓国で「漢江の奇跡」を成し遂げ、今日の豊かな社会を築き上げた世代、そうした世代の時代は終わろうとしている。豊かな韓国社会に生まれ育った世代が、これからの韓国を造っていかなくてはならない。しかしながら、彼らから新しい韓国がさっぱり見えてこないのである。

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